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連載 洋楽今昔④ Girls Just Want To Have Fun と Shake It Off

今回は元気な女子の歌ということで、シンディ・ローパーの Girls Just Want To Have Fun (1984) と、テイラー・スイフトの Shake It Off (2014) を比較してみたいと思います。

      Girls Just Want To Have Fun
I come home in the morning light
My mother says when you gonna live your life right
Oh mother dear we're not the fortunate one
And girls they wanna have fun
Oh girls just want to have fun

The phone rings in the middle of the night
My father yells what you gonna do with your life
Oh daddy dear you know you're still number one
But girls they wanna have fun
Oh girls just wanto to have....

That's all they really want some fun
When the working day is done
Oh girls they wanna have fun
Oh girls just want to have fun

 朝帰りをするとママが言う
 いつになったら まともな生活をするつもりなの
 ねえママ 私たちってツイてない生き物よね
 女の子だって楽しみたいのよ
 ただ楽しみたいだけ

 夜中に電話が鳴るとパパが怒鳴る
 この先おまえは どうするつもりなんだ
 ねえパパ あなたは今でも私のナンバーワンよ
 でも女の子だって楽しみたいの
 
 仕事が終わったら楽しみたいだけ
 女の子だって楽しみたい それだけなのよ

  Shake It Off
I stay out too late, got nothing in my brain
That's what people say, that's what people say
I got on too many dates , but can't make them stay
At least that's what people say, that's what people say

But I keep cruising, can't stop, won't stop moving
It's like I got this music in my mind
Sayng "it's gonna be alright"

Cause the players gonna play, play, play, play, play
And the haters gonnna hate, hate, hate, hate, hate
Baby, I'm just gonna shake, shake, shake, shake, shake
Shake it off, shake it off, shake it off, shake it off

Heart-breakers gonna break, break, break, break, break
And the fakers gonna fake, fake, fake, fake, fake
Baby, I'm just gonna shake, shake, shake, shake, shake
Shake it off, shake it off, shake it off, shake it off
 
 遅くまで夜遊びばかりで 頭の中は空っぽ
 みんなそう言ってる そう言ってるよね
 たくさんデートしても どれも長続きしない
 みんなそう言ってる そう言ってるよね

 でも私は進み続ける 止まれないし止まるつもりもない
 心の中で鳴り続けるこの曲が 大丈夫だって言ってくれるから

 だって遊ぶ人は遊び続けるし 憎む人は憎み続けるし
 とにかく私は踊り続けるだけ そんなの振り払ってやるわ

 傷つける人は傷つけ続けるし 嘘つきは嘘をつき続けるし
 とにかく私は踊り続けるだけ 気にしてなんていられない

どちらもアップテンポの元気が出る曲ですが、前者がパパやママに代表される保守的な世間の目に対して、女の子だって楽しみたいのよ、とシンプルに主張しているのに対し、後者は少し複雑です。"hate" や "fake" が歌詞に含まれていることに着目すると、ここで意識されている世間には何らかの悪意が含まれているように感じられるのです。

"shake it off" は「振り払う」とか「気にしない」という意味の熟語で、"have fun" と比べてみると、随分と振り切った、強いイメージがあります。両者の間には30年の時間差があり、その間に米国でも日本でもジェンダーギャップはかなり解消されたような気がするのですが、表層での社会的性差が見えにくくなった分だけ悪意や差別意識は潜在化し、「出る杭」的存在に対する風当たりは、以前よりも嫌味な湿り気を帯びてきているのかもしれません。

ヘイトやフェイクを振り払って進み続けるテイラー・スイフトの力強い歌声は爽快です。さまざまなチャリティー事業にも関わっている彼女は、かつてドナルド・トランプに代表されるヘイト&フェイク政治に対して明確に "NO" を突き付けたメッセージを発したことで注目を浴びました。一方、シンディ・ローパーは、2011年の東日本大震災の直後、多くの海外アーティストが来日を見合わせる中、あえて来日公演を敢行し、その収益を被災地への支援に充てました。彼女の代表曲のひとつである "True Colors" は、現在、LGBTの権利擁護のテーマソングにもなっているようです。社会問題に対する二人の姿勢には、どこか共通するところがあると感じます。

"Shake It Off" が収録されているテイラー・スイフトのアルバム "1989" のアルバムタイトルは、彼女が生まれた1989年を意味し、80年代の音楽シーンを彩ったアーティストたちへのオマージュ(献辞)にもなっているそうです。その中には、エネルギッシュなガールズ・ソングの大先輩であるシンディへの献辞も含まれているのかもしれませんね。



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