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『ヘアスプレー』が持つ白と黒の魔法

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ポップな見た目のインパクトに違わない明るいナンバーからトレーシーの一日は始まる。ありふれたボルチモアの街も彼女の明るい歌声にかかれば素晴らしいミュージカルの舞台に早変わり。


『ヘアスプレー』は1960年代の街を舞台にしたミュージカル。明るいだけではなく、人種差別の背景をテーマとして濃く含んでいる。差別的な仕打ちは残酷に容赦なく描かれる部分もあるが、太った体型の白人ヒロインであるトレーシーがこれを見事に打ち破っていくのがみどころだ。

近頃はポリコレという言葉がことあるごとに引き合いに出され、様々なテーマや主張について議論される。『ヘアスプレー』についてはその差別そのものの大元となっている転換期がモデルとなっており、肌の色はこれでもかというくらい強調されているため、現代の指標で観ると一周回って気になる人もいるかもしれないが、レイシズムとルッキズムに対して大きな異議を唱えた作品であることに変わりはない。


ミュージカルとしてのクオリティは高く、そのナンバーの豊富さからもそれが分かるだろう。違和感なくシームレスにポップジャズが始まり、キャラクターが歌い出す。ダンスは作中の大きなテーだが、ミュージカルでなくともそれが当たり前であるかのように振舞っている。衣装や舞台装置の華やかさも細部までこだわりがあり、特にラストでトレーシーが着ているモノクロの衣装はそれぞれの肌の色をミックスしたと見ていいだろう。

何より、ナンバーを彩るキャラクターが本当に魅力的だ。2時間弱でトレーシーやリンク、エドナママやペニーなど、一気に彼女たちのとりこにさせられる。


ラストの”You can't stop beat”はミュージカル界屈指のナンバー。曲だけでも知っているという人は是非ラストシーンで一緒にアガって欲しい。

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