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野田琺瑯のやかんと新生活(私の暮らしを彩るもの#31)

私の東京での「暮らし」は一杯の温かい紅茶から始まった。



上京したときに母に持たされたものがいくつかある。
実家で毎日のように使っていた、使いやすい白い器の私の分。
自分では買わないような、ふわふわのタオル。
なぜか包丁を研ぐやつも持たされた。

とりわけ重要視されていたのが「やかん」であった。
母曰く、「電子レンジとやかんさえあれば、食周りはなんとかなる」と。

最初は電気ケトルを考えていたのだが、母がキッチン用品のセレクトショップを見せて、野田放浪のケトルを薦めてくれた。

この凛としたフォルム。
丸くないし四角くもない、「やかん」って感じの形。
加えてこのネイビーの色がドンピシャで、「これにして!!!」とすぐに気が変わった。

ちょうどその頃地元のデパートの改装セールがあって、野田琺瑯の商品も手ごろな価格で買えた。
母は逆に「本当にこれでよかったの?よかったの?」と不安そうだったが、私は新生活にこのケトルがあることがとても楽しみだった。


結果は大正解だった。

引っ越し直前まで私は忙しくしていたので、ケトル以外のいろんなもの(包丁、まな板、清掃用品等etc…)を母と弟に丸投げしていた。
私の好きなインスタントラーメンや紅茶、コーヒーを間に詰めて、良い感じの荷物セットが完成。
(頭が上がらない…)

引っ越しは私が一日先に現地入りして、引っ越し荷物と別に郵送した母作成の一人暮らしセットを受け取り、部屋の掃除をした。
その夜はホテルに宿泊した。

問題はここからだった。
私が現地入りした次の日に母と、なぜか弟も手伝いにやってきたのだが、その日の夕方に私が過労で熱を出し動けなくなった。
そして弟がノロウイルスで倒れた(なぜついてきた)。

熱を出すなんて本当に久しぶりで、慣れない土地で母は二人を看病しなければならず、大変だったと思う。
というか、すぐ近くにあるドラッグストアを見逃して、なぜかすごく遠くに買い物に行っていたのを考えると、結構焦っていたのだろう。

次の日、
私は単に疲れていただけなので、優しい味のする食べ物を食べて、いっぱい寝て、けっこうだるいが動けるようになった。
弟もヤマは越えて二足歩行できるようになっていた。

いよいよ引っ越し。
とはいえ、荷物は少なく、すぐに運び終わった。
私は回復したとはいえヘロヘロだったので、最低限のキッチンの片づけを母に依頼。
代わりに近所のローソンにお昼ご飯を買いに行った。


前日に送った荷物の中に入れてあったマグカップ二個、リプトンのイエローラベルの紅茶、そしてケトルで紅茶を淹れた。

その紅茶は普通の紅茶だったが、今まで飲んだ中でいちばんほっとする味がした。
母もおんなじことを言っていた。
そこで温かい飲み物があれば、きちんと暮らしていけると学んだ。

それからケトルは毎日大活躍している。
出しっぱなしにしているので毎日目に付く。
本当にかわいい。何度でも言う。かわいい。

毎日紅茶を飲むとそれなりにお金がかかるので、最近は毎晩簡単味噌汁を作っている。
味噌と白だし少々にお湯を注ぐと立派なみそ汁の味になる。
心に余裕がない時ほどできないのだが、そういうときこそ作るよう心掛けている。


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毎日の暮らしに愛する道具があれば、多少大変でも面倒でもきちんとやれる。
逆を言うと、きちんとした暮らしの中には自分にとって何かしらの付加価値のある道具がある。

毎日投稿をはじめて1か月が経ちました。
これからも毎日、自分の暮らしにまつわる様々なものについて文章を更新していきます。
今日みたいな暮らしの道具から、食べもの、ファッション、機械までいろいろなものを改めて見つめ直してみたいと思います。
そして、自分にとって最適な暮らしについて模索するとともに、発信していきます。

どうか暖かく見守ってください。

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