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“お墨付き”のドキュメンタリーを観た


以前、こんな本を読んだ。

江川紹子先生がオウムの犯罪に加担した元死刑囚達にスポットをあてて「何故彼等は麻原に着いていったのか?」というカルト勧誘に纏わる心理を若者向けに分かりやすく書いている本だ。

内容はともすれば死刑囚をフォローしているようにも思えるかもしれないが、どんなに許されないことをやったとしても「彼等ももしかすると私たちと変わらぬ人生を送れていたかもしれない」と思わせられる。
そして裏を返せば、私たちも彼等と同じ運命を辿る可能性があるということだ。


今回のNHKは攻めに攻めていて(と言っても内容は普通のドキュメンタリーなのだが)、本家からガチの放送中止の抗議を受けてもなお決行したのがこの本放送らしい。その証拠に、本家のHPにも番組に対する抗議がしっかり記載されている。
実際、内容を観ると番組側ももうちょっと長尺でやりたかったんじゃないかと少し思った。


さて、肝心の内容についてだが、先に述べたカルト勧誘に纏わる心理について元信者女性へインタビューを行ない、再現ドラマをもってそのメカニズムを解いていた。私は先程の書籍を読んでいたこともあり、大体カルトの勧誘パターンやセオリーは定石があることを知っていた。
ただ、だからこそ「パターン知ってるから自分は大丈夫だろう」と過信することは結構危ない。大事なのは元信者女性が何故抜け出せたのかを考えるところにある。

別の宗教だが、この動画では元信者から異常な信仰習慣を抜けたきっかけが語られている。非常に興味深い内容なので観て欲しい。


私なりの脱会するための結論として、コミュニティを複数持つこと、そして同じ価値観の者同士で固まらないことがかなり重要だと思う。

今回の番組内でも、元信者女性は周りの人間の言葉で自分の思考を整理して見つめ直すことが出来ている。
カルトにのめり込ませるよくある手口として、外界とのコミュニケーションを断つことも挙げられていた。同じ思想の者しかいないため、客観性が皆無になる。一つの例として現代のインターネットでも似たようなことが起きていると思っていて、Xでもフォローしている人達が似た者同士だとまるで世界中に同じ考えの人がマジョリティ化していると勘違いしてしまいそうになるのだ。事実、私もその実感を覚えたことがある。


私は他人の意見の影響を受けやすい自覚がある。だから、よく友人達には「おかしいことになったら殴ってでも止めてくれ」と言ってある。幸い、大学時代は価値観があまり等しくない友人たちと一緒にいるので、遊びに行ったりとか仲の良さはあっても、他の部分では意見がぶつかったりすることも珍しくない。取り敢えずその人らに任せておけばなんとかなるかも…と信頼をおくことにしている。


子育てに悩み、子どもを虐待死させる親や、抱え込んだ結果、他人を巻き込む事件を起こしてしまう人など…どんなことも周囲の人間と感情を分かち合えているか否かで未来が変わった可能性がある。もちろん、犯罪多き現代社会では理想論なのかもしれないが、遠くの人間とでも繋がれる世の中、多様な価値観を自分の周りに置いておくことは重要になるのではないだろうか。

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