桜ってのは、いい加減に使われ過ぎだと思うぜ。

　セイヨウミザクラはまだわかる。間違いなく桜の仲間だからな。
　ウワミズザクラとか、シウリザクラとか、イヌザクラとか、桜の花に見えなくても、確かに桜の仲間だ。

　だがフサザクラとかツガザクラとかは、そもそも桜となにも関係ねえだろ。それでも、木だからまだいいさ。
　サクラソウの仲間は最後の『草』が落ちちまってるのがあるんだ。ハクサンコザクラとか、ヒナザクラとか。ちゃんと草をつけてくれよ。まったく。

　許せないのは、植物ですらないやつだ。
　姥桜……失礼な言い草だよな。人寄せのサクラ……ずるだろ。同期の桜……勝手にくくらねえでくれ。刺青の桜吹雪なんか、ちっとも散りゃあしねえ。おかしいだろ。なあ、遠山の金さん。

　桜は日本人の精神そのものなんだ。その名をニセモノに使わんでくれや！

「そういうおまえも、本物の桜じゃないだろが！」

　まあ、芝桜相手に怒ったところでしょうがありません。
　芝桜だけでなく、アッツザクラとかナンヨウザクラとかテイキンザクラとか、本来の桜とは全く関係のない連中がうようよいます。もうその名前で定着していますので、今更おかしいだろとぶつくさ言ったところでしょうがありません。

　もっとも、百合とか蘭はもっとぐっちゃぐちゃですけどね。

腰下ろすことを拒みて芝桜

（2021-04-20）