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KING of SKI『全日本選手権ノルディック複合』を応援してきた話

ずっと頑張り続けていてこれ以上の頑張りは難しいんだろうけど、かける言葉は「がんばれ」としか言えない

『KING of SKI』『ノルディック複合』『ノルディック・コンバインド』様々な呼び名があるこの競技。詳細を知っている人はどれくらいいるのだろうか?
かく言う私も、この競技についてちゃんと知ったのはつい最近。興味をもったのも最近のことだ。

ノルディック複合とは?
ノルディック複合(Nordic combined)は冬季スキー競技スポーツの一つで、クロスカントリースキーとスキージャンプという2つのノルディックスキー競技を組み合わせて競う競技である。ノルディックスキー・コンバインドとも言う。
クロスカントリーでは持久力、ジャンプでは瞬発力が必要で、総合的な運動能力が求められる。ヨーロッパではこの種目の王者を「King of Ski (キング・オブ・スキー)」と呼ぶ。
出典:Wikipedia

走るスキーと飛ぶスキーの合せ技。
クロスカントリースキーだけ、ジャンプだけが上手くてもダメで、とても繊細で難しい競技だと思う。

板が滑る音、風を切る音、着地する音。遠くから見ていてもはっきりと聞こえてくる。

ジャンプについては詳しくない。やったことないし、テレビで少し見たことがあるくらい。なので語れることは何もないけど、この記事を読んでくださる方はジャンプ台の下に行ったことありますか?選手たちが飛ぶところを生で見たことありますか?
私は今年になって初めてジャンプ台の下に足を運び、練習だけど選手が飛ぶところを生で見た。
滑走時の板が滑る音。飛び出しの瞬間の踏み切りの音。空を飛ぶときに風を切る音。そして着地する瞬間の音。
滑り出しから着地まで時間にすると10秒に満たない時間なんだろうけど、これらの音がジャンプ台の下にいてもはっきりと聞こえてくる。
擬音ってあまり好きじゃないんだけど、「シュー」「バンッ」みたいな。
この音も含めて、思っていた以上に迫力のある競技だった。
今回応援に行った全日本選手権はジャンプは当日中止になった。理由は悪天候。風が強かったり、着地滑走面の雪が多すぎても、少なくてもダメで、単純に選手同士の戦いだけではなく、天候との戦いも強いられる。どんなに繊細な練習を積んできていても、神様のみ知るところに勝負の行方をかける部分もあるのだ。日頃の行いを良くしておかなければと思ったし、選手に悪い人がいないのはこういうことかと思った。

勝負の行方は最後までわからない

通常だと午前中にジャンプ、その日の午後からクロスカントリースキーという流れ。この日はジャンプ競技はなかったが、午後からクロスカントリースキー。スケーティング10km。
これまでクロスカントリースキーのスタートは1人ずつ10秒差ででていくスタート方式が通常だと思っていたが、コンバインドのスタートはジャンプの順位によるウェーブスタートが多く採用されている。ジャンプの着順により、スタート時差が計算され、その時差どおりにスタートしていく。つまり1番最初にゴールした選手が優勝という分かりやすい構図。
ただし1番最初にスタートしたから有利になるわけではなく、たくさんの駆け引きがある競技だ。
クロスカントリースキー歴2年の私だけど、一流コーチにいろいろ教えてもらっているから私なりの観戦ポイント(駆け引きを含む)を紹介しよう。

クロスカントリースキー観戦が面白くなる!観戦ポイント(MKT調べ)

風の抵抗が鍵になる
きっとこの記事を読んでいる人は、何かしらのスポーツ経験がある人だと思う。そして1回は外を走ったことのある人だと思う(そう信じたい)。その前提で、外を走る時、向かい風って厄介じゃないですか?正面から風がびゅんびゅん拭いていると、それだけでスピードダウン。もしくは同じスピードで走っていてもキツくなるはず。クロスカントリースキーに置いても同じで、正面からの風は体力、気力を削ってくる要因となる。
集団か単独か
さらに風の抵抗の話の深堀り。向かい風の時、集団の後ろで走るのと、一人で走るのどっちが楽ですか?『走ること』ではあまり感じられないかもしれないけど、集団の後ろにいる方が楽に走ることができる。前の人が風を受けてくれて、自分にかかる風が少なくなるから。
クロスカントリースキーはこれが顕著だ。
集団のトップにいる場合、みんなの風よけ役になるから体力は奪われるけど、『集団』で走っているから、後ろに下がれば、削られた体力を回復させることもできる。集団で走る場合、こうして協力して先頭を引っ張り合うことができれば、体力を温存しながら前の選手を追いかけることができる。
一方単独の場合、常に一人で風を受け続けるため、集団に比べ体力の消耗は激しい。ただし、一人でいるメリットもそれなりにある。
1つ目は転倒に巻き込まれないこと。どんなトップの選手であっても絶対に転倒しないとは言い切れない。転倒した場合、ポールが折れたり、どこか怪我をしてしまうこともあり、集団で走っているときに誰かが転倒すると巻き込まれるリスクが高くなる。
2つ目はマイペースで走ることができる。集団で同じ目的を持って走っていても、やはり勝負の世界。時折ペースアップしたりしてポジション争いなどを行っている。つまり、全く消耗しないという訳でもない。その分、単独の場合は自分との戦いに没頭すればよいので余計な考えは少なく体の動きだけを見ながら滑ることができる。
集団におけるポジション取り
ここ!これ!このポジション取りが勝敗を分けるといっても過言ではない(と思う)。
まず先に書いた、風の抵抗で集団のトップを引くよりは後ろにいるほうが楽。だけど集団の意思と自分の意思が一致していないとその集団はとても居心地が悪くなると思われる。
例えば、自分は前の選手を追いたいけど、集団は追わなくてもよいと考えている。その場合、集団のペースは思いの外上がらず、自分がトップに立って引っ張ることになる。ここで問題が発生する。自分がトップで引くと体力を削られるのは自分だけ。つまりこの集団は自分以外は基本的に体を休めながらスピードに乗ることができる。そうなると、前の選手に追いついたときに自分の体力は落ちているが、他の選手は元気。もし最後にスプリント勝負となったら、他の選手が有利になることが多い。
こうなった場合、どうするか。とても難しい選択が必要となる。
しかし、ただ後方に位置していると、仕掛けに対応しきれない場合もある。トップを引く選手が集団を振り落としたいとき、多くの場合は上り坂で勝負を仕掛ける。この仕掛けに集団の2~3番手にいれば、すぐに対応可能だが、後方にいた場合、反応する速度が遅くなる。数秒、この数秒が大きく左右するのだ。
集団でいることのメリットもあるが、ポジション取りがかなり重要になってくる。

息遣いも聞こえる白熱した戦い

今回の全日本選手権観戦のミッションは小山選手の応援が目的だったので、小山選手の順位もチェック。小山選手と同じチームの傳田選手と同着の2位で1位の曽根原選手とは15秒差スタート。風がとても強かったので、パックもしくは集団で1位の選手を追う展開だろう。
トップ選手の実力は均衡
2.5kmのコースを4周の10km。スタート後、ダラ登り~傾斜のキツい登りが続き、長い下りの後、アップダウンを繰り返しトラックに帰ってくるコース設計。今回は一番傾斜のキツい登りのポイントで応援した。
1周目は1位の曽根原選手が単独。続く2~4位が集団で前を追う展開。自分なら3周目後半か4周目で1位の選手に追いつくことを考えるかな。ただし、後ろの集団がくっついてきて大集団になることは避けたい。大集団になるくらいなら、早めに1位にくっついて、後方集団に着かれないように逃げる。
そんなことを考えていたら、早くも2周目。変わらず曽根原選手が1位。5~6秒差まで詰めて、2、3位に小山選手と傳田選手。4位の選手は離れていた。
細かい競り合いはしているのだろうが、実力は均衡しているように見える。途中で勝負がつくことはなく、最後のスプリント勝負になることが想像された。
応援せずにはいられない
観戦ポイントで集団の後ろが楽だと書いたけど、後ろに着くのもそんなに楽じゃないと思った。常に変化する集団のスピードに対応するのってやっぱりすごく体力がいる。そして神経つかう。
3周目。傳田選手がトップで3人の集団になった。3人とも動きは悪くない。選手の動きでわかったことが1つ。疲れてくると顔が下を向く。肩が上がって、ポールワークが若干雑になるように感じる。そんな動きはこの3人にはまだ見られなかった。
そしてもう1人。湊選手。木島平で一度お話しさせていただいた、規格外に体の大きな選手。10位スタートだったが、3周目で単独の4位。後続の選手は湊選手に全く追いつけないほどのスピードだった。このまま行けば、1位集団に追いつくかも。そんな勢い。
小山選手の応援だけど、、この場にいる全員が苦しいながらも同じゴールを目指して頑張っていると思うと応援せずにはいられなかった。
勝負が動くのは一瞬
テレビで見たことのあるジャンピングクイック(これが正式名称かは知らない)。4周目。上り坂の傾斜が変わる一瞬で傳田選手が仕掛けた。目の前でその展開を見れるとは思わなかったから、胸が熱くなる。とともに、少し遅れた小山選手の背中を押す。声が届くのかはわからない。けど声を出さないという選択はなかった。少し離れてしまった湊選手の応援もして、ゴール地点へ移動する。

心って勝手に動くものだから『感動させる』という言葉は嫌い

『感動させる』って言う表現が嫌い。自分で勝手に感動するし、それは人に与えてもらうものではないと思っている。
そんな捻くれた考えを持つ私。
最終コーナー、1位は曽根原選手、そのすぐ後ろに傳田選手。少し離れて小山選手。1位2位争いのゴール前スプリントは見れなかった。
小山選手の最終コーナーの応援に必死だった。
コーナーを曲がる瞬間、フィニッシュゲートに視線を送る小山選手。一気にいろんな感情が溢れてきて、何もしていないのに涙が溢れてきた。
この日の為に、小山選手がどれほどのトレーニングを積んできたのか。去年は雪不足、そしてコロナの影響を受けて大会に出たいけど出られないという状況。そんな中で開催された大会で、思い描いていた最高のゴールとは違う形でのゴール。悔しくないはずがない。勝手に感情移入して勝手に泣いて。なんて迷惑な観客なんだと思いながらも止められることはできなかった。

なんでも挑戦してみないとわからない

食べものの食わず嫌いはものすごく多い。ブロッコリーの森も部分とか、厚切りの玉ねぎとか。
でもスポーツの食わず嫌いはしない。なんでも挑戦してみないと、良さも悪さもわからないし、自分に合う合わないもわからない。
ここまで書けばわかることでしょう。
どんなサイズでもいい。足で踏んだ台でもいい。1mくらいでいい。コンバインドの難しさを肌で体験してみたい!
来年は飛ぼう!そう思った、ノルディック複合、全日本選手権を応援してきたお話し。

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