見出し画像

徘徊するその先には⑧四暗刻で大逆転昇級した女リー最終節編

第17期女流桜花C1リーグ最終節

昇級6名・降級6名/25名中

開始前成績 14位 -21.6ポイント

同卓者 N氏、M氏、T氏

今期の女リーは諦めていた。
1節目はコロナ+の濃厚接触者になり欠場(ノーペナルティ)、2節目から参戦して浮いたものの、3節目と4節目でけっこうな負け。
実力不足を悟り、今期は勉強と割り切って、来期から立て直して行くつもりだった。

……が何と、奇跡が起こってしまう。

――――――――――――――――――――――

1回戦

起家スタート。
その最初の一局目、配牌を取る時に、対子になっていた白を1枚、倒してしまった。

連盟には見せ牌の規定はなく、見せた牌での出アガリも可能である。

「見せ牌」という概念とそれに纏わるルール(鳴き、出アガリ禁止など)については、この手記ではわざわざ解説はしない。

とにかく、連盟には見せ牌の規定はない。何も気にせずに打てば良いのである。

というワケで、見せた白は1枚目から仕掛けていった。

カン3ピン待ちでテンパイしたら、すぐにアガリ牌が放たれた。手を倒し、2900点を入手する。

別に、卓内に嫌な空気を感じたワケではない。
同卓者に「見せ牌したのに……」なんて思う人は、きっといないだろう。

でも、自分で自分にモヤモヤしてしまった。
気にしないと言いつつ気にするなら、やはり見せ牌はポンしたりしない方が良いのかなぁと首をひねりながら、次の局へと向かう。

次局は忘れたが、やはりポンして1500点ぐらいの手をあがった。
目無しの位置からの安手の連荘も別に悪いことではないのだが、やはり自分で自分にモヤってしまう物があった。

そして奇跡は、この妙な気まずさの後に起こるのだから、麻雀の神様って相当に意味不明だ。

東1局2本場。
ドラは8ソー。下家の仕掛けがソーズ模様なので抑えていたら、自分の手にどんどん重なり、手の内に暗刻が三つあるイーシャンテンとなった。

打点はそこそこに見込める手だが、ソーズがネック。一枚たりともソーズなんて切りたくない。一応、粘ってみるが、5ソーとか9ソーとか引いたら、もう止めにしておこうと思った。

すると4ピンが重なったので、3ピンを切り、カン7ソーの三暗ドラ1のテンパイに。当然、ダマだ。場に高いソーズのドラ表なんて、アガれる気しないし。
そして次順、4枚目の9ピンを引いた。安牌が無くなるのは怖いけど、いざという時は4ピンがあるし……と暗槓したら、嶺上から8ソーを発掘。

ツモり四暗刻のテンパイだ。
しかし、テンパイ取るには6ソーを切らなければいけない。
ドラまたぎの、6ソー。

やだ、怖すぎる!
4ピン切ってシャンテン戻しする?なんて弱気が芽生えてくるが、いやいやこんな高い手で降りるのはダメでしょ、と恐る恐る6ソーを切った。

今思うと、3ソーと4ソーをこんなに固められていたら、相手はソーズのホンイツ所じゃないだろう。
仮に当たったとしても、せいぜい7700。こちらは18000確定で、ツモれば役満。おまけに場況的に4ピンはかなり良い待ちで、出アガリも期待出来た。

ここで降りるという発想が少しでも湧いてくる自分って本当にダメだなと思う。6ソーなんて、ノータイムで切り飛ばせって!

さて、決死の思いで切ったこの6ソー。
下家は仕掛けるかどうか悩んでいる様子があったが、動かず。

あら、まだ遠かったのかしら……?と思いながら次順の牌に手を伸ばすと、

え、8ソー!!

想定外の役満に、年甲斐もなくキャピキャピした感じで発声してしまったw

特に強い意志も無く、回し気味で打っていたら、まさかの16000オール。

リーグ戦会場というのはBGMも騒音も無く、とても静かな場所だ。そして最終節は昇降級がかかっているので、緊張感マックス。
だから他卓が高い手あがると、やけに耳に入る。「8000」とか「12000」って声が聞こえると、凄いなぁ、羨ましいなぁと思う。
「18000」なんて聞こえたら、一体どんな手をあがったのか気になり、振り返って覗き見したい衝動に駆られてしまうw

私の「16000オールは16200オール」も、聞こえてしまったかしら?もしかしたら、動揺させちゃったかしら?なんてニンマリしながら、目の前に何本も置かれた万点棒をしまった♡

その後も絶好調で、リーヅモ三色などを和了し、何と9万5千点まで加点。
しかし、南入して親に12000放銃してしまったりして、フィニッシュは7万点くらい……と微妙な感触で終了した。

大きなトップを取れたが、トータルはまだ+33くらい。
昇級ボーダーには、まだまだ足りていない。
役満上がった奇跡を生かしたいが、どうなるかなぁ。勝ち切れる自信はイマイチ無いなぁ……と不安を抱きながら、2回戦へと進んだ。

トップ +54.2
――――――――――――――――――――――
2回戦

昇級ボーダーは+50ぐらいと予想していた。
だから最低でもここから+20、確実に昇級するには+30を目標にしないといけない。
残り半荘3回で+2~30って、けっこう勝たないとクリア出来ない数字。
役満あがったのにキツイなぁ。でも、スタート地点が-20だから仕方ないか。むしろあの位置から半荘1回で昇級争いという夢を見れる所に来れたのだからラッキーだと思わなきゃなぁ……とふんわりしたモチベーションで卓に着く。

さて、2回戦はあまり手が入らなかったが、慎重に打って原点近くをキープして、南入。

ドラは五マンで、中とオタ風の北が対子、他はマンズの多い手が入る。中から仕掛けようと思ったが、持ち持ちなのか全然出てこない。
2枚目の北が切られたので渋々でポンし、両面チーを入れ、ようやく一マンと中のシャンポンでテンパイ。

ホンイツ 2600点

ドラ色ホンイツなので出アガリは難しいかなと思ったけれど、一マンでロン出来た。
それほど手は入ってなかったのに、気が付くと36800点の2着で終了していたから、やはり今日はポイントに恵まれている日なのかもしれない。

2着 +10.8

――――――――――――――――――――――
3回戦

開始前に、1回戦の速報が出ていたのでチェックした。
昇級枠6名の所、7位になっていた。思ったよりも、順位が高い。
ということはボーダーは団子状態ではないか?と思ったが、割とバラけている。大きくボーダーが上がりそうな雰囲気は無く、やはり50付近となりそうだ。
私のポイントは2回戦終わった時点で、+44くらい。
ということは、あと10ポイントあれば昇級ゾーンで、20ポイント上積出来ればほぼ確定。
これは行けるかもしれない、いや、行きたい!と強い意思で3回戦へ。

勝利所の半荘であるが、印象が少ない。

ただストレートにテンパイを作り、タンヤオドラ1とか役牌ドラドラなどの満貫に至らない手をあがって、局を回していく感じだった。

例えば一手替わり三色かイーペーコーのカン6ピン待ちテンパイ。4ピンか7ピン引いたらリーチしようと思っていたけれど、そういうドラマチックな展開は無く、すぐに6ピンで出アガリ。

タンヤオドラ1 2600

とにかく、早い。そして軽い。そんなシンプルな半荘だった。

そして私は目標にしていた+20ポイントをあっさりと手に入れたのだった。

トップ +19.2

――――――――――――――――――――――

4回戦
開始前に速報をチェック。
2回戦終了時点で6位になっていた。
そこから20近くプラスしているから、もう余裕ある昇級圏内にいるはずだ。(ちなみに3位だった)

いよいよ最終戦。浮けば昇級。
マイナスしても10ポイントくらいなら、大丈夫。
それ以上負けても、もしかしたら昇級出来るかもしれないと、そんな風に自分のポイント状況を把握。

さて、最終節は他卓のスコアを覗いて良いことになっている。
何人かの選手が私の卓に来て、サイドテーブルに置いたスコア表を確認していくのが目に入る。
私は見に行かなかった。
与えられた情報は2回戦までの速報だけで良い。後は自分との勝負!

リーグ戦最終節の最終回は、思わぬ大荒れとなることがある。
立て続けに4000オールや6000オールをツモられたら、ここまで重ねて来たポイントが全て水の泡だ。ここまで来て、そんな展開に泣かされたくない。

そんな私の祈りが通じたのか、さくさくと小場で回っていく。

しかし加点出来ず、南入して28000点くらいの三着目。ラスは25000点くらい。ここでもし満ツモとかされて点棒を削られ、オーラスでラスと入れ替わるような事態が起これば、私の女流桜花は終わる。

少しでも良いので、加点したい……!

南2局。配牌からドラの發2枚があり、鳴けなかったが面前でテンパイ。
ピンズでの好形の変化、シャンポンへの変化などいろいろ選択はあるが、ピンズの上が決して悪い状況では無かったので、もうこれは勝負手だとリーチした。
8ピンが出て、5200点。昇級を決めるアガリに、安堵の息をついた。

リーチドラドラ 5200

オーラス、降級ゾーンから既に脱出した親は無理に加点に行かずに静かに流局。私はノーテン罰符を支払い、無事に浮きで終わることが出来た。

3着 +2.3

――――――――――――――――――――――

スコア表を提出して、すぐに帰途についた。
結果は確信があったので、運営に確認はしない。

出口で稲岡プロに話しかけられたが、頭がフワフワで上手く受け答えできなかった。せっかくの機会なのに、勿体なかったな……。
稲岡プロは後から現れた友達と話し始めた。
大阪弁のやり取りが凄く可愛くて、綻んだ気持ちになる。

道場を出ると、いつもの横断歩道。
赤信号だった。
真昼間なので、交通量は凄く多い。

さすがに渡ることは出来ず、おとなしく信号待ちをする。

そうだ、夫に知らせなきゃ!

スマホを操作しているうちに青信号になり、私は耳にあてて呼び出し音を聞きながら、横断歩道を渡る。

夫は電話に出なかった。

きっと、夜の雀荘バイトに備えて仮眠しているのだろう。
前は速報見て、勝負の行方を気にしてくれていたのに……と思うと、寂しい。
速報見て欲しかったなぁ。1回戦の大勝利に驚いて欲しかったよ。こいつ、勝っちゃうんじゃないかってドキドキして欲しかったよ。

まぁ、開始時点のポイント状況があれだから……仕方ないか。
その代わり、起きた時に物凄くびっくりするんだろうなと思うと、ついついニンマリしてしまう。

私は諦めて電話を切った。速足で残りの横断歩道を渡るうちに、やっぱり途中から走り出してしまうのだった。

最終節 +86.5
トータルポイント+64.9
14位→5位 Bリーグへ昇級

NEXT→プロリーグ2節目

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?