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エンドレスヒール#33 -3.11

3月11日(金)(震災当日 深夜)

夫は 聞き覚えのある声なのか、すぐにドアを開けた。
しかして、夫の会社の人間が二人、安否確認に来たのだ。

「岬さん、全く連絡取れないから心配しましたよ。」
夫は頭をかいた。
「いや、携帯も電話も通じなかったから、明日でもいいかと。」
「ダメですよ。所長、待ってますよ。今日は、会社に泊らないと、何が起こるか。」
夫は、気乗りがしないのか、曖昧に答えている。

建設系の仕事をしている夫は、災害時は何かのために家にいないことが多い。
新婚当初の青森でも日本海中部地震の時も、そうだった。
新婚の和美は、知らない土地で何日も独りで放置されたのだ。

「行かないと、マズイかな。」
「なに言ってるんですか!岬さん!」

後日 夫が語ったことには、その時 行きたくなかったそうだ。
直下の栗原で震度7の地震にあい、命拾いした。
本来 1時間で帰れる道を、夜のバイパス 信号も無い光が無い道を車で4時間かけて、やっと帰って来た。

家に帰れた時、それは言葉では言い表せないほどの安心感だったようだ。
だからこそ、この命拾いした日に、仕事とはいえ、行きたくなかったのが本音だったようだ。

「じゃぁ、行くか。」
夫は、仙台市の中心部にある会社に夜中、詰めることになった。
・・・・今から・・・・。

和美の中にも不安が広がる。
震災当日、深夜12時近く、やっと無事確認できた夫は、和美を家に独りおいて、会社にでかけた。

続く
2011年4月19日(火)

エンドレスヒール#33 -3.11

かあさん、僕が帰らなくても何も無かったかのように生きていってね

次回 エンドレスヒール#34 へ続く
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