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中国のASEAN戦略

2016年1月16日のAIIB(Asian Infrastructure Investment Bank、アジアインフラ投資銀行)開業から1年が経った。

アメリカと日本が参加を見送った一方、その他の主要国を含め57カ国を創立メンバーとして参加した。一連のニュースを追っていれば、個々の記事に解説等もあり、大枠の流れは掴めるであろうが、何が本質的な狙いなのかは見えにくい。

筆者が現在、タイ駐在員という立場であることもあり自戒の念を込めて述べるのだが、日系企業の進出著しいタイにいると、ASEANにおける中国資本進出の動きに対する感度が鈍る。

そんな中、2016年8月23日に、バンコクで開催された末廣昭教授の講演を拝聴する機会に恵まれ、中国の動きに対する理解を深めることが出来た。本稿では、当御講演の内容をベースに、中国から物理的に近い「陸のASEAN」におけるインフラ開発を主眼におきつつも、拡大し続けるアジアでの中国のプレゼンスや、中国の対アジア外交戦略について考察したい。

もちろん、中国自体はアジアだけを対象に外交戦略を組み立てている訳でもなかろうが、中国が2013年9月に発表した「一帯一路(One belt, one road)」構想から2015年12月のAIIB発足に至る一連の動きについて、背景を含めて理解することは、日本が取るべき今後の対アジア関係を考える上で有意であろう。

中国の対アジア外交戦略の背景説明まで含めると、内容的に多岐に渡る為、全6回の連載としたい。各回の内容は以下を予定している(2017/1/24に順番および構成を若干変更した)。

(1)アジアの定義
(2)中国の対ASEAN外交戦略の転換
(3)ASEAN各国からみた日中のプレゼンスの差異と変化
(4)一帯一路構想とAIIBの狙い
(5)陸のASEANに向け南進する中国
(6)世界から見た中国の評価と日本が取り得る選択肢


正直、タイ経済研究の第一人者であり大先輩である末廣昭教授の御講義を拝聴して、興奮のあまり何か分かった気になってしまっているだけだとは思っている。しかしながら、講演後、約4ヶ月が経つが、いまだに興奮を引きづっているのも事実である。

当然、講演内容は私にとって一度に消化できるようなものではなかった。あまりにも前提知識が足りず、未消化なものが沢山残ってしまった。今回、手前味噌な連載を通じて、自らを叱咤しながら関連情報を調べ直し、改めて理解を深める機会としたい。

書き切る目途もないまま封切りするが、最後までお付き合い頂ければ幸いである。


(1)アジアの定義へ