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夢告の井、夢小路

寝物語をしましょうか。



夢をある程度コントロールすることは実は誰にでもできる。
小さい頃のこと、覚えている?
見たい夢を見ていたはず。
将来したいことの方の夢も、
夜ねむる時に見る方の夢も。
ある部族は、夜眠る時に見る夢をもう一つの現実だと考えていて、朝の会議でみんな真面目にその内容を話し合うという。



小説のタイトルではないが、「飛ぶ夢」を見るのが「苦手」だった。
夢の中で空を飛ぶ。飛びたい。
けれど頭の芯で考えてしまう。
『だめよ。人間が空を飛べるわけない』
思った途端私は空から落下して、冷や汗をかきながら目を覚ましていた。
いま?
やすやすと飛べる。



夢の中まで、何を気ぃ遣ってたのかな。几帳面も心配も重力も、決まり事なんてみんな捨てていいのにね。



夢の中に、懐かしいけれど知らない存在が出てきたりする。
そして何か懐かしい話をする。
過去だったり、これから起こることだったり。
ああそうなのね。ありがとね。
そこでいちいち問わなくていい。
あなたが誰なのか、なんなのか、などとは。
自分の深層は本当は誰でも知っている。存在はそのあらわれにすぎない。
もし聞けばばか扱いされることもある。お前はそんなことすら忘れ果てたのかと。自分のことも分からないのかと。



自分と仲良くなれば、「向こう」もほほえむ。もう一人の自分、鏡の向こうの世界、夢の中の世界。
リアルなどとほざいてお金や肉体の健康の心配をしてた時は見えなかった。意識すらしなかった。誰か自分以外に執着のように愛しすぎてる者がいてもダメだ。それはそういう目をつぶしてしまう。
寂しい、などと感じるようでは。



先日、寝てではなくて目覚めながらとある虹を見た。
夫が運転する車の助手席から、妙だなと思った。
太陽の方向に見えている。形を変えながら、しかもいつまでも消えない。
『蟲師』に出てくる虹蛇、と同じ。そんなことってある?でも、肉眼で見えている。



夫は見えないしそんなこと話したくないと言ったので黙って、うっとり見てた。




分かったの。その美しいものは実在で、美しいことを話しかけてきていて、それが言葉ではないすべての、シンプルな優しい答えだと。
おまえはそれでいい、誰もそのままでいい、なんにも心配しないでいいんだよ。
私は思わずほほえんでしまってた。
すると虹は、言った。
「それ。それでいいの。じゃ、またあとでね」

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