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Priv Techに参画します

この度、弁護士法人淀屋橋・山上合同からの出向という形態で、プライバシーテックを主要事業とするPriv Tech株式会社に参画しました(通常の弁護士業務も行っています)。
かなり長文になってしまいますが、参画に当たって、私が法律事務所の就活を始めてから今までの経過について残しておこうと思い、noteに記載させていただくことにしました。
noteに記事を書くのは初めてで少し緊張しています。


0.記事の目的

  • 法律事務所への入所(2020年1月)からPriv Techに参画するまでの経過を整理しておきたい

  • 法律事務所からの出向や企業就職を検討しておられる、又は、プライバシー領域にご興味がある弁護士の先生方(含、司法試験合格を目指されている学生、司法修習生)の参考になればよいなと思い(上からっぽい言い方になっていますが、私自身成果を上げていません)

1.自己紹介

2019年 弁護士登録(大阪弁護士会)
2020年 弁護士法人淀屋橋・山上合同(大阪事務所)入所
2023年 第一東京弁護士会に登録替え

2.法律事務所の入所・勤務

淀合に入るまで

2020年1月、弁護士法人淀屋橋・山上合同(淀合といわれているので以下「淀合」と記載します。)に入所しました。まずは入所の経緯について記載します。

私の場合は、予備試験と司法試験の受験前後で、東京や大阪の事務所のインターンシップや面接に10個ほど回りました。

なぜ淀合に入所したかというと、、
東京の大規模事務所も魅力的でしたが、よくいわれる?「東京の大規模事務所はいきなり専門的な部署に入れられて、特定の分野しかできない」という言葉のインパクトが大きく(本当にそうなのかは分かりませんが)、規模の大きい企業案件から個人を依頼者とする案件まで幅広く取り扱っていそうな中規模事務所に、また、地縁のある大阪の事務所に就職しようと決めました。SUITSに出てくるような大きな事件をやっている弁護士はカッコいいけれど、知人の法律相談に乗ってあげられない方向にいきなり舵を切るのは抵抗があるというよくある動機だと思います。
淀合に決めたのは、当時のアソシエイトの弁護士が明確なビジョンを持っていて、また、パートナーに臆せず物凄く主体的に仕事をしているように見えたため(あとは運よく内定をもらえたため)です。

入所~2年ほど

入所して2か月ほどでいきなりコロナがまん延して外食が憚れる状態になったこともあり、殆どの時間を事務所で過ごしました。テレワークも認められているけれど、自宅で仕事をしても書籍を調べることもできない(コンメンタール等はサブスク型の電子書籍になかなか掲載されていない)し、自宅にいると先輩や事務員に質問したくてもしにくい。あとは先輩の近くにいる方が仕事を振ってもらえそうな気がしたので、結局テレワークは断念して事務所で仕事をしていました。

案件の幅は広く、M&Aや不正調査など規模の大きい企業案件も経験しましたが、私の場合、同規模の事務所の同世代の弁護士、同じ事務所の同期の弁護士に比べて、訴訟の割合がかなり高かったと思います。
事務所の若手は、所内の「弁護士掲示板」という掲示板に興味のある分野の種類を入力することで、パートナーに対して、やりたい案件をいわばアピールすることができます。
ただ、私は、掲示板に訴訟を沢山やりたいと書いたわけではなく、偶然の巡り合わせで訴訟が集まってきたと感じています。数もそうですが、案件の種類や当事者の属性も区々だったので苦労しました。また、訴訟となると依頼者の方の心理的な負担や期待も大きく、人生・経営の重大な局面に携わるので、当然ですが効率を重視して仕事をしようと思える筈もなく、結果、いつも事務所にいる奴になっていたと思います。
案件をやっていく中で感じたことですが、新聞を賑わすようなカッコいい案件もいいけれど、依頼者の方と直接コミュニケートできて、自分を頼ってくれるような案件にやりがいを感じ、性分に合っていると思うようになってきました。

勤務時間については、私の場合は、平日はできるだけ社会が動き出す前(7:30~8:00。土日は10:00~11:00)に出勤する代わり、常識的な時間に帰宅する(徹夜はしない・帰ってからできるだけ仕事をしない)ことに決めて仕事をしていました。ちゃんと睡眠をとらないと次の日が台無しになってしまうので[1]、忙しくても睡眠だけはとるように心掛けていました。

同年代で既に営業に力を入れている弁護士も多くいますが、私の場合、体力不足と社交性のなさが原因なのか、そこまで手が回りませんでした…。

働きやすさ

やりたい業務ができるかと同じくらい重要なのが、職場での人間関係だと思います。就活していたときは余り意識していませんでしたが、入所してから実感しました。
淀合は、弁護士同士の距離感がちょうどよく、べったりしすぎず、他方、困ったときは同期も先輩も酒を交わして相談に乗ってくれる人情の厚い組織だと解しています。
Lawyer's INFOに法律事務所の口コミが色々掲載されているものの、結局のところ、職場環境の良し悪しは、入ってみなければわからないところがあります。

出向の検討

淀合の環境はとてもよく、とりわけ人間関係で苦労することはありませんでしたが、私の場合、弁護士になったのが25歳と比較的若く、入所当時から、企業でも働きたいという漠然な思いがありました。
淀合は、入所後3年ほどでアソシエイトが全ての部(現在は5か部制)を1回転しますが、周り終わる頃に、自分のキャリアのことを少しずつ考え出すようになりました。
ブティック系の事務所で働いたわけじゃないし、特定の分野だけ扱いたいわけでもない中で就活生のように「専門分野、専門分野」と一辺倒に言うのはよいことではない&先を急ぐ必要はない思いもありながら、もともと勉強が好きだったのもありますが、腰を据えて学問的に理屈を突き詰めて考えたいと思うようになりました。
文系出身(法学部)で、大学受験もせずにエスカレーターで進学してきたので技術的な知識は殆どありませんが、入所前からAIやデータなど新しいことに興味があったこと、サマクラや修習中に、AI・データ関係とりわけ個人情報の分野は、ニーズがあるけれども、特に関西圏で、企業のニーズに応えられる弁護士の数は多くないという話をよく聞いていたので、自然とこの分野での経験を積みたいと思うようになりました。

探し方

多くの法律事務所は、事務所と企業(多くの場合顧問先企業)との間に特定の関係があり、関係維持の意味も込めて企業に送り出されることがありますが、淀合の場合、そういったことが殆どありません。
あなたの人生なのだから、行きたい人は、行きたいところを探してね、というイメージです。
私の場合、多くの人の話を聞いたり(その一人が、Priv Tech代表の中道です)、ネットで情報を集めたりして、事務所に居続けようか、事務所を出ようか考えていました。
事務所が行き先を決めてくれないというと少し寂しい気もしますが、弁護士有資格者を募集している企業は幾らでもあるし、需要過多に感じるので、自分で探した方がよいように思います。
私の場合は、最終的に3つくらいに絞って、そのうちの1つ(Priv Techではない、事業会社のプライバシー部門)に決めました。出向という形をとらず、数年働いてみて、その後、キャリアをどうするか決めようという気持ちで入りました。
所内の弁護士からは、弁護士の素養を身に着けるべき時期に何も事務所を出なくてはいいのではなど、親身にアドバイスを頂きましたが、行き遅れる前に早く行きたいという気持ちが勝りました。

しかし、
この事業会社については、勤務3か月でPriv Techに移ることを決めました。転職しようと思った理由は様々あり、書けることと書けないことがあるのですが、分量が膨大になるので、また次の機会に書かせていただくことにします。

3.Priv Techへの入社を決めた理由

Priv Techって何をやっている会社か?

Priv Techは、’’DATA WITH TRUST’’、「データをユーザーの手に取り戻し、情報のフェアユースを実現する」をミッションとして掲げた、いわゆるプライバシーテックを取り扱う企業です。

色々なことを行っていますが、主要事業として、

  • 日本の個人情報保護法、電気通信事業法(外部送信規律)、GDPRやCCPA(CPRA)などパーソナルデータ関連の法律に準拠した同意管理プラットフォーム(Trust 360)の提供

  • プライバシー対策に関する総合的なソリューションを提供するコンサルティングサービス

があります。
後者は比較的想像がしやすいと思います。法律を守っているだけではユーザの信頼を確保できないというのが一つ。もう一つは、そもそも法律自体が厳しくなっていて、対応を検討する企業が増えています。
前者はウェブサイトを訪れたときにcookieなどの同意バナーが出てくることがありますが、あれを提供しています。
日本のみならず各国(各州)で様々な個人情報保護法令が制定され改正されており、一企業において全てキャッチアップするのはカオスというほかありませんが、Priv Techでは、必要に応じて海外ベンダ・法律事務所とも連携しながら対応しています。

なぜPriv Techに決めたか?

プライバシー関連法に興味があったからというのが大きいですが、とりわけプライバシーテック領域の市場規模が急速に拡大していて、業界に興味があったからです。

野村総研が行ったアンケート調査によれば、2022年度時点で550億円だった市場規模は、2028年には、4倍以上の2542億円になると推計されています。[2]
別に、将来プライバシーテックのツールを製作・販売するために力を付けたいと思っているわけではなく、例えば機能実装の際に法律(と少しの技術)の知識が必要になるので、その中で自分の力を発揮したいという思いで、この領域に携わりたいと思いました。

その中でもなぜPriv Tech?

プライバシーテックと一口にいっても、その機能は様々で、同意管理のほかに、データマッピング、プライバシー影響評価、プライバシー保護技術など様々あります。
Priv Techはどちらかというとサイエンス寄りではなく、マーケティング寄りというか、データ利活用とプライバシー保護のトレードオフの関係を是正するという点に重きを置いていると解しています。
キャリアを考える上で、上記事業会社を辞める際にも再考したところ、やはり最終的には、離婚とか相続とか、語弊を恐れずにいえば泥臭い、人間味のあるいわゆる通常の弁護士業務も行いたい、弁護士である以上訴訟をはじめとした紛争案件をやりたいという思いが強いことから、約2年という出向の形態で参画したいと考えました。また、現在でも数件訴訟を担当しているので、両方こなすのは大変ですが、複(「副」ではなく敢えて「複」)業の形で就業したいと考えていました。
あとはインスピレーションというか、中道のマインドに共感して、Priv Techへの就職を決めたところが大きいです。
中道からは、弁護士の技術的な理解が追い付いていないことから弁護士こそこの分野に取り組んでもらいたいという思いや、会社の目標とメンバーの目標を一致させる経営をしたいとか、(文面だけ見るとちょっと怪しいかもですがそんなことはない)大事な時期にあるベンチャーの代表がそこまで考えていることに少し心を打たれました。

4.さいごに

法律事務所から企業への転職・出向等を検討されている方には、弁護士という肩書があるだけで話してくれる方も多いので、まず情報収集したら、次は、色々な方に会ってお話を聞くことをお勧めしたいです。
私も、これから業界の盛り上げに少しでも貢献できるように頑張りたいと思います。
Priv Techは、上記のとおり、プライバシーテック企業の中でもマーケティング寄りの事業を行っており、中道の薦めもあり、差し当たり以下の書籍でインプットしているところです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


[1] ショートスリーパーになりたいと考えたこともありますが、結局、「スタンフォード式 最高の睡眠」を読んで、決まった時間寝ないと元気が出ないとの結論に至りました。
[2] 野村総合研究所「プライバシーガマナンスの教科書」141頁(中央経済社、2022年)


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