エンドレスヒールⅡ-3.11　＃19あさみの場合

2023年6月13日 18:26

（2011年4月8日（4月7日の大きな余震の翌日）

明けて４月８日（金）、昨晩無情な震度６強の余震を体験し、電気も付かず、水も出ない図書館の仕事が始まった。

「今日は一階の書棚から落ちた本を書棚に戻しましょう。」
昨日の上の書庫の本は、どうなったのだろう。
途中まで整理した、あの本は。
浅海は、一階の立ち並ぶ書棚を見て愕然とした。
散乱して、何が何やら、どこがどこやら、判らなくなっている。
きっと、上の書庫も、私たちが並べ替えた本も、この状態なのだ。
一週間もかけて、やっと並べたのに。

「お気の毒よね。」
４月から一緒にアルバイトに入った荒木だ。
「私たちは４月からだけど、３月１１日の震災からずっと携わって来た人たちは、また初めに逆戻りだもの。辛いわよね。」
その通りだった。
荒木の言うとおりだった。
浅海は　まだ良い。
３月から、一ヶ月も頑張って来た人たちがいる。
その人たちの落胆は、浅海の比ではないだろう。

本来、４月中旬には図書館再開の予定だった。
しかし、この状態では難しいだろう。
初めから整理しなおしでは。
これから、どのくらい　かかるのだろう。
ヘルメットをかぶり、電気もつかない　空調も無い寒い中、浅海達は再び迎えるべくゴールに向かって歩き始めた。

２０１１年６月１９日（日）
続く