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春の夢

春の夢を見た。

どこなのかわからない。
建物の中。
隣の部屋を覗くと、その先がやけに暗い。
御簾があるようだ。

怖そうな気配なのだけれど、私はそこに行かなければならないと思った。

御簾が溶けるように消える。
その奥にいたのは、嫁いだ翌年に亡くなった義父だった。

お義父さん、ごめんなさい。
最後まで、嫁でいられなくて・・・

義父は静かに笑う。
タカ子(義母の名・仮名)も年を取ったなあ・・・

お義母の面倒見られなくなってしまったけど、今は別の人がいるから大丈夫ですよ。

孫たちを、どうか見守ってくださいね・・・

義父は、優しく笑って、闇に消えた。

このモノクロの夢が春の夢だと思ったのは、その部屋にずっとニオイバンマツリの香りが漂っていたからだった。

そういえば、昔の家の仏間のすぐ横に、ニオイバンマツリの小さな生垣があった。家を建てたときに、私が好きなニオイバンマツリを植えたくて、穴を掘り、土を入れて、5~6本のニオイバンマツリを植えたのだった。

ふと、私が義父と会った部屋は、あの仏間だった気がした。

今もあの場所で、いい香りを漂わせて咲いているのだろうか?

目が覚めると、私は大きく伸びをして起き上がり、カーテンを開けてベランダへのドアを大きく開けた。

朝の陽ざしと共に、ニオイバンマツリの香りが、ふわっと部屋に入り込んできた。
ベランダのニオイバンマツリは、数日前、数個の花が咲きだしたばかりと思っていたのに、満開になっていた。

そういえば、もうすぐ義父の命日だった。

もう他人になってしまったけれど、たった1年だったけれど、とてもかわいがってくれた義父。

命日には、義父のために祈ろう。

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