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部下にコンフォートゾーンを突破させるには? DXに欠かせない"主体性"の作り方

Monstarlabは6月28日(月)、音声ライブ配信シリーズ「みんなのDXプロジェクトルーム」vol.2を開催した。

DXのプロフェッショナルによるディスカッションを、ラジオ感覚で聞ける「みんなのDXプロジェクトルーム」。テーマに精通したゲストを招き、リスナーとともにDXの課題について考えるトークライブシリーズだ。

今回のテーマはvol.1に続き「社内調整」。なかでも、経営層・マネジメント層の悩みにフォーカスし、冒頭で紹介した。

これからメンバーが一丸となってDXを推進していかなければいけないのですが、時代・市場の変化にフレキシブルに対応するためにも、主体性あるチームづくりが必要だと考えています。その際、気を付けるべき点やコツはありますか?

これについて、歴戦のプロジェクトマネージャーであるパラダイスウェア株式会社 代表取締役・橋本将功氏、株式会社モンスターラボ 執行役員 開発統括・宇野智之氏が討論。

本記事では、ライブ配信の内容を抜粋してお届けする。

リーダーの能力値に依存しないために

橋本 チーム作りだと、まずはコアメンバーをいかにして選ぶか。立ち上げ段階は仕組みが整っていないので、その状態でもどんどん推進していける中心人物選びが重要だと思います。

宇野 最初はコアメンバーがリーダーシップをもって進めたほうが早いですよね。ただし、そこからある程度の時間をかけて、いずれはチームの自律性を高めていかなければいけない。リーダーが牽引し続ける状態では、そのリーダーの能力値=チームのパフォーマンスの最大値になってしまうので。

橋本 そうですね。そのためには、メンバーがDXに集中できる環境を作ること。それが自主性あるチームづくりの土台になると思います。

DXや新規事業立ち上げでは、だいたい失敗するパターンがあるんですよ。それは、担当者のメイン業務がほかにあり、DX・新規事業に関するものがサブ業務扱いになっているパターン。

宇野 プロジェクトメンバー全員が兼任ということもありますよね。

橋本 そうするとDXが後手に回って、十分な推進力を得られなくなってしまうんですよ。DXや新規事業立ち上げは簡単ではないし、やらなければいけないことが本当にたくさんあるじゃないですか。

宇野 その通りですね。

橋本 メイン業務を言い訳にさせず、DXに専念できる環境づくりは非常に重要ですよ。

宇野 会社としてDXに真剣に取り組み、本気で変革を起こしていくのであれば欠かせないポイントですね。

リーダーに求められる条件適応

宇野 一方で、環境さえ用意できれば誰もが主体性を発揮できるかと言えば、そうではない。

橋本 そうですね。むしろ、そうではないから困っているリーダーの方々も多いのではないでしょうか。

宇野 そこはやはり、リーダーがメンバーの特性に合わせて支援・指示を行うことが重要かなと。この点では「SL理論」(※)が参考になると思います。

※ Situational Leadership(リーダーシップ条件適応理論)の略で、代表的なリーダーシップ理論として知られる。部下の成熟度などに応じ、リーダーとしての役割を変化させること。「教示的リーダーシップ」「説得的リーダーシップ」「参加的リーダーシップ」「委任的リーダーシップ」の4スタイルに分類される。

宇野 チームのなかには、まだ習熟度が低く具体的・直接的な指示が必要なメンバーもいれば、逆に、多くを任されることでモチベーションが上がるメンバーもいるでしょう。

要は、その個人に何を期待し、どのような権限を渡すのか。このようなリーダーシップモデルを参考に自主性を育んでいくことは、いずれ組織全体の成長にもつながると考えています。

コンフォートゾーンからの脱出

宇野 橋本さんがプロジェクトメンバーをアサインするときは何を重視していますか。

橋本 僕は、「このプロジェクトへの参加が今後の出世に役立つかどうか」という発想の人よりは、「この仕事をやりたいんだ」と考えて取り組む人をアサインするようにしています。いわゆる、メンバーシップ型ではなくジョブ型のアサインですね。

その際に気をつけなければいけないのが評価方法。失敗を咎めたり、それが評価に影響するような組織では誰もDXに挑戦しません。

DXプロジェクトの担当者の離職率って、実はすごく高いと思うんですよ。それまではメイン業務をいつも通りやっていればよかった社員たちが、いきなりDXを任され、コンフォートゾーンから出なければならない。

それは、通常業務と比べて高度かつ挑戦的な取り組みに違いないんですよ。そうであるにもかかわらず、会社からは短期的な目線で「ちゃんと進んでいない」「売上がたっていない」と評価されてしまう。

宇野 組織単位のDXを実現するにはある程度の時間がかかります。もしかすると2年、3年とかかるかもしれない。

その間は、短期的指標をもとにした評価だけでなく、行動・活動などスタンスを評価する必要もあると思います。そうすることで主体性を発揮しやすくなる。そのようなメンバーが増えれば、DXを推進するリーダー格の人材も増える。結果としてDXを推進しやすい組織になるはずです。

ただ、短期的には成果を上げているのに、スタンス面で評価されないメンバーがいると、それはそれでその人のモチベーション低下につながってしまうので...... これは本当に難しい問題ですね。どのような人材がどのように評価されるかをクリアにすることは、組織変革の第一歩なのかもしれません。

橋本 もしかすると、DXの部署内で評価軸を別に作るとか、そういった対策が必要かもしれないですね。

DXとは"人を育てる"ことだ

宇野 プロジェクト単位で取り組めることとして、メンバー同士の関係性づくりも重要だと考えています。

そこでヒントになるのがアジャイル開発の「レトロスペクティブ(振り返り)」なのではないかと。

宇野 レトロスペクティブでは、チーム内でメンバーがお互いにどのような期待値を持っていて、それに対して何が過不足しているかを率直に話し合います。それができるチームは、「自分たちのチームを自分たちで良くしていくのだ」というモチベーション・主体性が見えてくることがあるので、有効な手段だと思います。

Monstarlabでも実際に、チームのパフォーマンスがかなり上がった例があります。弊社のスクラムマスターがスプリント(一般的には1〜2週間程度の短い開発サイクル)ごとにプロジェクトの良かった点・悪かった点をしっかり管理し、メンバー全員で振り返るときの進行役を果たし、客観的に評価してくれました。

スクラム開発では一般的なプロセスですが、スクラムマスターが想定以上に主体的で優秀な働きをしてくれたので、チームのパフォーマンスを最大限に発揮できたと思っています。

橋本 レトロスペクティブは、事業会社にあまりない習慣かもしれません。しかし、そのような機会を設けることは僕も重要だと思います。業績評価のためではなく、チームの働き方のためのアクションですよね。

宇野 そう考えると、本質的なDXとは"人を育てていく"ことですよね。いいチームをつくるためにメンバーが日々改善に努めている様子を、リーダーは決して見逃さず、きちんと称賛する。仕組み化できないところにこそ、DXを成功させるポイントがあるのだと思います。

橋本 メンバーが「DXに取り組むことは自分にとってマイナスじゃないんだ」と理解できるような環境作り。それこそが、DX推進においてマネジメント層に求められることなんじゃないかと思いますね。

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★「みんなのDXプロジェクトルーム」次回予告

vol.3「社内調整って難しい! 大型プロジェクト編」
7月5日(月) 16:00〜16:30開催

DXの取り組みが拡大すればするほど、関係者は増えていく...。あらゆるステークホルダーにDXの重要性を理解し、動いてもらうには?

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