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おしん短歌 第1回  ~『未来』2020年2月号掲載






おしん短歌第1回   工藤吉生


オレごときの生活なんぞよりずっとテレビ「おしん」に〈人間〉がある


名作のドラマ「おしん」で初回から妻が夫にビンタされてた


母さんも所詮は女だからなと汚れた指を拭きながら言う


火を囲み飯をかきこむ少女らの一人称が全員「おれ」だ


貧しさよみんなが食っていくために遠慮しあっている三世代


白米をおかずも無しに食べるとき贅沢ゆえの叱責がとぶ


川に行き洗濯をする 「桃太郎」みたいなことをしていた明治


カタカナで母への手紙書いているおしんは月の光の下で


一年に一度だけ飲む酒を飲みモチをつくのを幸せと呼ぶ


麦飯に感激しても満足はしない おしんが欲しいものは「知」


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