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[月記]23年5月 語呂

1月は行く、2月は逃げる、3月は去る、4月は死ぬ。そして5月は6月と合わせて語呂合わせ月間です。そして「意味が分からない」と四の五の言うあなたはろくでなしです。

前回の月記から私の誕生日が春頃であることが明らかにされているが、もっと具体的に言うと4月7日である。そして前回の月記の冒頭ででてきた医師の親友 (以後、彼をDr. と呼ぶ) は私の誕生日を一生憶えてくれない。私はDr. の誕生日には毎年LINEでメッセージを送るが、その逆はいままでにほとんどなかった。4月の下旬に「そういえば先月、誕生日だった? おめでとう」と言われるのが関の山だ。とはいえ「医者なのだから憶えるのは得意だろう」という批判的な意見は「医者なのだから他にもっと憶えることがあるのだろう」というより好意的な意見によって打ち消されるため、これに関する不満が私にあるわけではない。

LINE上でDr. とこんなやりとりをしたことがある。

Dr.「正直2だったか7だったかも定かではないけど過ぎたことだけはわかるわ、誕生日おめ!!!」
私「4/7よ。フランシスコ・ザビエルの誕生日と同じ、と覚えてください。もしそれが難しければフランシスコ・ザビエルが東アジア布教のためリスボンを発った日付と同じ、と覚えてください」
Dr.「誕生日に大義のため異国へ向かうザビエル△ということは覚えられそう。水述さんも誕生日に大一番をしてくれたら同一視できそう」
私「同一視されたところで肝心の日付を覚えてもらえなさそうなので『フラン4スコ・ザビL』って覚えてください。こっちはこっちで、次会うときまでに本名をフランシスコ・ザビエルに改名しておくね」

ちなみに1か月後くらいにDr.に私の誕生日を確認してみると、憶え方があったことだけは憶えていて具体的な日付は憶えていなかった。ザビエルはキャラが濃いため思い出しやすいかと思ったのだが、まだまだ禿げ度が足りなかったのかもしれない。私は無言でゲームHITMANシリーズの主人公・エージェント47の写真を送った。Dr. はようやく私の誕生日を憶えてくれた。

……語呂について語ろうと思っていたのに、語呂が有効ではない例を挙げてしまった。今一度、仕切り直すことにしよう。

私が大学受験をしていた頃、センター試験 (現・共通テスト) のとある教科で8割以上を取る必要に駆られていた。その教科は世界史。他の全ての教科は8割前後あったので、アベレージで5割しか取れない世界史だけがネックだったのだ。
世界史は横のつながりを意識するのが難しくて、中国史やヨーロッパ史を個別に憶えても「唐の時代、フランク王国ではカール大帝の戴冠があった」などということはなかなかぴんと来ないものだ。しかしセンター試験ではそのような知識が問われる問題がある。それならばどう対処すれば良いか? 私は世界史における主要な出来事の全てについて、それが起こった西暦年を憶えることにした。

そうはいっても世界史における主要な出来事は500件を超える。それら全てに3桁ないし4桁の情報を紐付けていくのは骨が折れる。そういう受験生の苦労を知ってか、世の中には世界史用語専門の語呂辞典のようなものがある。

私が当時使っていたのは世界史年代ワンフレーズだった。より有名な参考書にエロ語呂世界史年号というものがあるが、表紙のどう見ても男性器なタイトル枠と、帯の「早漏・包茎・情事対応」というフレーズが気持ち悪くて私は手に取ったことが無い。

ワンフレーズの語呂は可愛らしいものが多く「カイロ温かい牧師さん (カイロ会談, 1943)」「精神楽よー風呂後 (西晋, 首都は洛陽, 265)」「2個ウィンナー、いる野菜? (第二次ウィーン包囲, 1683)」などは私のお気に入りだ。時に「ミラノ、ミドミ♪ (ミラノ勅令, 313)」や「新石器7000円 (新石器時代, 紀元前7000)」などといった強行突破もあるが、それも含めて非常に愛おしい。私は無事に本番のセンタ―世界史で89点を取ることができた (ただし受験には落ちた)。

語呂を作ると、偶然の産物でしばしば珍妙な取り合わせが生まれる。それが面白く、さらにその面白さで印象に残りやすい。私は語呂が好きだ。

最近は数字の羅列だけで短文を書く試みをしているのだが、その話は語呂合わせ月間の後半に取っておくことにしよう。