見出し画像

【映画の感想】『シン・ゴジラ』に登場する巨大不明生物とヘドラとの共通項(2016年記事再掲)

※本記事は2016年8月18日に、暇だったので個人的に書き留めていた映画の感想を再構成したものになりマウス🐀

7月29日より公開されている「シン・ゴジラ」。
今日の時点で既に興収30億円を突破したということだ。

僕も8月の初週に観たんだけど、まぁ~これが素晴らしい映画だったもんで、ちょっとその感想を個人的に吐き出したいと思う。

そもそも怪獣特撮オタクである僕としては、怪獣映画を目にするときの心のハードルなんて皆無に等しい。
基本的にはこんなご時世に怪獣特撮を見ることができるという状況が既にありがたいので、怪獣ファンの間でも賛否の分かれた2014年のギャレゴジですら、劇場で120%楽しめた。

もちろん、あれはゴジラの描かれ方としては思うところもあったし、最終的に「え? ゴジラはいつの間に英雄になったの?」と思っちゃったけど、あれはムートーという敵怪獣との最終決戦がえらく燃えたので、もういいのだ。
120%楽しめる映画だったのだ。

ゴジラの急速な形態変化に政府の対応が追い付かない恐ろしさ

さて、『シン・ゴジラ』である。
本作では、冒頭より巨大生物が東京湾に出現し、海面を赤く染めながら人々の生活圏に向かってくる。
この際、政府はその生物の尻尾を映像で確認し、愕然とする。

赤い海面は、巨大生物が身体から放つ熱と、これによってプランクトンが死滅して赤潮化いることが原因、あるいは体液の漏出ということでいいのかな?

当然、この巨大生物こそゴジラなんだけども、このときはまだ第一形態。
映像化はされていないが、巨大なおたまじゃくしのような姿をしているという。

ゴジラは巨体をおして、無理やり川を遡上する。
そしてこのとき、川面には濁流を搔き分けるようにして、あの背びれが現れるのだ。

とうとうゴジラは蒲田に上陸する。これがゴジラの第二形態である。
その姿は、僕が今まで見てきた、どのゴジラとも似ていない、奇妙なものだった。

地上に上陸を果たしたゴジラには、既に足が生えていた。
映画の冒頭からここまで、そう時間は経っていない。政府も対応に追われている真っ只中である。
この短い時間のうちに、ゴジラは地上を闊歩する能力を得ていたのだ。
まさに脅威の進化である。

とはいえ、上陸したばかりのゴジラは、足元もおぼつかない。
だが、この巨大生物は、歩くだけでも甚大な被害を生む。
エラから大量の血液を噴射しながら蒲田を蹂躙するゴジラ。

印象的なのは、目の前に建つマンションを、強引に乗り越えようと突っ込む姿だ。
マンションの一室には、避難が遅れた一家が慌てて脱出しようとしている。
猛烈な揺れが一家を襲い、次の瞬間、ゴジラはマンションを突き破ってしまった。

歩くだけ。たったそれだけで、人類にとっては考えられない規模の災害を生じさせてしまった。

なおもゴジラの脅威は続く。
品川付近まで進出したかと思うと突如として身体を蠕動させ、瞬く間に腕を生やしてしまった。
同時に体色まで変容し、僕らがよく知る、いわゆるゴジラ体型(昔の児童書のティラノサウルスのような姿ね)への進化を遂げた。
これが本作ではゴジラ第三形態と呼称される。

政府はここに来て、巨大生物撃滅のため、自衛隊の出動を決定する。
ところが、いざ自衛隊の所有するヘリでゴジラを攻撃しようという算段が整ったそのとき、避難中の民間人が残っていたことが判明。

大河内総理大臣(演:大杉蓮)は、「中止だ。作戦中止! 自衛隊の弾を、国民に向けることはできない!」と、攻撃中止を命令。
そのとき、ゴジラは急激な環境変化の無理が祟ったのか、突然に苦しみだし、一時的に第二形態のような姿勢に退化し、海へと戻っていくのであった。

巨大生物によって大いに混乱した日本の首都東京であったが、ひとまずこれで元通りの日常が帰ってきた、かに見えた。

結成される巨災対、再上陸するゴジラ

内閣官房副長官の矢口(演:長谷川博己)は、前代未聞の巨大生物の襲来にひときわ危機感を抱いていた。
ただちに巨大不明生物特設災害対策本部を立ち上げ、自身は事務局長としてゴジラ撃滅のための策を練る。

各分野の優秀な、しかしどこか浮世離れしたチームのメンバーと膝をつき合わせ、さらに米国よりもたらされたゴジラの情報などを入手したことで、ゴジラが体内に原子炉のような器官を持ち、捕食をせずともエネルギーを生成することが可能で、一世代でどこまでも進化することが可能な、恐るべき完全生物であるという結論を見出す。

同時に彼らは、そのゴジラを討滅するための最適な手段として、ゴジラに血液凝固剤を経口投与し、その爆発的な熱エネルギーの排出を封じ込める計画、「矢口プラン」を提案する。

そんな折、ゴジラが再び姿を現した。
相模湾から再上陸を果たしたゴジラは、前回よりもさらに巨大に成長していた。
劇中での最終形態こと、ゴジラ第四形態。その身長は歴代ゴジラでも最大サイズの、118メートル。

全身が硬質化したのか、ゴジラらしい黒い体表になり、身体の亀裂からは、真っ赤な灯りが漏れ出している。
ゴジラの体内に満ちるエネルギーが、ビジュアルとしても非常に分かりやすい。
まさに『ゴジラVSデストロイア』に登場した、メルトダウン寸前の、あのゴジラのようだ。

再上陸後は悠々と、そして甚大な被害を出しつつ全身するゴジラは、やがて武蔵小杉付近まで歩を進める。
矢口プラン実現に必要な凝固剤は、全国のプラントで量産に入っていたものの、未だに必要な量の確保には至っていない。
一刻も早い凝固剤の調達が望まれる中、大河内内閣の花森防衛大臣(演:余貴美子)の指揮の下、自衛隊によるゴジラへの総攻撃「タバ作戦」が実行に移された。

攻撃ヘリによる的確なゴジラの頭部への射撃、戦車部隊による一斉砲撃。
自衛隊の威信をかけた、首都防衛戦であったが、ゴジラには一切通用することなく、作戦は失敗。
ゴジラは世田谷区方面に向かい、最終的には日没時点で、目黒区に侵入する。

ここで遂に、米軍がゴジラ対策に具体的な介入を見せる。
自国の有する三機の爆撃機、それに搭載された地中貫通用爆弾MOPⅡ(これは架空の兵器。実在するMOPの発展型と思われる)が、はじめてゴジラに大量の出血をするだけの手傷を負わせることに成功する。

ゴジラの脅威から背を向けずに立ち向かう大河内内閣の閣僚たちも、これには歓声をあげた(花森防衛大臣は複雑な顔をしていたけど)。

だが、こういう急激な外的刺激は、ゴジラにとっても格好の進化材料だったようだ。
突如ゴジラは、口から大量の爆炎を放射。未だ多くの民間人が避難している最中、地表を赤い煙が走る。
轟音を上げて放射され続ける爆炎は、やがて少しずつ収束していき、甲高い怪音を響かせ、レーザーのような熱線となる。

ゴジラはこの熱線で爆撃機のうち一機を撃墜させる。
さらに残った爆撃機が攻撃を続けるが、今度は背びれから放つ拡散熱線が爆弾と爆撃機を迎撃。

口からの熱線に背びれからの拡散ビームのような熱線。
夜の東京は紫色の怪光に彩られ、炎に包まれる。

ゴジラは、飛翔体による爆撃への防衛手段として、このような攻撃方法を編み出して見せたのだ。
一見、見境なく放っているように見える拡散熱線も、実際には自分に攻撃を加える可能性のある飛翔体を、正確に狙い撃つための武器として機能していた。

この期に及んで、大河内総理以下、ほとんどの閣僚が、苦渋の決断として官邸を放棄することを選択する。
しかし、皮肉にも米軍の爆撃によって進化を遂げた後のゴジラからの避難のために用意されていたヘリは、閣僚たちを乗せて離陸した直後、件の熱線によって撃墜されてしまう。

辛くも生き延びた矢口以下、巨大不明生物特設災害対策本部の面々は、立川広域防災基地で矢口プラン実現のために再起する。

タイムリミットは二週間。「ゴジラ」対「国連」対「巨災対」

一方、国連安保理は東京にいるゴジラへの熱核攻撃を決定。
二週間後にゴジラもろとも、東京を核の炎で焼き尽くすことを通達。これによって関東からおよそ360万人が急遽疎開することとなった。

果たして熱核攻撃決行期日が目前に迫った頃、経口による投与に足る、凝固剤の調達は終わった。
さらに、投与を可能にするため、そして確実にゴジラの動きを止めるための手段も練られ、以降矢口プランは「ヤシオリ作戦」と呼称され、東京ひいては日本の命運をかけた挑戦がスタートする。

矢口と一部の巨災対メンバーは自ら防護服を着用し、作戦の陣頭指揮に就く。
東京駅付近で休眠状態のゴジラに対して、まずは爆薬が山積みとなった無人の新幹線による特攻が行われる。
ここから流れる「宇宙大戦争マーチ」が、まぁアツい!
大戦争マーチは、東宝特撮でも特に、人類側がナタール人、X星人などの強大な敵に対しての反撃に打って出た際に流れる、人類大逆転のテーマである。
まさか劇場でこれを聴けるとは思わなかった。

さて、爆薬を積み込んだ無人新幹線爆弾の激突から来る突然の衝撃に目を覚ますゴジラは、怒りの咆哮をあげる。

返す刀で、今度は米軍から提供された無人爆撃機が編隊を組んで攻撃を開始する。
目的は爆撃によるダメージを狙うというものではなく、例の熱線を引き出させ、ゴジラのエネルギーを消耗させることにある。
物量に任せての爆撃が続く。
ゴジラの防衛本能によって放射が続けられていた熱線は、とうとう途切れた!

ここで事前に自衛隊が仕掛けておいた爆薬が起動し、さらに米軍のミサイル駆逐艦からのミサイル攻撃によって、ゴジラの周囲のビル群を倒壊させる。
瓦礫の下敷きとなって、しばらく身動きの取れないゴジラに対し、コンクリートポンプ車群「アメノハバキリ」第一部隊と血液凝固剤を満載したタンクローリー部隊が即座に展開。

ゴジラへの、建機を利用しての凝固剤経口投与がスタートする。
残念ながらこの「アメノハバキリ」第一部隊は、ゴジラの反撃によって壊滅するが、作戦は継続。

再び立ち上がったゴジラに対して投入されたのが、僕らが日常的に利用している、各種在来線に爆弾を搭載した、無人在来線爆弾という突貫で用意された攻撃手段である。

「無人在来線爆弾、全車投入!」との合図と共に、複数車両が一斉にゴジラに向かって突撃。爆風と共に車両ごとが飛び散るほどの恐るべき威力に、さしものゴジラも東京駅のど真ん中に倒れ伏した。

思えば初代「ゴジラ」より、在来線も新幹線も、ゴジラにいいように破壊され続けた被害者。
その被害者が「ヤシオリ作戦」の、まさに花形のような役割で登場するのだから、これは感慨深い。

さらには特殊建機群に、やはりゴジラに蹂躙される運命にあったビル群、爆撃機など、いわば怪獣映画の引き立て役、やられ役がゴジラを着実に追い詰めるのだ。

スーパーXやメカゴジラなど、超兵器を出さずにこういう展開、よく思いつくもんだ。

「アメノハバキリ」第二、第三部隊は、ここですばやくゴジラへの血液凝固剤の投与に成功。
そして見事に規定用量の投入を完遂する。

が、ゴジラもタダでは倒れない。
なんと凝固剤によって体の中が急速凍結されつつあるにも関わらずに立ち上がり、最後の力を振り絞り、熱線をお見舞いしようとするのだ。

幸いにも凝固剤の効果が寸でのところで発揮され、ゴジラは熱線放射に失敗。
断末魔の咆哮を轟かせ、完全凍結した。

安保理が決議した、熱核攻撃へのカウントダウンは残り58分46秒というところでストップした。
しかし、再びゴジラが活動を開始したら、カウントはリセットされないまま、1時間以内に東京は核の炎に包まれることが示唆され、さらに凍結したゴジラの尾の先に、複数の生物の姿が映し出されたところで、映画はエンドロールとなる。

『シン・ゴジラ』に登場する怪獣はヘドラをゴジラ化したものである!

と、覚えている限りであらすじを書いてみたかったので書いてみたんだけど、まあ~最高の怪獣映画であった。
これまで、ゴジラ映画で自衛隊というか、人類を応援したことはなかったほどに怪獣贔屓の僕だったが、いや、この映画では「タバ作戦」の時点で完全に人類側の目線で観賞してしまっていた。

細かな考察やら、最後の「ヤシオリ作戦」については語っている人も多いので特に言及するつもりはないけど、怪獣マニアとして、本作の形態変化を尋常ではない速度で繰り返すゴジラについて一言。

間違いなく、このゴジラの生態には『ゴジラ対ヘドラ』に登場した敵怪獣、ヘドラのエッセンスが含有されていると断言する。

ゴジラは第一形態で尻尾しか目撃されていないが、ヘドラの第一形態は胴体に尾しかついていない、おたまじゃくし状の姿をしている。
上陸時にはどちらも地を這うように動き回る形態をとるし、後に立ち上がって二足歩行となるのも同じだ。

劇中終盤に、「そしてもう一匹?」と、まだヘドラは仲間がいるのではないか、とする示唆がある点も、本作のエンディングに近しいものがある。

ここまで形態変化からオチに至るまで、似通っている怪獣はいない。

ヘドラもこのゴジラも、どちらも人類にとっては共存できない脅威である。
極限まで共存不可な巨大生物のディテールを突き詰めると、この二大怪獣のようなものが誕生するのが宿命なのかもしれない。

最後に一言。
「シン・ゴジラ」は最高。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?