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お不動さま

お不動さまが燃えている
後背にめらめらと炎を上げて
気づくとわたしも燃えている
おなじ炎に巻かれている
燃え尽きてしまえばいいと思う

お不動さまは怒りに燃える
怒りながらも泣いている
厳しさとあわれみが同時に熾る
業を祓うときにはみずからも
ひととともに燃えるのだ

お不動さまの涙はみえない
流れるそばから火の熱で
瞬時に消えてしまうのだ
ゆえに怒りしかみえないが
おそらく涙はみせないのだろう

お不動さまの肌は青黒い
焼け焦げて黒光りするからだ
燃え盛る炎のさなか
炎より輝けるものをみて
光る闇があるのかとハッとする

お不動さまは冷たくもあたたかい
寸分の隙もなく炎に包み
容赦なく焚きつけるのに
決して燃え尽きることのない
たましいをかえしてくれる

お不動さまは焚き上げる
祈りを天へ巻き上げる
くべられるわたしさえ
いつかだれかの祈りだと
光の一つなのだと知らされる

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