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元祖 巴の龍#77(地図付)

それぞれの夜が更け、それぞれの朝が来た。

芹乃と葵に別れを告げた一行は、朱欄への道に入った。こ一日かけて朱欄の入り口まで来た。
「これはいったいどうしたことだ」
四人は絶句した。

そこに町はなかった。すべてが廃墟と化し人の姿も見えない。
壊れた家々に瓦礫の山。焼け爛れた痕跡があちこちにあった。
この町が朱欄と呼ばれるのは橋が多く、その橋の欄干が朱であることで朱欄と呼ばれていたのだが、それも見る影もなく、黒コゲになっていた。


それでも一行は、町の中心近くまで足を運んだ。おそらく城であったのだろう。焼けこげた門の跡があった。
門の跡を通り抜けた時のことである。大きな雲に覆われて、暗くなってきた。それは雲ではなく、空をも覆いつくすほどの大きい龍であった。

あれは毒蛇龍(ドクジャリュウ)です。父のもっとも信頼する部下です。気を付けてください。彼は毒を吐くのを得意とします」
桐紗が言うのと、毒蛇龍が毒息を吐くのと、どちらが早かっただろう。毒蛇龍の毒息で一転どす黒い空気が流れて来た。

吸ってはいけません
桐紗に言われて鼻と口をふさいだが、これでは戦えない。その時菊之介の太刀がカタカタと鳴り出した。
菊之介が太刀を抜くと、太刀は光を放ち毒息を吹き飛ばしていく。

毒蛇龍は毒息がきかぬと知ると、今度はその大きな体で襲いかかって来た。菊之介らは躱しながら、攻撃に転じる機会をうかがっていた。
桐紗が毒蛇龍に向かって何か唱えると、毒蛇龍の動きが一瞬止まった。
それと同時に、再び巴の龍の紋章が光りだした。

菊之介と兵衛は斬りかかり、大悟は矢をつがえた。それぞれの力がひとつになって、毒蛇龍の動けない体にひびが入り、割れて木端微塵に砕けた。
毒蛇龍は砕けた頭のかけらから、最後の言葉を残した。

「わしは滅びても定継様がいる。
この朱欄は、桔梗様を安寧より蛇骨へお連れするときに、怒りに任せて、定継様が破壊していかれたのだ。

定継様が通っただけで、この有り様だ。巴の龍よ、これがおまえたちの末路だ。はははは…」
毒蛇龍は事切れた。
菊之介たちは、三つ口定継の恐ろしさを改めて感じるのだった。

続く
ありがとうございましたm(__)m
※毒蛇龍も今までの妖怪も、江戸時代の妖怪画家・鳥山石燕の妖怪画集から、調べたものです。(ゲゲゲの鬼太郎のファンですから(´艸`*)※

地図(モデルは九州ですが、私の線が下手すぎる。2001年作成)

「駒草ーコマクサー」
弟が最後に見たかもしれない光景を見たいんですよ

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