国への要求第0版 -若手研究者の生存と研究、両立させてもらえますか?2

前エントリーでは、博士課程研究者が応募できる奨学金の中で一番良いとされている「学振DC」について、ざっくり書きました。お分かりの通り、どうみても改善の余地だらけです。伸びしろしかない。応援すればする分だけ立ち直ります。

で、初手として国側に要求したい、学振DCの改善方法を簡潔に提案します。

要約
1.最低賃金上昇にともなう支給額の引き上げ
2.研究奨励金への課税停止
3.社会保険加入、その他社会保障の見直し
引上げや社保加入のために必要な増額分の予算を付けてほしい。

1.最低賃金上昇にともなう支給額の引上げ

特別研究員制度が創設されたのは、昭和60年(1985年)度、その制度に基づき、特別研究員DC1の採用が開始されたのが平成3年(1991年)度です。

私の知る限りで、学振の奨励金支給額が値上げがされたという情報を聞いたことがないので、「ひょっとしたら創設時の昭和60年度から変わっていないのでは」と思い、文科省に問い合わせてみた。すぐには直近10年分しか出てこないとのことだったが、2009年時点でも同額の月20万円、それ以前も大きな変化はないと思う、とのことだった。

そこで最低賃金を調べてみたところ、一番高い東京都で、

1985年    477円
1991年    575円
2019年現在  985円

だった。倍増してるじゃないか・・・。

だから、もし特別研究員制度創設時(1985年)での支給額の設定が20万円だった場合、最低賃金が当時から985÷477=2.065倍になっているので、
  20万×2.065 = 41万3000円
でないとおかしいはずです。

もしDC1採用開始時(1991年)での支給額が20万円だった場合、現在は最低賃金が985÷575=1.713倍になっているので、
  20万×1.713 = 34万2600円
が現在の支給額になっていないとおかしいです。

物価も賃金も上昇しているのに学振DCやPDだけ30年も給料変えてなかった、なんてまさかそんなことはないですよね?
DC創設時の研究奨励金の支給額を調べ、最低賃金上昇分だけの増額をして下さい。特別研究員の採択枠を減らさずに。

※ こんな当たり前のことをわざわざ言わなければいけないことを残念に思いますが、ただでさえ過疎な日本の研究者を減らそうなどと論外なことを考える人もいるかもしれない、いやそういう人々によって戦略的自滅の舵がとられてきたのだろうと思うので、恐ろしいので釘をさしました。
※ ちなみに、予算配分の話ですが、もし「門外漢には分からない」ということであれば、専門家に任せたほうがいいと思う。参考にリンク張ります。

参考:社領エミ @emicha4649 さんのツイートより【理系の人絶対読んで】研究費を16億円も使っている研究施設に「何に使ってるの〜!?」と聞きに行った結果、思わず日本の根深い問題点に触れました💴日本からノーベル賞が出ること自体が奇跡に思えてきた……!研究職の方って、この境遇の中頑張ってたのかよ!😭https://fuminners.jp/journal/entertainment/15638/


2.研究奨励金を非課税に

「雇用じゃないから社保は入れないけど、所得税住民税はかかる」
という、随分と怪しいロジックについて異議申し立てます。
研究奨励金月20万という額ですが、一見十分に見えて(?)、生活保護の最低生活費の基準を大幅に下回っています。過去のエントリーの通り、消費に充てられる額が月6.6万円程度。生活保護の最低生活費(生活できないと名高い)が8.7万円と定められている。TAのバイトを最大限入れられたとしても、合計で高々月9万円です。

このように、他からの収入も禁じているのに、この「研究奨励金」から所得税住民税で年10万円強の税金も払わせています。博士課程以上の若手研究者のクレジットカードの借金が増えて分割払いがいつまでも消えないのは当たり前です。(というか何故研究の奨励金で税金払ってるんだ。それは用途に反しないのだろうか。)

日本学術振興会のHPの特別研究員についての「よくある質問」に、関連する質問が載っています。正当性の根拠の回答がこれです。

設問27 研究奨励金が給与所得として課税対象となっている経緯(根拠)はどのようなものか。
特別研究員制度の前制度である奨励研究員制度(昭和34 年10 月創設)発足時の、文部省大学学術局長から国税庁長官宛の文書(昭和34 年12 月21 日付け文大術第760 号)に対する国税庁からの回答に拠っています。(特別研究員制度発足後も取扱いに変更がない(DC含む)ことを当時の文部省大学学術局学術課及び国税庁所得税課との協議においても確認されています。)
なお、特別研究員奨励費(科研費)については、所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第九条第一項第十三号ニの規定に基づき、所得税については課さない(非課税所得)とされています。
(P.29「1.研究奨励金」参照)

昭和34年ていつ?
・・・1959年らしい。60年前ですね。どうりで時代錯誤なんじゃないでしょうか。

即座に見直しが行われることを求めます。また趣旨や額面からして、所得税住民税の非課税が適当だと主張します。


3.社会保険加入はじめ、社会保障見直し

現在、学振DC, PD採択者を含むほとんどの若手研究者は、研究者を続けている限り、30代後半、40歳くらいまで社会保険に入れません。50代でも入れていない人もたくさんいます。みな国民健康保険・国民年金に自分で加入しており、基本的な社会保障を受けられません。
他主要国研究者がエリート公務員として大切に扱われ重宝されている一方、同じような仕事をしている日本の研究者は、ポストがないのに失業保険もなく、子どもを持つことも許されない(産休育休手当てなし)し、持っても保育園などが利用できません(日中ずっと働く必要があっても、雇用形態が非正規のせいで保育園利用の必要性が低く見積もられ落ちやすい)。

失業保険の必要性

研究者という公的資産を生成する高い専門性を持つ人達が、こんな超がつく薄給かつ健康保険全額自己負担なのもおかしいのですが、その上、この人達は国策であった「一万人ポスドク計画」等の結果、ポスト供給が少なすぎるという構造的致命傷の上で存在させられることになったわけです。そのおかげで、研究職というのは、失業保険が最も必要な職種の一つになってしまいました。国家が責任を負うべきだと主張するには十分すぎる理由でしょう。

産休育休手当て不在の解消・それによる女性差別の解消

現制度では、20代後半から30代前半の研究者は、社会一般では出産適齢期であるにもかかわらず産休育休手当てが与えられず「中断(=無給)」という扱いです。研究者になる場合、社会保険に入れるような比較的まともな条件で就職できたとしても、それは40代以降になる人が本当に多いです。

現制度は、若手研究者から「子どもを作る」という大きな自己決定権を奪っています。ライフを犠牲にせずに研究者になる事はほぼ不可能であり、子どもを持ちたいからと研究職を諦める人は早かれ遅かれ大量にいます。研究者になろうと思ったら、そもそもライフ(特に家族をもつという狭義のライフ)が許されていない。近年のライフワークバランス重視の高まりとはかけ離れています

また、自分の子どもを持つ際に女性だけが避けられない出産・産休という本質的なハンデを考慮しておらず、男女不平等が生じています実質、子を持つ(出産)or研究 という選択肢がつきつけられているのは女性のみであり、男女同権の観点からして一発アウトです。
出産 or 研究とは極端だと思う人がいるかもしれないけど全くそんなことありません。経済的な理由で産後5週間で復帰した女性研究者、そのような方がたくさんいます。無給でそんな長く生きていけるわけがないので、当たり前です。でも本当に危険な事です。男性だって育休をとりたいと思いますが、そのレベルの話ではありません。研究職を続けようと思ったら、出産により内蔵に大きなダメージを負い、修復もままならないまま職場復帰せざるを得ず、身体や命が危険に晒されているのは女性だけです。男女間で不利益の度合いが著しく違います。これを女性研究者個人が強いられている直接的な原因は、産休育休手当てが出ないということです。研究者の場合、雇用不足のせいで、社会保険に入れて産休育休手当てが出るまで待てば、もう適齢期などとっくに終わっているのです。

以上の理由から、学振特別研究員の社会保険加入を要求します。
また、それだけでカバーできない、研究者の保育園利用時における不利の解消等の保障の見直しも要求します。

※ [追記]
初手として学振特別研究員の処遇改善に触れましたが、これらをすべての博士課程以上の研究者に保障する制度がすぐにでも整うように、早急に取り掛かってほしいです。学振特別研究員は全体のわずか2割です。他主要国ではこんなこと有り得ません。博士課程以上の若手研究者全員がこれらを当然の権利として享受しています。直ちに、全若手研究者の包括する社会保障の枠組みを検討し予算をつける取り組みが開始されることを、強く望みます。

要約
<学振制度の見直しとして、国に要求したいこと>
1.最低賃金上昇にともなう支給額の引き上げ
2.研究奨励金への課税停止
3.社会保険加入、その他社会保障の見直し

引上げや社保加入のために必要な増額分の予算を付けて下さい。

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mkepa

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