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無題2_おーばーどーず

1.
ある時、ふと夢を見た、ような気がした。
微睡みの中で、ただ、ただ夢を見た。ような。
何なのかわからなくて、内容も薄い靄のかかったような感じで、何もない。
それだけしか残っていないのに、ただ、夢を見ていたような、見たかったような。そう思わずにいられなかった。
浅い冷気の中、目を開いてみた。
代わり映えのしない、ただただ広い天井を見てみた。そこに意味はないし、実際に見ていたという表現が正しいのかなんてわからなかった。己の息だけが反響するような感覚に抗いたくて目を閉じて息を止めた。
そのままただ溺れるような苦しさに身を委ね、ただ堕ちていった。
微睡みはまだ、ずっと。眠くて、このままずっと眠れればと。
うざいくらいに心地が良い苦しさが、ぷつりと途切れた。

2.
色々と、わからない。すぅ、と息を吸って、ため息をついた。
重い体は別にそんな単純なことじゃなくて、聞こえるメロディーがそうさせているのだろうかって、
なんていうふうに考えて救われない。
曲の明るい音を意識すればするほどに息が詰まっていって、死にたくなった。
ただ、おきて、家を出て、外気に目を細めて、電車の車窓から地下の人口的な灯りをさがして、コンクリートに親近感を覚えてみたりした。
一生眠い。暗闇に溺れていたかった。
イヤホンから流れる音楽に純粋な思いはなくて。
歪んだ暗い情景ばかりの孤独広がるメロディーに、妙に安心する
なんとも言えない微笑みが暗い車窓に映る。
自嘲のような、そんな感じの笑みに「いつからこうなってしまったんだろうか」と無意味な疑問を感じて目を背けた。
眼の前の空席に意味を見出そうと必死になってみたりする。
土に還りたい。

3.
薬が効いてきたのかな、指先にうまく力が入らない。
薬の不味さに吐きそうになった、それが一番嫌いなことだったりする。
それでも、飲んでるボクはきっと馬鹿だ。
学ばない、
自業自得に泣きたくなった。これだけの量じゃ、もう狂えない。
もっとのめばいいのかって、追加して、薬の入っていた銀色の板のようなものを握りつぶす。
手のひらに角が食い込んで痛くて、刺さって血が出た。
舌打ちしようと思ってやめて顔をしかめた。
舌触りが悪いのは薬か、感情か。吐く息が苦い。嫌い。
おかしいな。間隔は開けたつもりなのに
飴玉が偉大に思えるのがオーバードーズ。
もはやそんな感覚が一番正しいんじゃぁ、ないかな。
何も考えたくなんてなかった。
「あなたのこと、好きになるひとがいるわけがないじゃない」
気持ち悪い、吐きそう。吐けない。こらえて、もう一度薬の不味さを感じることを拒んでしまう。
ボクの価値は。
体を動かしてみてはじめて、あぁ、そういえばボク、odしたんだっけって。
体に薬が回っていくのを感じる。不快なような、心地いいような、そんな感覚が、意味もなくもどかしい。
視力の低下を感じた。
体の震えを感じた。
力が入らない。
手元がおぼつかない。
なにもない。
ブルーライトだけがぼくを包んでくれるような錯覚をおぼえた。
気色、わるいね
ボクが消えて、この思いだけが空中に漂ったらきっと、ボクは世界一不幸になれるんだろうねって
愛されたいって、場違いに思った。
きっと、空中じゃなくって、水に流れるように揺らめいた文字はボクを救ってしまう。
そんなことを夢想するんだ。
意味のない単語が、ひときわ意味のあるように存在を主張する
死にたいね
自業自得に意味見出そうとすることが一番無様なんだろうね
体が軽い。
喧騒が一番深い感慨をボクに与えたりした。
薬を飲んでいるときが一番ボクらしくいられる。
もう、笑うしかない。
死んだ遠近感がぼくをボクたらしめるような、不可思議な感覚。
指先に力が入らない。
笑えちゃう。
(過去作)

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