見出し画像

元祖 巴の龍#54(地図付)

新しい年を迎える頃、菊之介と大悟は、狼や密かに桐紗に助けられながら西燕山を無事越えることができた。

西燕山を下りてから、粛清に向かう道すがら、あいの変わらず小物の妖怪に多数襲われたが、大悟も菊之介もかるくあしらいながら先を急いだ。彼らは戦いを続けるたびに強くなっていた。

山を下りてからは狼の姿は見かけなくなったが、桐紗は菊之介だけに時々顔を見せた。
そして菊之は桐紗に会う度に、いつも頬を染め心臓が早鐘のように打ちはじめるのだ。

「菊之介、何だかこの頃無口になりましたね。前は何でも話してくれたものを」
桐紗がそう言いながら寄り添ってくると、自然に体をずらして逃げてしまう。その都度桐紗は悲しそうな顔をした。

「菊之介、もしかしたら、こうして会いに来ること、迷惑なのですか」
ある時桐紗が、意を決して菊之介に聞いた。菊之介は答えられなかった。

「そう、わかりました。そうして何も言わないことが、あなたの答えなのですね。あなたにとっては、私は姉でしかないのですよね。

菊之介も、もう十五。これから好きな女子(おなご)もできるでしょう。
まして、私は敵の娘、私がいつもそばにいることが迷惑でないはずがありませんでした。
私はなんと愚かでしょう。もう、会いません

桐紗はそう言うと、菊之介を一瞥し溢れる涙を隠そうともせず走り去った
「義姉上」
菊之介は、つぶやいて桐紗の走り去った方向を見た。
もう、桐紗の姿は見えない。菊之介は走り出した。

「義姉上、義姉上!」
叫びながら、菊之介は恐ろしい不安にかられた。
もう、ほんとうに桐紗に会えないのだろうか。そんなこと、耐えられるはずがなかった。

「義姉上!!出て来てください。ちゃんと話しますから。もう目をそらしませんから」
いくら探しても桐紗は見つからなかった。菊之介はぜいぜい息をしながら、岩の上に腰を下ろした。

「義姉上、出て来てください。もう二度と会えないなんて嫌です
菊之介は唇を噛んでぶつぶつとつぶやいた。

義姉上が美しすぎるからいけないんです。子供の頃から、どれほど眩しかったか。
今のわたしには眩しくて目を開けていられない恥ずかしくて、言葉を交わすこともできない。

子供の時のように素直に、手をつないだり抱きしめあったりしたいけど、それはもう妹としてではなく、男と女のこと。
義姉上の気持ちもわからないし、聞く勇気もないのに、どうして自然に話せるんだ。

わたしは義姉上が・・・義姉上が、好きなんですずっと前から。義姉上・・・」

続く
ありがとうございましたm(__)m

地図(モデルは九州ですが、私の線が下手すぎる。2001年作成)

大悟と菊之介は西燕山を下り、粛清に向かう。粛清には父・丈之介と芹乃。兄・兵衛と涼原洸綱・葵がいる。

「駒草ーコマクサー」
弟が最後に見たかもしれない光景を見たいんですよ

次回 元祖 巴の龍#55はこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/n4c8f645013c3

前回 元祖 巴の龍#53はこちらから
https://note.com/mizukiasuka/n/ncad12ff21f86


元祖 巴の龍 を最初から、まとめて読めるマガジンは、こちらから
https://note.com/mizukiasuka/m/m19d725f12ae1

「巴の龍」(「元祖 巴の龍」の後に書きなおしたもの、一話のみ)はマガジンこちらから


※私事多忙のため、毎日投稿できないので、まとめて五話づつ、投稿しています。
お時間あるとき、一話ずつ読んでいただけると、嬉しいです(≧▽≦)
いつも、ありがとうございますm(__)m


もしよろしければ、サポートしていただけると嬉しいです。いつも最後までお読みいただき、ありがとうございますm(__)m(*^_^*)