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エンドレスヒールⅡ-3.11 #27あさみの場合

2011年4月~

開館前、毎日返却ポストに本が返されてきていた。
浅海達6人のバイトは、職員が返却処理した本を、並べ替えと同時に、所定の場所に組み込んでいた。
それでも、全てが返却されたわけではない。
お客様の被災状況が解からない以上、開館したとして全てが返却されるのは不可能と思われた。

お客様の中には、もちろんだが、遠くからわざわざ借りに来ていた方もいた。
N市内でも、4号線(バイパス)まで水が来たのだ。
お客様 全員がどんな状況にあるのか。
想像をすればするほど、恐ろしい状況が考えられて、最悪のことは誰も口にしなかった。

「震災前に貸し出したもので返却されていない本は、全て延滞となっているが、今回は特別措置を取る。」
リーダーが、お客様の状況を考えてN市図書館での応対を説明している。
「震災当日以前からの貸し出し本は、災害本として延滞は問わない。もし、震災で汚れたり、流されたという申し出があれば、事務局で処理し、災害本としての手続きを行っていただくものとする。」

本来、過失によって失くしたり、あまりに酷い汚れや壊れたものは、弁償の対象になる場合もある。
しかし、今回は自然災害。
お客様に過失はない。
手続きだけお願いして、なくなったとしても、弁償は要求しない、ということだ。

そうだ。そうだよ。
お客様が生きて、この図書館に来られたら、それは「良かった!」ということ。
命に勝るものは、なにものも、ありはしないのだから。

2011年6月27日(月)
続く

エンドレスヒールⅡ-3.11 #27あさみの場合

私は泣いていない。理屈で理解しても、感情では納得していない。
私はもう一生、大丈夫にもならないし、落ち着くこともないだろう。

次回 エンドレスヒールⅡ #28はこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n00ffe2d70824

前回 エンドレスヒールⅡ #26は こちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/na53568fcc4c1


②エンドレスヒールⅡ あさみの場合 最初からはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n799a32079029

①エンドレスヒールⅠ 和美の場合 を最初から、まとめて読めるマガジンは、こちらから
https://note.com/mizukiasuka/m/m3589ceb09921


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