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ママちゃんと俺の5年愛戦争(仮) 6

介護生活悲喜こもごも。

無事(?)デイケアも決まり、本格的に介護生活がスタートした。
この頃の母親の症状は、躁鬱が日々コロコロと繰り返し起こっていて(でも元からの性格が穏やかだからなのか声を荒げたり暴れたりはしなかった)後今の事がちょっと覚えにくい(すぐ忘れる)感じ。足腰はまだ仕事を辞めてすぐの頃玄関先で派手に転んで以来右膝が痛いみたいで長く歩くと症状が出る、腰は年相応。要は
病気と一見は感じない元気なおばあちゃんといった感じだった。
まだデイケアが決まってない頃は、お風呂などは一回転んだ事があったので見守りが必要で身体はなんとか洗えても背中の届かない所や髪などは洗えなくなっていたので俺がついて洗っていた。
散歩も1人ではもう無理だったので一緒について歩いた。
しかしちょっと歩くと「膝が痛い!帰ろう」とすぐヘソを曲げてしまうし、目的なく歩く事を凄く嫌った。一度ちょっと遠くへ連れ出そうと、家から10分位離れたスーパーに買い物に行こうと誘った。
最初は凄く渋ったが「美味しいお寿司買ってあげる」と交渉し連れ出した。
案の定すぐ「足が痛い」と言い出したがそこは想定内。
休みポイントをあらかじめ設定して置いたので休み休みなんとかたどり着いたが、帰り「もう一歩も歩けないから!」と怒り出し「見捨てて帰ればいい!」とむくれた。
あと200mも歩けば家に帰り着くっていうのに。
沢山の荷物を背中のリュックに入っているし、片手にも買い物袋。でも後少しだから決断した。
「おんぶするか」
リュックを手に持つ。
買い物袋ももう一方の手に持つ。
しゃがんで母親に「乗って」と背をむけた。
歩けないはずの母親はしっかり歩いて俺の背中に。
「ちゃんとつかまった?」
「うん、落とさないでよ」
足にぐっと力を入れる。
「あっ!」
思ったより母親が重い。
それでも渾身の力を込め立ち上がる。
ガンダム大地に立つ!
アムロ行きまー~アース!
しっかりと両足を大地からまっすぐはやした!
「やった!」
「こいつ動くぞ!」
一歩踏み出した途端、膝から崩れ落ちた。
母親ごと地面に転がる。
幸いゆっくり崩れ落ちる様に転んだ為、母親も俺も怪我はなかった。
ただアスファルトに二人とも濃厚キッスをかました。
「痛ーい!もう!」
「大丈夫?ごめん無理だった。母さん重すぎ!ダイエット決定!」
「失礼しちゃうわね!」
二人で大笑い。
その後頑張って(荷物はその場に置いてきぼりにして。因みにちゃんと隠してね)母親をおんぶしてなんとか家に着いた。
10分圏内が1時間になった。
今となってはいい思い出だ。
この事件がきっかけでシルバーカー(しかも椅子にもなるやつ)を買う事にしたんだが、飽きっぽい母親はすぐ飽きて「こんな婆さんが使う様なもん、私が使うわけないだろ?カッコ悪い。返してきてよ!絶対使わないよ」
結構高かったんだよ、お母さま。
買ったときはあんなに喜んで家ん中でゴロゴロ押して歩いてたのに。

と、まぁ母親は症状が進むにつれ子供返りをして完全に5歳児になってしまった。
だから子供のいない未婚の息子に大きなおばあちゃん母親子供が誕生してしまったわけです。

母親は4人兄弟の長女で歳も離れてた弟妹を共働きの母親を助けながら実質親代わりで兄弟の世話をしてきた人で色んな事を我慢して生きてきたから、その反動なのか凄く甘えん坊になってた。昔を知ってる人がびっくりしてた。
あと、味の好みも変わった。
魚派だったのに、肉派になり
野菜好きだったのに、苦手になった。
まぁ昔は相当我慢してたんだなと思う。
もう我慢しなくていいんだよ。
母親の親になると介護する時に誓ったんだから。

母親の息子が母親の親になった瞬間こそが、このストーリーの始まりなんだから。


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