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京都が嫌いであるということ

「京都ぎらい」読んでみました。

代々「洛中」に住んでいた人々に対する、「洛外」で育った筆者の“心のもつれ”を書き綴った内容です。
率直な感想からいうと、かなりおもしろかったです。
と、同時に自分はもう京都に住んで30年ほど経つのに、京都のことを全然知らなかったなと痛感しました。

で、自分なりにも自分で京都を再び調べてみました。

先ほど「京都に住んで」と言いましたが、いわゆる本の内容、つまり「洛中」に住んでいる人々からすると、京都府宇治市~京都市左京区高野~京都市左京区岩倉~京都市伏見区~京都府城陽市と住居を移してきた僕も、京都に住んでいるわけではないということになります。
どういうことかというと、西暦794年にさかのぼります。

「鳴くよウグイス平安京」でおなじみの「平安京」に、長岡京を経た奈良平城京から都が移された(遷都)されたのが794年。
その頃、中国の都であった「長安」を見本に、京都にも同じような街並みが建設されました。

平安京(へいあんきょう、たいらのみやこ)または平安城(へいあんじょう)は、かつて日本の首都であった都市。桓武天皇によって長岡京からの遷都地に選ばれ、唐の首都長安城に倣って計画都市として山城国に建設された。現在の京都府京都市・京都市街であり、当時の街路をほぼそのままに主要都市として現存している。
                     Wikipediaより引用

都が出来た時にその中心地を軸として定められた範囲を「洛中」と呼ばれたとされています。
徐々に範囲は変化もしてきたようですが。

古くは平安京域内を指して「京中」と呼んだが、鎌倉初期から京中に代わって「洛中」の語が頻出するようになる。この「洛」は「洛陽」の一字を採ったもので[2]、後の京都の基礎となった左京を中国の都「洛陽」に擬え、対して、右京(朱雀大路から西側の部分)を同じく「長安」と呼んだとされ、後に右京が廃れたことから、市内(実質的に左京)を洛中(らくちゅう)、外側を辺土、後に洛外(らくがい)と呼ぶようになったされる。
                     Wikipediaより引用

平安時代から鎌倉時代、信長や秀吉の時代を超えて、明治2年に東京に首都が遷都されるまで、京都は1200年もの間、都として扱われてきました。
そう考えると、本当に最近まで京都は日本の中心を担ってきたのだなと感慨深くはなります。
実際の機能として成立していたのかはわかりません。でも、そこに住む人達にとっては尊厳の象徴でもある(あった)のかなとも推察されます。

で、本の内容に戻ると、同じ京都の市内でも「洛中」と言われる範囲に住んできた人々とそうではない「洛外」で育った人とは異なる部分があると。
洛中の人々は、それ以外の人に対する「選民思想」が根強く残っておりますよ、という内容でした。
要は、同じ京都府や京都市でも洛外のヒトは「よそもの」という解釈なのです。


京都だけではなく、世の中にはいわゆる差別がまだまだ横行しております。
それを思い浮かべると、少し触れにくいなと感じる気もしますが、この本は筆者の体験を基に、実におもしろおかしく述べられています。

あまり内容について触れるとネタバレになるのでこの辺りにしておきますが、滋賀で生まれて小学校で京都に引っ越してきた自分にとっては、なるほど、確かに京都にまつわる不思議があったなと思う事もあります。

京都府宇治市で育った僕は21歳くらいまでをそこで過ごしてきました。
中学生にもなると、同年代の女の子を意識したり、おしゃれにも敏感になります。
服装や髪形にも少しづつこだわりを抱くようになり、その思いは宇治市というせまい範囲だけではおさまりがつかなくなります。

友人と買い物に出かけるのですが、それなりのお店はそれなりの街並みに出向かなければありません。若者の心を揺さぶるようなショップは今もそうですが、京都市の三条四条に集中しています。
そんな時の会話のシーン、


僕:「よう!明日どこいく?」
友人:「京都行こうや!」
僕:「そうしよ~」


ちょっと変ですよね。
でも、子どもの頃、少なくともこの本を読むくらいまでは、僕は「そういうものだ」と無意識に考えていました。
同じ京都府に住んでいるのに、四条を「京都」と呼ぶ。
埼玉人が池袋に行くのに「東京行く」とは言うでしょうが、八王子の人が渋谷に行くのに「東京行こう」とは言わないと思います。
(もしかして、言いますか?)

このように京都の歴史を知らない人々にとっても、いつのまにかこんな無意識が根付いていることになります。

僕自身はこのような考え方で不快な思いをしたことはありません。
でも、よく言う京都の皮肉や遠回し表現に気づいてこなかっただけなのかもしれませんが(笑)

何気ない日々の体験や歴史、芸舞妓から京坊主の話、
しいては、怨霊にまつわることからの考察など、示唆に富んだ内容がもりだくさんです。

まだまだ寒い日が続く今日この頃ですが、暖かいお茶でも飲みながら、
ゆっくり『京都ぎらい』に浸ってみてはどうでしょうか。

いつも読んでくださって感謝します。 医療業界のアグリゲーターになれるように頑張ります。