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『ガチカップ』ガチで戦ってきた話

1秒のロスが勝負の決め手になる。だから1秒も無駄にできない。

12月14日。大倉バス停に着いたのは朝7:00頃。
山の麓の気温は寒く、「今日も短パンは無理」と思いながら、8:00のスタートに向けて準備を進めた。

ウェーブスタート方式で、ゴール着順が順位。出走順に限らず、1番最初にゴールしたヤツが勝者。

スタート時間は、ウルフコーチに事前にネゴり(笑)ハンデをもらった。

【 出走チーム一覧 】
・7:30スタート(チームマイラー&ジュニア)
・8:00スタート(チーム奥久慈←ここが自分のチーム)
・8:30スタート(チームOSJ、チームドニチ、チーム信越、チーム駅伝)
・9:00スタート(チームランボー)

ふむ。ウルフコーチのいるチームランボーとは1時間。いつも一緒に練習をしているチームメイトとは30分。このハンデが絶妙すぎて『ガチカップ』が正真正銘の【 ガチカップ 】になるのだった。

【 コース 】
①大倉→②塔ノ岳(山小屋)→③新大日(長尾尾根)→④札掛(ロード)→⑤護摩屋敷の水(水場)→三ノ塔(トイレ)→⑥塔ノ岳(山小屋)→金冷(分岐)→⑦鍋割山(山小屋)→大倉(ゴール)
約40km 累積3,000m弱

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バカ尾根からの塔ノ岳、三ノ塔&二ノ塔経由の塔ノ岳がメインの登りでキツい。さらには、マジで走れちゃうヤツラが多いガチチームのメンバーにとって、ロードと林道は自分が圧倒的に不利。。どう戦うかも重要になってきそうだけど、今回は出たとこ勝負で行くことにした。
何か打ち手がある訳でもないし、スピード勝負では全く歯が立たないことは分かっていたので、成るように成る作戦。

ここで説明しよう!RBRGTRCのガチチームとは・・・

レースでの「上位5%」より上を目指すランボーズ(岩本町TRCが2019年より改名)のトップカテゴリチーム。
参加基準:5km 19分 or 10km 40分 を切る走力(必須) + フルマラソンやトレイルレースの実績を元に選考。(Run boys! Run girls! ブログより引用

2017年から礒さん率いる「マイラーチーム」に参加していたが、今年はもう少し、もう少しだけスピードを養いたい。。
でも選考基準である5km 19分 or 10km 40分 を切る走力なんてものは全くない。うーん。悩んだ末に代表のケイさんと礒さんに相談してみたところ、参加の了承を得た。むしろ背中を押してくれた。
2019年1回目の練習会は『5kmタイムトライアル』。ここで選考基準をクリアせねば!と意気込むも、全くかなわず21分の惨敗。
それでもこのチームに参加させてもらったことを自分の中にしっかりと残したいと思い、練習会では毎回最下位を走ることになったが、なんとか食らいつくよう頑張った。
その結果、夏の終わりには19分前半のタイムを出せるようになり、成長を感じた。
それも全ては「リミッターカット」を合言葉にゼーハーゼーハー切磋琢磨してきたチームメイトのおかげだと思っている。
ちなみに女人禁制(笑)
誰よりも男前であること。チームに参加させてもらうことが決まったときに誓った自分との約束。
チーム説明というよりも、自分とチームについての話になったがそんなチーム。

切磋琢磨してきた仲間だからこそ、絶対に負けられない。かっこ悪いところは見せられない。

ガチカップは2人1組のチーム制。一緒に走ることになったキョウヘイくんには迷惑をかけられないと思いつつも、やはりお荷物になったことは間違いなかった。

塔ノ岳への登り返し。三ノ塔手前で突然体が動かなくなった。補給はしている。足をつかい果たした感じもないが、どうしてもうまく動かせない。きっとすぐ後ろからあいつらが迫ってきてもおかしくない頃。
ちなみに、三ノ塔の登山口ですでにチームOSJにはあっさりと抜かれた。ペースが違いすぎて、食らいつくことは全くできなかったのが悔しいが、これが力の差だ!と気持ちが良いくらいに抜かれたので、気持ちが落ちることはなかった。しかし体が動かなくなっていた。。

足音が聞こえたわけではないが、後ろに気配を感じる。
チーム信越がすぐ後ろに迫っていた。信越五岳100マイルレースで超絶かっこいいストロングフィニッシュを決めた名コンビ。手ごわい2人がすぐ後ろに迫り、二ノ塔手前で抜かれた。でも、抜かれた後、まだ視界に入る範囲で塔ノ岳を目指し登って行く2人。
このタイミングで抜かれたのが良かったのだろう。
内なるMKTを呼び起こしてくれたのだ。

まだ体は動くだろう。足が攣ろうとなんだろうと、あいつらに置いていかれたらかっこ悪いし一生後悔する。

レースにおいて、度々出てくるワード。
『一生後悔する』
大抵、順位争いをしていて、ここで抜かれたら一生後悔するからここは走らなきゃ。とかそんな感じ。
今回も、いやこんなに強くこの想いが胸に宿ったのは、上州武尊の時にまーそーパイセンとばちばち戦った時以来だった。
自分が我慢をすればついていける。いやむしろ追いつくことができるかもしれない。前の2人は抜かしていった時の勢いがないように見える。
一緒に走ってくれていたキョウヘイくんも同じことを思ったようで、ちょっと頑張れば追いつけるかもしれません。と声をかけてくれた。
よし。
スイッチを入れ替えて、走れる場所ではないか、足を動かし続ける。
少しづつ背中が近くなり、ぴったり後ろに張り付いて、抜かすタイミングを見計らう。自分の息が整った。
「今だ!!」
キョウヘイくんに合図を送り、さっと横を抜ける。
抜かした後は、加速して足を動かし続ける。そして挨拶する声のトーンを上げた。
まだまだ自分はやれる。むしろ元気だと思わせたかった。そんなことで、元気なんだなと思ってくれるほど甘いヤツらじゃないけれど、それでもそれらいやっとかないと負けてしまいそうで怖かった。

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山頂からの景色は格別なもの。のはずが、景色を楽しむよりもレースを楽しむ。この瞬間が楽しすぎて鳥肌がたった(寒いからではない)

塔ノ岳にほんの数秒差で先にたどり着いた。ここからは下り。
キョウヘイくんも自分も下りが得意だから、差をつけるならここしかない。
人が多い時間帯だから、登山を楽しんでいる方の邪魔は絶対にしない。
ハイカーさんでもランナーでも人がいれば歩くし、基本的には譲ることを心がけている(状況にもよるけど)
塔ノ岳からは全て下りだと思っていた自分をとりあえず呪いたい。下りだけじゃないし、鍋割までは、しっかりアップダウンあるし、トレイル下りきった先の林道も、全部が下っているわけじゃなかった。
それでも必死に追いつかれまいと前に進んだ。

鍋割を通過してある程度下ったところで、チームマイラー&ジュニアを捉えた。
30分前にスタートしているチーム。なかなか追いつけなかったし、きっとゴールまで追いつかないと思っていたから、見えた瞬間にキョウヘイくんがペースアップ(笑)あのチームを抜けば暫定2位だ!

本当の勝負の始まり。1秒のロスが勝負の決め手になる。だから1秒も無駄にできない。

林道に着いた。ここを走りきればもうゴール。
しかし、ゴールまでは5kmちょっと。。。
「あれ?5kmもあるの?これ後ろに追いつかれちゃうんじゃ・・・」
ロードの走力では全く歯が立たないあいつらが今は見えないけどすぐ後ろから迫ってきている。この林道で1秒無駄にしたら負ける。絶対に負ける。
走るのは苦手だけど、とにかく必死に走った。後ろが気になるけど絶対に振り向かない。振り向いている暇があるなら前に進んだ方がいい。

林道の終わりに門というか、柵みたいなのがある。
キョウヘイくんが開いてくれていたところに滑り込んだ。
「閉めるなよ!閉めるなよ!」
声が、体が、顔が見えるところまで詰められていた。
後500mくらい。
口から心臓が飛び出るんじゃないかと思うくらい息が上がった。足がもげるんじゃないかと思うくらい全力で体を動かした。
ロードに出る。まだか。。。まだなのか。。。。。。
最後の角を曲がって、後ろからは追いつかれないところで、2人で両腕を上げてゴール。

30秒後、チーム信越がゴール。
さらにその30秒後にチームランボーがゴール。ウルフコーチもすぐそこまで迫っていたことにこの時初めて気づいた。
1時間差もらったのに。やっぱりすげーや。

1年間、一緒に戦ってきた仲間とガチで戦った1日。
全力を引き出してくれるチームメイトに感謝しかないし、このチームに参加できて本当に良かったと思えた。

余談だが、帰り道の運転で、頑張りすぎたせいかものすごい睡魔に襲われ、海老名で1時間仮眠。寝ている時に脇腹を攣り、死にそうになった。
来年の締めくくりもガチカップで決まり。

※チムメイトのことを「ヤツ」「あいつら」など表現していますが、敬意を込めてそう記載しています

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