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エンドレスヒールⅡ-3.11 #26あさみの場合

(2011年3月10日・震災前日)

「やっぱり、サテュロスは恋人だったかも~~♪」
博物館のポンペイ展を見終わってからのランチ。
千緒莉は、ポンペイランチにご満悦。

浅海は自分がブログで書いている作品に出てくる、「対の天使」でありながら天使と悪魔に生まれた青年を思い出していた。
ポンペイには、ウェヌス(ヴィーナス)やクビド(キューピッド)の壁画が多く、売店にもクビドのストラップが売っていた。
クビドのストラップは、ゴールドとシルバーのものがあり、クビドの飛ぶ姿だが、さらに二つデザインがあった。

一つは正面を向くクビド。
もう一つは、後ろを向いて、天に向かって飛ぼうとしているかのようなクビド。
ゴールドとシルバー。前と後ろ。
対するもの、背を向けるもの。近づくもの、歩みを止めるもの。
対であり、相反するもの。

浅海は頭の中をしばし整理し、前を向くゴールドのクビドと、後ろを向くシルバーのクビドのストラップを買った。
当然 ゴールドがクビドで、シルバーはリオールだ。
(マガジン「トンニャン」参照)

「え?図書館?」
「そう、夏に履歴書入れてたんだけど。まさか、本当に来るとは思ってなくて。
福祉、福祉と大学まで申し込んだんだけど。本の世界に呼び戻されたみたいで。」
「4月から図書館に行くの?」
「一応、明日、午前中に面接なの。たまたま。今日と明日、連休で休みだったから、電話来た時に、休みがあったから、明日にしてもらったの。」

「10日、11日って連休なんだ。」
「そう、10日は千緒ちゃんとポンペイ展の約束してたから、11日に。休みが二日あって良かったわ。」
「仕事切れなくて、ラッキーだね。」
「だね♪」

浅海と千緒莉は、翌週20日の日曜日、ノアヒールの交流会での再会を約束して別れた。
3月20日の交流会は、浅海の住むN市から車で約一時間北にある、S県F市で行われる予定だった。

2011年6月26日(日)
続く

エンドレスヒールⅡ-3.11 #26あさみの場合

私は泣いていない。理屈で理解しても、感情では納得していない。
私はもう一生、大丈夫にもならないし、落ち着くこともないだろう。

次回 エンドレスヒールⅡ #27はこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n5eaf27f42515

前回 エンドレスヒールⅡ #25は こちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n464408c61086

②エンドレスヒールⅡ あさみの場合 最初からはこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n799a32079029


①エンドレスヒールⅠ 和美の場合 を最初から、まとめて読めるマガジンは、こちらから
https://note.com/mizukiasuka/m/m3589ceb09921


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