いつかの秋

    あれはある夏の日の出来事だった、から始まる物語は許されるのに、冬は何故か叙情的な表現をしなければ存在させてもらえない。若しくはそれもただの私の思い込みなのかもしれない。自分で勝手に蓋をしてしまう程に、私はそんなに臭いのだろうか。そうではない。蓋をして閉じこもるのは、ただ怖いからだ。今日は秋。明日も秋で、昨日も秋。夏のような陽気で、まるでへんてこなピエロみたいな秋。ネットで検索してもわからない自分自身のことと、第四検索ワードで理解したと勘違いしてしまうあの人のこと。どちらも大事で、どちらも嫌い。

パスタを茹でるための鍋がないのにパスタとインスタントソースは途絶えないこの家で、今日も私はパスタを焦がす。焦がれるような思いを感じたあの頃も、もう随分と過去になってしまった。過去と現在、そして未来が、一直線上に並んでいるとは限らない。そう、いつか読んだ本に、誰かが書いてあった。

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