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Step it in the Blue Sky

東棟と西棟の隙間に見える淡い空色と
風になびく長い髪が重なる。

目なんか見なくても君の背中に向かって話してる方が何故か心地がよかった。

こちらを振り返ることはしないけど
二人の会話が滞ることもなくて。

「もう次始まるけど。」
「レポートは?」

都合の悪い質問をしたときだけは返答の代わりに鼻唄が聞こえた。

「ste. it in ... b... sky」

決まって同じ曲の同じフレーズ。
鼻唄というより独り言みたいにぽつり、ぽつり

途切れ途切れに聞こえる音を繋げて考えれば
step it in the blue sky と歌っているのだろうか。

次に君と会ったら何の歌?って聞こうと思うのに
会ったら会ったでとりとめもない話をして過ごしてしまったのだった。

未だに曲の名前も正確な音程も分からないけど
君と同じように狭い空に身を乗り出して

小さな背中を思い出す度に短いフレーズを口ずさむのだ。

『Step it in the Blue Sky』
写真 midori
文 沫白(あじろ)

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