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ニューヨーク市のエコな取り組み

ニューヨークに長年住んでいると年々エコな都市になっているなと感じます。今回はまちづくりの参考になればと思い、ニューヨーク市のエコに関するOneNYCという政策と、市民として感じた変化をシェアします。

OneNYCは、人口の増加、気候変動、進化する経済、インフラの老朽化などの長期的な課題に対応するためにニューヨークの前市長であるビル・デブラシオ氏によって2015年に掲げられた政策です。

2022年発表のレポートでは、1)活気ある民主主義、2)インクルーシブな経済、3)繁栄する地域、4)健康な生活、5)教育における公平性と卓越性 、6)住みやすい気候 、7)効率的なモビリティ、8)近代的なインフラの8項目にわたる取り組みを紹介していて、エコに関する政策は主に「住みやすい気候」の中で 取り上げられています。

このレポートの中でまず目を引いたのは、アンケートに回答したニューヨーカーの声として、「ニューヨーク市が気候政策において国内外をリードする存在であってほしい。」という意見が挙げられていたこと(引用元)。やっぱりニューヨーカーはエコに対する意識が高いです。

以下、レポートに記載されている中で、市民として日々変化を実感している項目を取り上げました。

クリーンな電力資源を100%確保する

ニューヨーク州は、2040年までに100%クリーンな電力を供給することを目標としているそうで、ニューヨーク市としてもカーボンニュートラルを達成するために太陽光発電や風力発電の供給元を増やし、送電容量の拡大に努めているそうです。

一年ほど前に、CleanChoiceEnergyという会社からクリーンな電力への切り替えませんか、とハガキが来たので、石油由来の電力から自然由来の電力へ切り替えました。

https://cleanchoiceenergy.com/

切り替えてみても特に実生活には影響がなく、変わったことといえば電力料金と共に毎月どのくらい二酸化炭素の排出を抑えたか教えてもらえることぐらい。

電力会社からのメールには
電力料金と共にどのくらい二酸化炭素の排出を抑えたかが記載されている

マーケティングへの力の入れようからも、市全体としてのカーボンニュートラル達成への本気度を感じました。アメリカの対象地域にお住まいの方は、簡単にクリーンな電力に切り替えができるのでオススメです。

すべての建物とインフラにおいて、排出量の大幅な削減と効率の向上を追求する

ニューヨークは古いビルも多く、建物として電力消費効率が悪いビルもあります。東京では考えられませんが、昔勤めていたオフィスの建物は暖房の温度調節ができず、暖房を付けると暑すぎるから冷房も同時につけていました。

近年ニューヨークを歩いていると建物のエネルギー効率評価を見かけるようになりました。調べてみると、2018年から法律化された条例のようで、建物のエネルギー効率が書かれた張り紙が通行人に見えるように張り出されます。この評価が悪いと、無駄に電気代を払っているということなので、管理組合が建物の断熱性を向上させたり、ヒーターを変えたりします。

Aだとエネルギー効率がよく、Dだと悪い

こういう張り紙をするだけでも、管理組合の議題になるので、市の政策としては効果的な手段だなと思います。

持続可能な交通手段を促進する

OneNYCのレポートには電気自動車の充電スポットについての言及が主でしたが、自転車を利用する市民として一番変化を実感したのは自転車専用道路の増加です。2006年にはニューヨーク市内で826 kmほどだった自転車専用道路は2019年には2,170 kmまで延長されたそうです(引用元)。

自転車専用道路は特に2010年代に急増したと記憶しています。自動車用の車線を減らし、自転車用道路を増やすのは勇気ある決断だったでしょうが、エコの観点からするととても有効だと思います。街並みもだいぶ変わりました。

https://nymag.com/intelligencer/2016/03/bike-wars-are-over-and-the-bikes-won.html
https://kottke.org/14/02/and-bloomberg-said-let-there-be-bike-lanes

ゼロ・ウェイスト促進の一貫で生ゴミ専用の回収

ニューヨーク市はゼロ・ウェイストも促進しています。その中で利用しているのは生ゴミを回収し堆肥化するコンポストプログラム。以下の写真は週に一回近所で開催されているファーマーズマーケットの様子です。敷地の一角に回収場所が設置されています。

ファーマーズマーケットで生ゴミを捨てている様子

週に一回徒歩10分程度の場所にわざわざ捨てに行かなくてはいけないですが、生ゴミを普通のゴミと分別して捨てることで、ニオイが気にならなくなったのがコンボストを始めて一番良かったなと感じている点です。

また、建物の管理組合が申し込めば生ゴミ専用の回収箱もリクエストすることができます。

https://www.usbiopower.com/newsroom/nyc-curbside-composting-comeback

自宅で生まれた生ゴミが堆肥化されて、それが地元農家で作物が育つ栄養分として使用されて、その作物をまた食べる、というのはサーキュラーエコノミーの一員になった気がして、感慨深いです。

カーボンニュートラルで気候変動に強い未来への投資

もう一点おもしろいな思ったのは、ニューヨーク市の年金基金の投資先についてです。アメリカでの年金は、日本のNISA(ニーサ)のように、株式や投資信託などに投資されている場合がほとんどです。

ニューヨーク市は、年金基金の投資先についても長期的な視点をもって選んでいるそうです。具体的には、地中の石油やガスの形で化石燃料を保有している企業の有価証券を手放し、そのかわり気候変動対策への投資を増やすそうです。

金融の観点からもエコを意識しているのはニューヨーク市らしいなと思いました。


以上、ニューヨーク市のエコだなと思う取り組みをまとめました。すべての点を網羅したわけではないので、気になる方は元の資料も是非チェックしてみてください。