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天ヶ瀬ダム再開発、宇治川1500トン放流の危険性初めてのトンネル放流での道路法面崩落・河岸洗掘事故から考える

2023年5月9日朝、天ヶ瀬ダム直下で道路の法面崩落、白紅橋橋台付近の河岸洗掘、志津川区の祠(ほこら)の着水被害がおきました。天ヶ瀬ダム再開発によって建設した日本最大級のトンネル式放流設備から初めて本格的に放流して起きた事故です。
国交省が6月7日設置した「天ヶ瀬ダム放流調査委員会」の資料によると、事故発生時は、ダム本体のゲートは使用せず、天ヶ瀬発電所から毎秒約180トン、トンネル式放流施設から毎秒約620トンを14時間以上していました。トンネル吐け口から宇治川の流れに対してほぼ直角方向に放流した激流が対岸に激しく当たって起きた事故です。
天ヶ瀬ダムは最大毎秒1500トンの放流をするために再開発されたのですから、その半分程度の流量で事故が起きたことになります。1500トンの放流に耐えることができないことがはっきりしたのではないでしょうか。
なぜ、事故が起きたのか? 初歩的な設計ミスであった可能性は否めません。
安全にするためには、トンネル放水路を封鎖するか、合流部周辺の河道をコンクリートで厚く3面張りにし、保護するかのいずれかでしょう。後者は莫大な費用が必要な上、景勝地である周辺の景観を台無しにするものであり無理です。
結局、トンネル放水施設が危険で不要であったということです。

660億円の巨費。不要な水源開発などに京都府が128億円の負担

この再開発の目的は、第1に宇治川の流量を毎秒1500トンに増やすことで、第2は府営水道の取水量を17万人分増大させることなど利水です。
再開発の総事業費は当初の430億円から660億円に1.5倍に膨張しました。660億円のうち、京都府負担は128億円で、そのうち水道の利水分58億円、治水分70億円です。京都府は、水余りを理由に市町の浄水場を廃止することや水道事業を民間に委ねることなどを内容とする府営水道ビジョンを策定しました。そもそも無駄で危険な事業なのです。

宇治川1500トン放流と上流の開発の問題点

淀川水系河川整備計画では、天ヶ瀬ダム再開発、大戸川ダム建設、鹿跳渓谷開削、宇治川の河道掘削などを行い宇治川に1500トン放流にしようとしています。
大戸川ダムは穴あきダムで環境破壊が懸念される上、破綻した時の被害の大きさが問題になっています。
鹿跳渓谷は最大毎秒700トンしか流下しない狭隘部であることから下流の安全に保つ役割を持っています。ここを開削して断面を大きくすることは危険です。
また、宇治川に毎秒1500トンを流すことは危険です。2013年台風18号洪水の時には、天ヶ瀬ダムが満水になり、クレストゲート(※1)から最大毎秒1160トンの緊急放流を行いました。そのため宇治川が計画高水位を超え、堤防漏水も各所で発生し決壊の危機に直面したため、6万人に避難指示を出す危険な事態になりました。これは、天ヶ瀬ダムの洪水調節計画の毎秒840トンを上回る放流をしたこと、木津川、桂川、宇治川の三川合流点からのバックウォーター、河道内の大木繁茂による祖度(※2)が増大したことによるものでした。
今日の宇治川は、澪(みお)筋で堤防下部よりも深掘れがすすんでおり堤防の下を水が流れて壊す恐れがあり危険です。また、勾配のゆるい区間で堆積が進み、さらに河道内に大木が繁茂しています。そもそも宇治川の堤防は砂で造られたもので、旧河道を横断して人工的に築堤したものです。
こうしたことから、とても1500トン放流に耐える事ができません。堤防の全てが壊れないように粘り強い堤防にするなど、堤防強化こそ必要です。
 ダムや渓谷の開削など巨大開発をして1500トンも宇治川に放流をする計画は中止すべきです。

※1 異常洪水時にダム天端からの越流を防ぐための非常用ゲート
※2 河道を流れる際の抵抗量を示した数値

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