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太陽の表すもの

今回は、占星術における太陽の意味についてお話したいと思います。

雑誌やTVの占いコーナーなどで使われるのは、ほとんどこの太陽星座。
星に詳しくない人も知っている、そして詳しい人もここから始めたのではないかと思われる、一番メジャーな天体です。

いかにも「自己自身」を表すもののように語られる太陽星座ですが、本来「自己自身」とは切り口によって様々な側面があります。

例えば占星術で自己自身を表す要素としては、次のようなものがあります。

①素の状態(動物的情動・身体的流動・不変的気質)
②生まれ持った性質(身体的印象・気力)
③統合された自己像(意識的・社会的・志向)

この①は月、②は1ハウスが象徴しています。
そしてこの③こそが、太陽の表す「あなた」です。
統合された自己像。つまり、アイデンティティですね。

①と②に関しては「自然性向 nature」であり、無意識に近い自己ですが、太陽は自然な自己ではありません。太陽が表す自己には、「意識・意図」が入り込んでいます。

月や1ハウスは、選ぶ余地のないあなたの生来の性向を表します。※
そして、太陽は、あなたの選ぶであろう姿を表しています。

あなたはどんな人? と訊かれたら、月や1ハウスにしたがって
「感受性が強く、インドア好きです」(月蟹)
「おおらかに見えると言われます」(1ハウス射手座)
と答えたり、金星や水星にしたがって
「新しいものが好きで好奇心旺盛です」(金星双子)
「細かい仕事でもきっちり仕上げられるタイプです」(水星乙女)
などと答えることがあるでしょう。
けれど、

あなたは何者か?

と問われたら、性質や好みや能力の一部だけを取り出しては語れません。
総合的なあなたとは? が問われているからです。

そう訊かれたあなたが、どんな自己像を自分の象徴として選ぶのか。
それを表すのが太陽です。

自分は何者でしょうか。それに答えるためには、段階をふむ必要があります。
生まれた時から自分が何者であるか知っている人はいませんよね。
自己像とは、発見し、確認し、構築していくものです。
太陽星座は25歳から35歳の間に一番影響が強まると言われています。まさにその頃に、自分が何者であるかが固まってくるのです。

まずは生まれつき、身体・性質・性向などの自然な自分らしさの要素が存在します(月・1ハウス)。そして成長して自分の思考を発見し(水星)、人との情報交換の中で自己に目覚めていきます。さらに性愛的な発見を通して自己の対人的な魅力・長所を確認します。
これらの水星・金星期間は、太陽にとって「差異化」の時期でもあります。
自分を客観視できるほど知性が発達すれば、周囲との交流の中で他者と自己の違いを認識し、分析することができます。また性愛においても自己と他者が別な存在であることを実感するとともに、自分自身がどういった魅力を醸しているのか、どんな色合いを持っているのかを、他者の瞳の反射で理解することができます。

そうしたあとでようやく、あなたは自分が何者であるかを選び取っていくでしょう。

この場面であなたが選択するのは、
生まれ落ちたところで 実際に 何ができるのか? どう生きるのか?
ということであり、自分という存在を統合して方向性を定めることであり、まさにそれが太陽の象徴するものです。

つまり、端的に言えば太陽とはあなたの「生き方」です。
この現実世界でのあなたなりの生き抜き方、成功の仕方、自己像なのです。

上述した太陽の年齢域は25歳から35歳。
この範囲のだいたい真ん中ぐらいに(28歳前後)、土星回帰の時期があります。

試練と現実の星である土星。
そんな土星が太陽期間の真ん中にリターンするということは、とても象徴的です。土星の力を借りて自己像を確立するんですね。そうしないと確立できないぐらい、太陽の「お前は何者か?」という問いは難しい、ということです。

誰でもそうですが、自己像というのはなかなか定まりにくいところがあります。一時期「自分探し」や「モラトリアム」という言葉をよく耳にすることがありましたが、太陽期のプレッシャーのきつさの表れでしょう。
人間は、自分自身に夢を見ていたい生き物です。
自分はまだまだこんなものじゃない、と思いたいんですね。※2

また、それと同時に「理想の自分になりたい」「何者かになりたい」という欲求も強く持っています。
小説家の山田詠美さんの本で、「自分がまだnothingである(何者でもない)時代の辛さ」を綴ったものがありますが、ヒリヒリするような痛みが伝わってくる名エッセイでした。

理想の姿。
自分の思う自己。
そして現実。
それらが土星のシビアな試練を通して統合された結果、現実的でありつつ力に溢れた自己像が構築されます。

日本刀が熱され、厳しく鍛錬されてこそ美しく強靭になるように、土星の試練を越えた太陽は力強く揺るぎなくあなたを照らすでしょう。

あなたは、何者か? 何をして、どのように生きるのか?
という問いに対して、心の中ででも、堂々と答えられるでしょうか。
(その痛み、プレッシャー、覚悟をしっかりと抱えながら?)
答えられるとしたら、それが太陽の持つ本来の力であり、そこで答えられるであろうあなたの答えが、太陽星座によって予期されているのです。

散々語られている太陽星座ですが、この機会にいま一度、チェックしてみてはいかがでしょうか。占星術で最初に手をつけるところであり、なんども戻ってくるところ、それが太陽星座です。
きっとチェックするたび、面白い発見があるのではないかと思います。

次回は、太陽のサイン・ハウス・支配ハウス・ルーラー在住ハウスの読み方についてお話ししたいと思います。


※月や1ハウス的な性質は不変的で意志の力で変えられないので、月は過去生(前世)に、そして1ハウスは出生に結び付けられています。
(前世を選べる人も、生まれを選べる人もいませんよね)

※2最近、「俺はまだ本気出してないだけ」という漫画を読みましたが、これもまさに「太陽の定まらなさ」「太陽不遇」を表している良書だと思いました。ちなみに太陽は父親も表しているのですが、主人公の男性は娘に父親らしいことをしてあげられない、という弱みがあり、そこがまた太陽の不遇さを表していて興味深い点でした。








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