まーぷりるネオン

音楽がわからない人間が必死に最近聴いた音楽の話をする

水井軒間です。
ツイートするには長すぎるけど、1本記事書けるほどではないなという話がたまたま溜まったのでまとめます。
脈絡なく個人的に最近良かったやつを列挙するので、ともかく目次を参照くださればと思います。



・Fling Posse「Stella」

ヒプノシスマイクはなんだかんだラップバトルをモチーフとして取り込んだ「乙女系コンテンツ」だ、というのが私の印象で、
本格的にハマることはできず、曲が出たときだけドラマパートは飛ばして良さそうな曲だけ聴く、というかなり雑な追い方をしているんですが、
でも時々こういう曲が出てくるから丸ごと無視はできない。

私はHIPHOPの文脈とか技法とか全くわからないんだが、この曲がヤバいということだけは肌で感じています。
いやとんでもねぇよ……………とんでもねぇ箇所はいくつもあるんですけど、私なりに言いたいところをひとつずつ書きます。


まずこのヒプノシスマイクという作品・物語の中でシブヤ・ディビジョンが担っている役割、持っている象徴とは「幻惑」であると私は思っていて、
猫かぶり、女遊び、ストーリーテリング、嘘、ギャンブル、飄々、軽々しい、反社会的、など、「相手を惑わす」とか「何かに夢中になって難しいことは忘れる」という要素を持ったモチーフに満ちている、
「世の中をクソ舐めた3人組」がシブヤ・Fling Posseだと私は解釈しています。
実際「Stella」の前に出た「Shibuya Marble Texture」はそういう曲です。
「パレットの上よろめいていたいのTake your time」って歌詞むっちゃ良いよな………

そしてそれがシンジュク・ディビジョン「麻天狼」の「医者と2人の病人」というモチーフ、
「問題を誤魔化さず、馬鹿にせず、どんなにつらくても逃げずに真摯にまっすぐに向き合う」という姿勢との対比になっているんだと思います。

しかしシブヤはただ世の中を馬鹿にしているだけではなく、自分たちなりの流儀がある、というのが時々ドラマパートでも描かれている(はず、たぶん)ことで、そういうことを踏まえると今回の「Stella」の「軌跡は歪な方がLuminous」という歌詞がすごく刺さる。
曲調としてもものすごく”光”があって、Shibuya Marble Textureと比べると、とても真摯で真剣な印象を受けます。

というかこの飄々としたひねくれ者の3人から
「爪先は前に向けておく 立ち止まった次の一歩目でも間違えないように」
「爪先はできる限り遠く 踏み込む 振り返る時自分の影が追い付けないように」
とかいうムチャクチャまっすぐな言葉が飛び出したのが本当にビックリして泣いてしまった…いい詩すぎないか……


もうひとつ「Stella」の好きなのは、
そもそも「キャラクター設定」があって声優が「演じている」キャラクター達が、さらに「物語の中の別のキャラクターを演じている」ところですね。

しかもそのキャラ設定もかなりキていて、
「小柄でぶりっこの女好き」である乱数が「時を止めた科学者」
「”でたらめを集める”嘘つきの小説家」である幻太郎が「盗賊」
「破天荒なギャンブラー」である帝統が「亡国の王子」て………………
”同人誌で無駄な独創性を発揮する愛の重いオタク”が考えるやつじゃん……
乱数のキャラというか語り口調にどことなし寂雷先生を感じるのも良いし、幻太郎はそもそもが常に何かを演じているのでこれくらいお手の物って感じでエロくて良いし、これまでアッパーなキャラで曲でも高めのパートを担当してきた帝統が低くクールで厳粛なキャラを演じているのも良い。


でもってヒプノシスマイクのキャラクターたちはあくまで架空の存在であり、架空の存在に向けて「当て書き」で曲を書いた人、というのが存在するわけなんですが、
「Shibuya Marble Texture」も「Stella」もAFRO PARKERというヒップホップグループが手掛けているらしく、一体何者なんだ……これから聴こうと思っているところです。めちゃくちゃ有名だったら恥ずかしいな…
シンジュク・ディビジョンの観音坂独歩の単独曲「チグリジア」も彼ららしく、私は独歩というキャラというかラッパーの存在とこの曲だけは大好きなので、ますます何者なんだ……
「意義のない言葉だけ洗いざらい吐いたって肺に息は満たない」「俺は詩が書けない限り屍だ 呼吸すら体の上から下までが表現に飢えたからしたまでさ」とかマジでキレッキレのポエム連発の名曲です。



・エハラミオリ「music of grapefruit」

アルバムクロスフェード↓

https://www.youtube.com/watch?v=7XqHLYIH_ys

アルバムジャケットとクロスフェードムービー内アニメーションを私が描きました。
エハラミオリと一緒に活動することになったことで私はこの先一生エハラミオリの音楽についてフラットな立場で語れなくなってしまった、というのが私が他者と比べて唯一負ったハンデですが、でも一回できるだけフラットにやるつもりで語らせてほしい。

まずアルバムを通して「光」を感じる曲群だということと、
「光を感じる曲」にもいくつか種類があるなと思った、ということについて書きます。

「My Virtual Reality」みたいに「それでも前を向いていこうぜオォイ!!」ってクソわかりやすく言っちゃってる曲もあれば(そういうダサいことを言うべき時にちゃんと大声で言えるところが彼の魅力でもある)、
「セルフジャッジ」「イド」「ピアニスト」「エゴの花束」みたく、歌詞で言ってること自体は結構暗いんだけど、それを曲にする時にキラキラした美しい曲にたぶん”なってしまう”っていう、「暗い場所から光を見上げる(見上げずにいられない)姿勢」を感じる曲もある。
(私はこのアルバムをちゃんと聴く前のミオリさんの印象というとほとんど「サイネリア」と「ツバサ」なので、ジャケット絵はこのあたりの印象が強く出ています)

アルバム通して聴いてみて、私が最終的に一番好きだなと思ったのは3曲目の「rainbow ship」なんですが、
他にも「Fruity Luv」「nobody」「friendship」「modeling」「YUKUE」「The twenty three」「a resolution」「くらげポップ」「Yellow ink」「Sing along Ah-Ah-Ah!!」あたりの、
なんというか、光の方を向いているというより「光の中にずっといる」感じ、「陶酔」とか「幻惑」とか「享楽」と言えるような感じの曲が、
この人こういう曲も書ける人なのか、と感じ入る迫力があってすごく面白い。というか実はこういう曲が書けるところがもしかすると彼の真骨頂なのかもしれないなと思った。

列挙した曲の細かい違いについてはインスト曲の聴き方がまだよくわかってないから語れないし、
なんで「rainbow ship」が一番好きなのかも全く言語化できないんだけど、主旋律?メロディ?が好きなのと、音?楽器?これはなんですか?全然何をやってそれがどういう効果を出しているのか全くわからねぇ…メロスには音楽がわからぬ けれどもエモに対しては人一倍に敏感であった



・ワニのヤカ「Favor」

「もうなんか最近疲れたな」と思ってる人は全員聴け。
バーチャルとかVTuberとか一切関係ないので全員聴いてください。

私もちょうど最近疲れたな、なんも考えずゆらゆら揺れていたいな、といろいろあったのでそういう気分で、
「スロー」って名前のプレイリストにスローな曲だけ集めて聴いたりとかしていたところにこれがリリースされたので、今もうこれしか聴いてない。このシングルだけあれば長引いた梅雨が乗り越えられる気がする。

音楽的にもきっとイカれたことを沢山やってるのだろうと思うがメロスにはそれがわからぬので、主に歌詞の話になってしまいますがします。

「Favor」の単語選びの選んでなさというか、剥き出しというか、
「あの日の喧嘩 誰かの見解」「なんて祈りさ やっぱ無理だな」「淡々と言えること 感嘆を混ぜぬよう 安閑とした日々なら」あたりの、
心の、普段あまり使ってない部分から直感で湧いた言葉を、あまり整理整頓せずそのまま出している感じがヒリついてて良いす…こういう言葉を人が出す瞬間を観測するために私は生きているので助かります。

「yolo sick」はちょっと好きとかそういう問題で片付かないくらいちょっと、なんていうか”天に召されそうになる”感じになるんですけど、
なんなんでしょうね、勝手な話なんだけど私がイライラしている時期にヤカ君もイライラしている感じのラップを出してたり、私が落ち込んでいる時期にはヤカ君も落ち込んでいるような気が少し前からしていて、苦手なニュースとか気候が近いのかもしれないと勝手に思っています。私の共感能力が暴走してるだけかもしれない。

さらに勝手なことを言うと、私とか(おそらくミオリさんも)は「どんなに現実に傷つけられても世界をまっすぐに愛することしかできない」ことが苦しみで、それで生き抜く手段を模索しているんじゃないかと思っているんだけど、
ヤカ君は「ひねくれた態度でバカなやつらの隙間を縫う」という生き抜き方をしていて、「世界に対してひねくれた態度しかとれない」という苦しみもあるのかもしれない、とか考えていました。
「両手に苦悩やら不満やら諸々持って」「僕ならそれ持ってお勝手に立って 刻んで煮詰めてやつに食わせちまえ あれ?案外美味しくね なんて」ってすごいな……すごくないか…………

そしてnishibe先生のジャケットアートが言わずもがなナイスだし、直近でジャケットの仕事してる絵描きとしては自分にできないことをいくつもやってのけているので頭が上がらない気持ちです。
あえてワニを描かないとか、ヤカ君とnishibeさん2人の企みっぽさ、「しめしめ」感が親和性が高くて良いコラボレーションだなと感じます。



・サカナクション「834.194」

これは作品そのものというより(というか実際作品でどういうことをやっているかはメロスにはわからない)、最近読んだ山口一郎さんのインタビュー記事が面白かったのであげました。

マイノリティでありながらマジョリティの中に存在するにはどうしたらいいのか」
「クラスの20人に良いと言ってもらえるものは自分には作れないけど、クラスの1人か2人に深く刺さるものを作ることはできて、それを全国規模に広げられれば、それはマジョリティになる
「インターネットが出てきた今の時代は”探す遊び”から”浴びる遊び”にシフトしていて、難しいもの(美しくて難しいもの)に手を伸ばしてもらいにくいが、”浴びる遊び”をする今の若者には”探す遊び”をしていた僕らの世代が持っていない感情を持っているのではないか

絵描きの端くれとして深く共感するし、ここまで簡潔な言葉でまとめられているのは流石だなぁと感嘆しました。こういう人がメジャーシーンを走ってくれているという事実が希望だよな…


今回のアルバム「834.194」では「ワンダーランド」とか「『聴きたかったダンスミュージック、リキッドルームに』」あたりが好きです。
あと「モス」が好きで、歌詞を踏まえると曲調の変にふざけたノリが切ないんだよな…おかしくて切ないし、切なくておかしい…
「蓮の花」も蜘蛛だし、彼にとっての”そういう”モチーフが虫なんだな…と思うとなんか…切ねぇ…

結局私はそうやって「マジョリティの方を向こうと必死になってる人が時々ポロッと出してしまうマイノリティ性」を愛してしまう。そういう人のそういう瞬間を観測するために生きている。

この文章を書いている途中で山口さんは、SONGSに出演して大泉洋と寿司食いながら対談したり、スッキリで加藤浩次と釣りしたり、宣伝頑張ってるなぁという感じで、毎回面白い話をしていたんだけど、
そして突然このMVが公開されて「ふざけるのも大概にしろ」と叫んだ。好き。



・Marpril「sheep in the light」

ウワ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!
最高です 助けて 全員聴け 動画を見ろ Marprilを推せ 頼む

歌い出し立花ちゃんの歌声があまりにもまっすぐすぎて天を仰ぎ祈りを捧げてしまうし、
私は谷田ちゃんの見た目といい声といいキャラといい全てがツボなので、
谷田ちゃんの歌い出しでヴォオオオオオと雄叫びをあげて咽び泣いてしまう……声が良すぎ………

ダンスといい衣装デザインといい舞台といい映像演出といいMVもめちゃくちゃ良いですよね……何もかも良い……
私は冒頭の靴のアップ(谷田ちゃんのステップかわいい)がまず狂うほど好きなのと、背景が指パッチンで切り替わるところと紙芝居みたくシュッと切り替わるところ、あと2番サビ後?のバッと開脚する振り付けが好きです。
光るラインが服だけじゃなくて脚にもあるのが良い……

音楽的には相変わらず何もわかりませんがとにかく今すぐこれをクラブで聴きたい。爆音で浴びたい。それ以外何もわからない。踊らせてほしい。
あと早くMarprilのワンマンライブに行きたい。絶対世界征服してほしい。


なんというか、僕らを導くまっすぐな閃光なんだな彼女達は……
と思いました。
あとショートパンツとミニスカートの中のスパッツは”信仰”です。

おわり。ありがとうございました。

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