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ゲーミフィケーションとは? 8つのコアドライブを解説

11月19日に発売され、話題となっている「桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!」。今春ブームとなった「あつまれ どうぶつの森」に続き、コロナ禍のエンターテイメントとしても注目されています。

ゲームには、プレイヤーを没頭させるための体験がいたるところでデザインされています。桃鉄では、資産を増やす達成感、維持することの難しさ、カードアイテムの予測不可能性、仲間との競争性などがこれに当たるでしょう。

このようなゲームのメカニズムは近年、教育やビジネスなど多く分野で応用されています。人間のモチベーションや能力を高めるための手法として、デジタルウェルビーイングの観点で重要視され始めているのです。

そこで、本記事ではゲーミフィケーションの基本知識をお届け。定義や意味、代表的な要素として知られる「PBL」、フレームワーク「オクタリシス(Octalysis)」と8つのコアドライブなどを解説します。

ゲーミフィケーションとは?

ゲーミフィケーションとは、ゲーム以外の活動にゲームの要素(遊びや競争など)を加えることを指します。

かつては、ユーザーのモチベーションやロイヤルティを向上させ、顧客の活性化を図るマーケティング手法でしたが、現在では人材開発や社会課題の解決にも使われるようになりました。

ゲーミフィケーションという言葉が知られるようになったきっかけは、2011年発表の「ハイプサイクル」といえるでしょう。ゲーミフィケーションは「黎明期」を抜け、「“過度な期待”のピーク期」の序盤に位置しています。

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©︎ Gartner 2011 Hype Cycle of Emerging Technologies

その後、2015年発行の書籍「The Gameful World: Approaches, Issues, Applications」で、より広く知られるように。同書では、50人以上の著名人がゲーミフィケーションのカルチャーや課題を検証。ヘルスケア、教育、ソーシャルメディアなどへの応用について説いています。

ゲーム要素の基本「PBL」とは?

ゲーミフィケーションという単語が認知されたのは最近のことですが、ゲーム要素は長きにわたり、さまざまな分野で応用されてきました。

代表的な要素は「ポイント(Points)」「バッジ(badges)」「リーダーボード(leaderboards)」の3つ。頭文字をとってPBLと呼ばれます。

それぞれの概要は以下の通り。

◆ポイント
 使われる場所:マイル、ポイント還元など
 目的:意味や目的、進歩の感覚があるように感じさせるため

◆バッジ
 使われる場所:軍人の階級バッジ、成績優秀シールなど
 目的:達成感や報酬を得たと感じさせるため

◆リーダーボード
 使われる場所:スポーツの成績ボード、営業チームの成績表など
 目的:社会的地位と影響力があると感じさせるため

これらは日常のあらゆるところで多用されている、ゲーミフィケーションの基本要素です。

フレームワークとコアドライブ 

ゲーミフィケーション専門家の周郁凱(チョウ・ユーカイ)は、「真のゲーミフィケーションは人間のコアドライブを活用すること」と語っています。

コアドライブは人間を目標に向かって強く突き動かす要素のこと。ゲーミフィケーションには8つのコアドライブがあり、それらを落とし込んだフレームワークはオクタリシス(Octalysis)と呼ばれています。

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© Yu-kai Chou

各コアドライブは以下の通り。

◆意味(Epic Meaning and Calling)
意味ある活動に取り組んでいると信じる気持ち、あるいは、何か行動を起こすときに「自分は選ばれた」という実感。

◆達成感(Development and Accomplishment)
目標に向かって挑戦し、それを達成しようとする気持ち。前述のPBLの多くはここに含まれる。

◆エンパワーメント(Empowerment of Creativity and Feedback)
自分で方向性を選び、課題に対してさまざまな解決策を試してみたいと思う気持ち。何かを創造しているときだけでなく、それに対するフィードバックを受けることも重要となる。

◆所有(Ownership and Possession)
何かを所有・支配したいと思う気持ち。もっと多くのものを所有したい、あるいは所有物をより良いものにしたいという感情も駆り立てる。

◆社会的影響力(Social Influence and Relatedness)
仲間意識や社会的受容、競争や尊敬など、人間を動かす社会的要素。SNS戦略ではこのコアドライブを重視するケースが多い。

◆希少性(Scarcity and Impatience)
希少性が高いなどの理由で手に入りづらいものを欲する感情。入手可能性を確認するために戻ってくるという動機づけを生むこともできる。

◆予測不可能性(Unpredictability and Curiosity)
先を予測できない状況に置かれ、次に何が起こるのかを知りたいという気持ち。読書や映画鑑賞のほか、宝くじやギャンブルでもこのコアドライブが利用される。

◆回避(Loss and Avoidance)
ネガティブな結果を避けたいという気持ち。「今すぐ行動しなければ機会を逃してしまう」と感じさせることで、強力に作用する。

これらのコアドライブが作用するよう、ビジネスモデルやサービスをうまくデザインできれば、ユーザーのロイヤルティ向上や商品購入に繋げることができると考えられています。

ゲーミフィケーションの事例3選

最後に、ゲーミフィケーションを活用した事例を3つご紹介します。

① スマートフォンアプリ「SuperBetter
 コアドライブ▶︎達成感、エンパワーメントほか

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© 2019 SuperBetter, LLC

「コップ1杯の水を飲む」「1ブロック歩く」などの指示に従いながらステージをクリアすることで、肉体的・感情的・精神的・社会的回復力を高めることができるヘルスケゲームアプリ。

開発者のジェイン・マクゴニガルは、脳震盪の後遺症で頭痛・うつ状態を経験。自らが回復する手段として作ったのが「SuperBetter」でした。

同アプリは、ペンシルバニア大学のランダム化比較試験や、オハイオ州立大学ウェクスナー医療センターの臨床試験でも効果が実証されています。

② 代替現実ゲーム「EVOKE」
 コアドライブ▶︎意味、エンパワーメント、社会的影響力ほか

前述のジェイン・マクゴニガルが世界銀行研究所の支援を受け、2010年に発表したオンラインゲーム。仮想世界と現実世界をリンクさせ、現実生活でゲームを進める「代替現実ゲーム」というジャンルで、食糧問題やエネルギー問題などの社会課題の解決策を模索することが目的。

プレーヤーは近未来の仮想空間を舞台に、ほかの参加者と協議しながら、現実世界で実践できるアイデアを投稿。そのアイデアに対するフィードバックも知ることができます。

③ 節電ゲーム「#denkimeter
 コアドライブ▶︎意味、達成感、社会的影響力ほか

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note「節電ゲームの連続的な学習プロセス | 井上明人」より

国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの井上明人さんが考案した、Twitterを使った節電ゲーム。東日本大震災の2日後にバージョン1.0が公開され、節電に関心あるユーザーを中心に話題を呼びました。

家庭にある電気メーターの数値を計測し、公式Webサイトで使用量を入力すると、戦闘力に変換されます。それをツイートすることでさまざまな人と対戦できるというシンプルな仕組みです。

このように、マーケティング手法だけでなく、ヘルスケアや社会課題解決にも使われているゲーミフィケーション。Fortune Business Insightsのレポートによると、世界市場規模は2019年に63億3000万ドルを記録し、2027年には370億ドルにまで拡大すると予測されており、今後ますます注目を浴びると考えられています。

▼引用・参考文献
・Gamify|What is Gamification?-Gamification with Dr Zachary Fitz Walter
・Yu-kai Chou|Gamification & Behavioral Design
・人事労務用語辞典|ゲーミフィケーション
・Fortune Business Insights|Hardware & Software IT Services/Gamification Market
・日本経済新聞|ゲームで社会をよくする「ゲーミフィケーション」


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