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パートナーのこと

 背が高い。よくわからないけど、たぶん180cm以上あると思う。比較的小柄なわたしと並ぶと30cm以上差がある。たまに私のオートバイの後ろに乗せることがあるんだけど、前から見ると私の黄色いヘルメットの上に彼の赤いヘルメットが縦にきれいに並んで、串だんごみたいになる。前の車の運転手がバックミラーを指差した後に、助手席の若いお姉さんがこちらを振り返って笑ったことがある。

 そんなにガタイはよくなくて、肩幅は狭くて、胸板は薄くて、足は長いけどお腹だけぽこっと出ている。毎晩のようにソファに座ってタブレットでゲームをしているんだけど、いつも私はそのお腹を枕にしている。なんともいえない柔らかさと弾力性があってたまらない。

 美味しいものを食べると踊り出す習性がある。踊ると言っても、両手をパーにして、胸の前でくるくる円を描く感じ。うほほほほ、とか言ってる。とても美味しいお肉とか、お刺身とか食べた時が多いかな。昨日は自分で作ったひき肉と小松菜のオイルパスタを食べながら、「茹で加減と塩加減が完璧やな」って一人で呟いてた。私にはよくわかんなかったけど。

 私は料理が苦手で、調理中によくパニックになる。そんな時に、まず火を止めたり包丁を置かせた後に両手を広げて、「ぎゅーする?」って聞いてくる。しない、って言っても「まずぎゅーしよ」って説得してくるから、最近は私も反抗しないでぎゅーする。ぎゅーしたあとは大体「深呼吸しよ」って言ってくる。大げさに「うおおおおお」って息を吸って、「ぶひゅひゅひゅひゅ」とか言いながら思い切り脱力する。「はい、みずきもやって」って言われるんだけど、私はいつも笑ってしまってできない。そうすると「なんで!やって!」ってちょっとムキになって、私の笑いが落ち着いてなるべく同じような深呼吸ができるまで待つことになる。

 猫の抱っこが上手。うちの猫は人間の手は敵だと思ってるみたいで、だいたいいつも戦いを挑んで引っ掻いたり噛んだりしてくる。私はちょっと痛いとすぐ「痛い!」って言ってやめちゃうんだけど、パートナーはよっぽどじゃないとやめないので手が傷だらけになってる。私が抱っこすると猫はやめろーって暴れて顔とか引っ掻いてくるんだけど、パートナーが抱っこすると猫は彼の2本の腕の上でまあるくなって、まっすぐ下に垂らした長いしっぽを小さくフリフリしながら、「私の席はここですけど?」みたいな顔でこっちを見てくる。見つめ合うふたりの世界には到底入る隙がなくて、仕方がないからそっと猫の背中を撫でる。暖かくて、ふわふわした猫の身体を感じながら。

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