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#紅茶のある風景

人代の午後

「ペットボトル! うわ、久しぶりに見ました」 青すぎる常夏空の下、崩れかけた廃墟に私の声が響いた。街を彷徨っていた私に声をかけ、隣に座らせた老人は、手に持つそれを軽く振って笑った。 「もちろん未開封、混ぜ物無しのストレートティーだ。なんと……十年物だな」 「賞味期限やばいっすね」 細い目をさらに細めて印字を読む老人に、私も笑った。 「ま、何喰っても死ななきゃ上等ですけど」 「その通り。どうだ、世界最後の紅茶、一緒にやらんか。一人じゃもったいない」 老人の申し出に再び驚き、私は