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連載中国史18 漢(4)

後漢時代は中国古典文化の完成期でもあった。班超の兄である班固は「史記」に倣って前漢時代の歴史を紀伝体で記述した。彼が謀叛事件に連座して獄死した後は妹の班昭が事業を引き継ぎ、「史記」に続く正史としての「漢書」を完成させた。

漢書(Wikipediaより)

学問の分野では、儒教の官学化を背景として訓詁学が発展した。これは儒教のテクストの字句課解釈を研究する学問であり、馬融や鄭玄らによって精緻な考察がなされたが、その分、教義の固定化を招く結果にもなった。

蔡倫(WIkipediaより)

後漢時代の文化で最も後世に影響を与えたものは、蔡倫による製紙法の改良であろう。それまでは竹簡・木簡に文字を記して伝達していたメッセージが彼の発明した実用的な「蔡倫紙」に記されて普及することで、情報伝達の効率が飛躍的に進化したのである。同じ頃、許慎によって、中国最古の字書である「説文解字」も編纂された。

黄巾の乱関係図(love-spo.comより)

製紙法を革新した蔡倫は宦官だった。「前漢は外戚で断絶し、後漢は宦官で国を傾けた」といわれる。良くも悪くも、皇帝の近くに仕える宦官の存在感は大きく、能力的にも異才を持つ者が多かった。166年に中央官僚と宦官の対立によって起こった党錮の禁と呼ばれる内紛によって後漢王朝は弱体化した。一方、後漢末には、張角・張陵がそれぞれ太平道・五斗米道と呼ばれる民間宗教を起こし、呪術や祈祷によって病気を治すとして、民衆の支持を集めていた。やがて太平道の信者たちを中心に、184年に全国規模の反乱である黄巾の乱が起こる。内紛によって弱体化した後漢王朝に、もはや反乱を鎮圧する力はなかった。求心力を失った中華大陸は、三国鼎立の分裂時代へと入っていくのである。

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