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#99 優しい心の持ちぬしは、われにもあらず受難者となる


枯れ葉の上をしゃくしゃく歩く‥‥

先日おなじく「しゃくしゃく」というオノマトペを使われていた方の文章をnoteで見つけました。
しゃくしゃく‥‥私だけだと思っていた同じ感性のその方がどなただったのかが、わからなくなってしまいました。

もしもお心当たりのある方、どうかコメントで教えてくださるとありがたいです。もう一度読みたいのです‥‥

さて、今私は落ち葉の上をしゃくしゃくできる季節のど真ん中にいます。

家の前を歩いて公道まで出たところにすぐこんな様が広がっています。

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分厚く積もった枯れ葉の中に足を突っ込んで引き上げて、行進するようなのにずるっと引きずるような、ふざけた歩き方をすると「しゃくしゃく」の表現になる。
楽しい‥‥

ところが、そんな私の日常の「ほくそ笑みたいような」楽しみが揺り動かされてしまう、

そんな投稿に出会ってしまうのです。

それが、ほしまるさんのこの記事でした。


なんという感性!

私はしばらく、雷に打たれたような感じがしました。

しばらくほうけたあと、今度は自分のやっていることは一体なんだと説明すればいいのだろう‥‥と、考え込んでしまうのです。

そうして、落ち葉の道を歩いていたら、吉野弘の「夕焼け」を思い出しました。

国語の教科書でひとつ思い出せるものは?と訊かれたら、記憶力の弱い私でもこれだけは鮮明に思い出せる詩です。


いつものことだが
電車は満員だった。
そして
いつものことだが
若者と娘が腰をおろし
としよりが立っていた。
うつむいていた娘が立って
としよりに席をゆずった。
そそくさととしよりが坐った。
礼も言わずにとしよりは次の駅で降りた。
娘は坐った。
別のとしよりが娘の前に
横あいから押されてきた。
娘はうつむいた。
しかし
又立って
席を
そのとしよりにゆずった。
としよりは次の駅で礼を言って降りた。
娘は坐った。
二度あることは と言う通り
別のとしよりが娘の前に
押し出された。
可哀想に
娘はうつむいて
そして今度は席を立たなかった。
次の駅も
次の駅も
下唇をキュッと噛んで
身体をこわばらせてーー。
僕は電車を降りた。
固くなってうつむいて
娘はどこまで行ったろう。
やさしい心の持主は
いつでもどこでも
われにもあらず受難者となる。
何故って
やさしい心の持主は
他人のつらさを自分のつらさのように
感じるから。
やさしい心に責められながら
娘はどこまでゆけるだろう。
下唇を噛んで
つらい気持で
美しい夕焼けも見ないで。

何年生の時の教科書だったのかは思い出せませんが、四、五十年経った今でも、思春期の私にもたらしたインパクトは褪せていないのです。

ほしまるさんの繊細な優しさに憧れながら、なんとなく答えもでないままの数日を過ごしました。


毎日のように卓球クラブへの、または郵便局への道すじとしてしゃくしゃく歩きながら、『私はどうしてこれが愉快で仕方ないのだろう‥‥』と考えるのです。

そして『こういうことかなぁ』と思ったことがあります。

私は美しい落ち場を踏みつけているのではなく、落ち葉と会話しているつもりなのだと。

きっと私のなかに住む幼少の自分が、体裁を気にする大人になった私に、茶目っ気一杯に「けしかける」のかもしれない。

原体験の再現ともいえるのかな。幼いころは枯れ葉とも雨のしずくとも会話ができたはずなのだもの‥‥

春に芽吹き、まぶしい新緑のあと、今度は夏の日差しをどんどん吸い込む。

その年の熟す秋が来て、色を変えた葉っぱたちが地面に落ちる。

一年のサイクルをちゃんと全うするというのはそういうことだ。ただ枯れて朽ちていく。

悲しくも寂しくもない。それらは必ず土に還るのだから‥‥


ほしまるさん。あなたの繊細さはとても清くて、愛おしいほどです。そんな "人と違う感覚" を持たれる優しいほしまるさんと、美しい夕焼けもみないでうつむく少女が重なりました。

下町のお店のママはわかってくれたのですね。

ほしまるさんと比べて、自分はなんて無粋なんだと感じたくらいですが、そんな自分もありにしてあげようと思います。

Eva Cassidyの歌声が好きなところがまた、ほしまるさんなんだなぁ、という想いです。

いろんなことを思い起こさせてくださってありがとうございました。

落ち葉は木に居る時よりも、土に還るために落ちた場所でホッとするのじゃないかな、と私は思うのです‥‥

それを、「時が熟す美しさ」と呼びたいです。



秋が、勢いをつけて深まっています。







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