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てぃくる 586 庇の下

 ホームセンターの園芸コーナー。
 棚に並べられている鉢物は、どれも夏に飽いて元気がない。夏に飽いているのは私も同じだ。痛く感じるほどの日差しから逃れようと、波板を差しかけただけの粗末な庇の下に駆け込む。

 不思議なもので、空間はどこも途切れていないのに、庇の下ではふっと世界が変わる。
 苔の生えた半透明の樹脂板が少しだけ陽光を和らげ、まるで大魚に追われた小魚が逃げ込むようにして、私のような買い物客が三々五々庇の下に集まってくる。

 頭上を見上げると、雲一つない蒼天。それなのに、気分は水面下だ。何もかもがあまりにあからさまで、自分をしまっておける場所がどこにもない。だからと言って、ずっと庇の下に隠れていてるわけにもいかない。

 水から出れば干からびてしまうくせに水に倦んだ小魚が一尾。恨めしげに天界を見上げ、つんと口を尖らせる。
 庇から漏れ落ちる光をまとって、枝垂れた宝塚が藻のようにゆらゆらと揺れていた。

(デュランタ“宝塚”)


閉じた日傘庇の下に置き忘る

(2019-08-26)

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