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ハトヤのおばさん


少し前のあんず棒の投稿に、昔、西浅草に鳩屋という駄菓子屋があったというコメントを頂いたのと
その翌日に家のバルコニーの物置きの上に羽が生える前のピンク色の鳥の赤ちゃんの死骸を発見したのとで思い出した

幼少期
当時まだ鳩ヶ谷市であった、家の近所にあったハトヤという駄菓子屋とそのお店のおばさんのこと

ハトヤのおばさんは
みんなおばさんと言っていたけれど、小さくてひっつめ髪でなんだかスプーンおばさんを悪くした魔女みたいな雰囲気のお婆さんだった
ニコッとしたことはあったかどうか思い出せない様な無愛想な人だった

私は毎日おばあちゃんに50円玉を貰い歩いて1分とかからぬハトヤへ行き駄菓子を買った

幼い子供でも狭いと思うほどの小さなお店
出入り口の窓の近くは明るかったけれど
そこ以外は薄暗かった様に思う
いつもおばさんがいた奥の方には日用品も置いてあった様なボンヤリとした記憶がある

ある日
姉と母と3人暮らしの小さなアパートの隣の祖父母宅にいると
と言っても毎日ほぼずっとそこにいたのだが

突然ハトヤのおばさんがやってきた

祖父母宅の二階に住んでいた叔父家族の従兄弟のお兄ちゃんが何か盗ったという事だった
私には真偽不明のままだが
いつも薄暗いお店にじいっとしているハトヤのおばさんが
まっ昼間に家に来た光景の方が衝撃的で未だによく覚えている

そのおばさん
私が25〜26歳の時
小さな小さなお店と共に
火事で焼け死んでしまった

自殺では?という話も耳にしたが、私はコンロの火が服に引火したのではないかと思っている

幼少期にいたアパートから引っ越した後の一軒家はハトヤの裏手
直線距離で20〜30mだろうか

ある夜家の中で焦臭さを感じ玄関から外に出ると
見上げた夜空は明るく
パチパチという音と共に舞う燃えかす

近くの火事が心配ですぐに明るい方へ観に行くと
小さなハトヤが燃えていた

全部がすっかり炎の中だった

おばさんもその中にいるだろうと思うと

一枚も

写真を撮る気にはならなかった


住宅密集地なのに燃え広がらなかったのは
風がない日だったこともあるが
ハトヤがあまりにも小さかったからだろう

駄菓子屋の思い出
鳥の死骸
娘にミッキはいつも写真を撮ると言われたこと

色々混ざって
久しぶりにハトヤのおばさんを思い出した

大きくなってからお店へ行ったのか道で会ったのかいつどこだったかは覚えていないけれど
ハトヤのおばさんのニヤリとした顔を見た事がある気がする

作り上げたイメージなのか確かな記憶なのかは定かでない

ただ私は
ハトヤのおばさんが結構好きだった

おばさんは
あの頃一体何歳だったのだろう

ご近所に本名を知っている人はいたのだろうか

毎日何を食べていたのだろう

大晦日はどんな風に過ごしていたのだろう

お腹を抱えて笑うことはあったのだろうか

おばさんは

寂しくなかったかな


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