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#205 家具アップサイクル ~ミッドセンチュリーなライティング・ビューローの巻~


家具を再生していて、正直いつも感じることがあります。
古い家具との出会いは一期一会だという事です。
たまたま同じ家具にまた出会うことはありますが、その使用頻度や状態が見事に違っているのが普通です。
家具がどんな家から来たかで、サンディングしても染みが消えない場所もまったく違っています。よって、ペイントしてしまいたい部分と木の美しさを残したい部分も変わってくるのです。
それまでの垢を取るようにオリジナルの美しさを取り戻していきますが、逆に古さや使われた歴史を残すことで魅力を増す場合もあります。
どの部分にどんな加工を施すかは、その家具に触れて作業を進めるなかで、会話するように決まっていきます。

ひとつの家具を仕上げると、同じものには二度と出会えないと分かっています。ですから、いっそ手放したくなくなるほど愛着が湧くこともあります。

ミッドセンチュリーモダン(文字通り20世紀の真ん中ごろ。1940年代半ばから1960代終わりくらいとも、1930年代から1970年代半ばとも)と呼ばれるスタイルがあります。
基本、私はミッドセンチュリーものが大好き。たぶん一番好きなスタイルじゃないかと思います。

オンラインのマーケットプレイスでこんな物件を見つけました。

ミッドセンチュリーモダンのライティングビューロー



持ち主さんは「家にずっとあったんだ」と言われていましたが、この家具を新品で買ったのはご本人の親御さんだと想像します。
生まれた時から家にある家具って、自分で買っていないから、大切にしようという感覚が薄くなったり、そもそも自分が選んだ好みのものではなかったりしますよね。
私が涎を垂らしたデザインは、この持ち主さんにとってはそれほどでもなかったようで、手放した値段がそれを物語っていました。
車に運ぶ時、家具をひっくり返すので今まで見えてなかった埃なんかが丸見えになります。「蜘蛛の巣のおまけつきだよ」と持ち主さん、照れておられました。

今日は、このライティングビューローを手掛けたお話です。

近づくと、マグカップを置いた輪染みが多いです。傾斜部分はどうしてこんな染みになったんでしょうね?

イギリス人はしょっちゅうお茶を飲むので、つい置いちゃうんでしょうね

机部分を開くとこんな感じの汚れが‥‥

長年の黒ずみ


合皮のマット部分も汚れがこびりついています。


まずは中性洗剤を溶かしたぬるま湯で絞った布で、全体をくまなく拭き上げます。
次にサンディングマシンで木の表面をサンディングしていきます。地味な下準備ですが、みるみる綺麗になる過程は楽しいです。

引き出しの取っ手も

ダークな印象だった木の表面が、サンディングともに魅力的な木目と色を現していきます。
どこに色をつけて、どこの木目を残そうか、家具のほうから私に教えてくれた気がします。
もちろんマスキングテープを貼り、プライマー(下地)コートを複数回終え、ようやく塗ったのはマスタードイエローとライトブルー。

今回は作業途中の写真が全く残っていなかったので、塗っては乾かし、擦っては塗るを繰り返した長かった時間を早送りしてしまいます。


完成です!
お店に置かれました。

蓋を開いたところ


使い終わって閉めた状態

閉めた蓋がどうしてこんなツートンカラーなのかわからないのですが、そこがチャーミングなんですよね。

両サイドの木目も面白いので、残しました。

蓋を開けたところ

木って素晴らしいですよね。
あんなに染みだらけだったのに、手間隙をかければ、またこんなに美しい姿に生まれ変われるのですから。擦った後の表面はリンシードオイルで拭き上げただけです。
もうダークな疲れ色は過ぎ去り、温泉上がりのフレッシュさになりました。

お嫁に行っちゃうのも早かったな‥‥
ちょっと親の気分なのかな、ホッとして、嬉しくて、ちょっぴり寂しい‥‥


このマガジン内に投稿していきます。


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