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工藤吉生の短歌まとめ・第二十八期【2018年4-6月】20首

▼この時期の主な出来事
中城ふみ子賞に初めて応募。
ツイッターアカウント「短歌に季語はいらないよ委員会」@kigo_nakutemoii 作成
角川「短歌」6月号の時評で作品を紹介される




〈1〉
赤だけどわりと悠々渡ってるおとこ見下ろすバスの座席に

〈2〉
雨に濡れ乾いたままの窓ガラスを通して見える木々のざわめき

〈3〉
目の覚めるほどに真っ赤なトラックとあくびしている間にすれちがう

〈4〉
ギター弾く人のうしろを通るとき振り向かないでくれと願った

〈5〉
ジャヌカンの「鳥の歌」には「笑わせてやりたい放題」という歌詞あり

〈6〉
ふざけてる替え歌みたい制服の上に乗っかるオレの顔面

〈7〉
声のでる自販機いなくなってから記憶が鳴らすイラッシャイマセ

〈8〉
つかのまの光は自分に影がある事実を思い出させてくれた

〈9〉
豪快にはみだしているベーコンをかじって並のはみだしとする

〈10〉
いいですよ隣の車輌にもうひとりオレがいたってかまいませんよ

〈11〉
遠慮したレジの袋でできているみどりの星よあおい空気よ

〈12〉
同一のポスター四枚ならぶうち奥から三番目を見てた人

〈13〉
バス停に女性が持っている本のタイトル見えてグーグルに打つ

〈14〉
不審者の情報はオレと一致せずまだ大丈夫春はこれから

〈15〉
悪臭がただよってくる「文芸」の棚で立ち読みする自分から

〈16〉
湧いて出た唾ならかまわないのだがよそものは断固おことわりだね

〈17〉
春の日はクリーム色に暮れかかり鼻の右側それとなく掻く

〈18〉
この人はこんな感じで怒るのか ヒトは怒ると大体こわい

〈19〉
仰向けにさせてみたってリラックスできないようだ我が家の猫は

〈20〉
ゆうぐれの橋を渡って川を見る散歩コースはオレのぜいたく


〈1-17〉結社誌「未来」
〈18〉うたつかい
〈19〉タウン誌「仙台っこ」仙台っこ歌壇
〈20〉ことばの祭典(仙台文学館の合同吟行会)

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