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空き家銃砲店 第十四話 <階段>

台所と水回りの間には階段がある。木の階段で急な十数段。階段の上は一畳ほどの横幅の廊下兼物置になっていて、階段を下るときには、柵がみえる。手すりにはわずかな透かし彫りが施され、暗い階段のアクセントになっている。

くらい階段と書いたが、この廊下にはちょっとした逸話がある。母が中学生の頃、この家を建て替えて住むようになったのは以前にも書いたように思う。

祖父はわがままなところがある人物で試験勉強中の母を「後でやれ」と言って一階から家族マージャンに呼びつけたという。行けば行ったで「下手な考え休むに似たり」とちゃかされつつ、長々とマージャンをする。夜更けに部屋に戻ってくると、たまに奥の襖が開いて光が漏れている。

そこは閉めてあったはずなのなのに。

そしてある日、母はずぶぬれの幽霊をこの廊下で見る。兵士のような姿で、廊下にただずんでいたという。


おまけ

廊下の兵隊さんですが、実は兵隊さんではなく、当時の国防色の服を着ていた一般人、祖父の末弟、恒男さんだと思われています。彼は戦時中、南の海で命を落としてます。彼が小学校時代に書いたスケッチブックが、この一番奥の小間の奥から平成の後半に発見されました。


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