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伝説の安心感

西暦2500年。
人々は、豊かな自然を失い、人工の食べ物を食べ、仕事はAIに奪われ、貧富の差も広がり、心がすさんでいた。

人々は、200年ほど前に蓄えていた、伝説の偉人の遺伝子を持ち出した。
AIの普及により、もはや頭脳の良さなど不要だった。
人々が欲していたのは、癒しであり、安心感だった。

科学者が、理想の人間を作るために選んだ遺伝子は、
誰が聞いてもうっとりして眠くなるような心地よい声
その顔を見るだけで癒される、穏やかで優しく
常ににこやかな顔
一緒にいるだけでゆりかごにいるような安心感を与える性格
という偉人の遺伝子だった。

幾度かの失敗の後、完璧な伝説の偉人をミックスさせた安心感を与える人間が出来上がった。

しかし、完璧な安心感は、長くいると飽きてしまったり退屈したりしてしまった。

一方失敗作として世に出された人間は、逆に人々に愛され安心感を与えた。

優れた一面があってもどこか欠けている、そんな人こそが、伝説の安心感だったのだ。



本文411文字

これは、たらはかにさんの企画
#毎週ショートショートnote
の企画に参加したものです。

今回のお題は、
「伝説の安心感」でした。
安心感は伝説になるのか…

私は市原悦子さんの声は、人々に懐かしい子ども時代や、平和な古い日本の姿を思い出させる、伝説となりうる安心感だと思っています。

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