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【5分で読める】 天井のない監獄「ガザ地区」とは? 深刻な社会問題とIT産業への期待

Monstarlabは現在、パレスチナ自治区・ガザ地区にて、SDGsプロジェクト「難民等の雇用・人材育成を通じた経済的自立のためのソフトウェア開発(SDGsビジネス)ビジネス調査」を進行中だ。

この記事では、ガザ地区の概要やパレスチナ問題、そして現地でIT産業が注目されている理由について簡潔に解説する。

隔離壁に囲まれた 希望のない街

パレスチナ自治区は、ヨルダンに接する「ヨルダン川西岸地区」と、エジプトに接する「ガザ地区」からなる地域だ。

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©️ パレスチナ子どものキャンペーン

2つの地区のうち、特に厳しい環境に置かれているのがガザだ。東京23区の約6割にあたる365㎢の土地に、200万人もの人々が暮らしている。

2007年、スンニ派反イスラエル武装組織「ハマス」がガザを武力制圧。それ以降、現在に至るまでハマスが実効支配を続けている。

イスラエルは、ハマスが支配するガザ地区を敵対的存在であると宣言。電力供給の停止、輸入の大幅な制限、国境閉鎖などの制裁を下した。これにより、人・物資の移動が検問所で厳しく制限されるように。港湾からの輸出も禁じられ、ガザの主要産業であり外貨獲得の貴重な手段でもあったイチゴなど、農作物の輸出も禁止された。

封鎖に反対するハマスなどの勢力は、イスラエル側へロケット弾などで攻撃。これにイスラエル軍が空爆で応戦するといった応酬が断続的に繰り返されているのが現状だ。

厳しい経済封鎖下にあるガザは、2002年に建設が始まった巨大な「隔離壁」(西岸とイスラエルを隔てるコンクリートや鉄条網の壁)の存在も手伝い、「天井のない監獄」「世界最大の監獄」などと呼ばれている。

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©️ Justin McIntosh

若者の自殺急増... ITが切り札に

封鎖政策のもと、ガザの経済状況は悪化。失業率は世界で最も高く、2018年は過去最高の53%を記録。また、人口の半分以上が貧困ライン以下の生活を送っているといわれる。

一方で、若者の大学進学率は5割超。職業訓練学校も多数あり、教育水準が高く優秀な人材が豊富なことでも知られる。

しかし、多くの若者は就業できず、貧困に苦しみ、将来に希望を見出せない状態だ。そのため、かつては宗教上の理由からほとんど見られなかった自殺が急増。失業率の高さは、現地の人々にとって生死に直結する社会問題であり、早急な解決が求められている。

そこで注目されているのがIT産業だ。ITビジネスであれば物理的な移動を要さず、検問を迂回しながら推進することができる。また、隣接しているIT大国・イスラエルの人材不足問題の解決策としても有力視されている。

そのため、近年ではIT分野を中心に、パレスチナ自治区にて起業の波が起きている。世界銀行のデータによると、ガザ地区とヨルダン川西岸地区で設立されたITなど技術系新興企業は、2009年の約20社から、2015年には約140社に増加。2011年以降は支援団体の発足も相次いでいる。

そのような潮流を受け、外資系企業など、パレスチナ自治区外の企業もガザに着目するようになった。Googleは、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学で開発・ビジネスを学んだアメリカ人経営専門家らによって、パレスチナ人に起業のノウハウを教えるプログラムを実施。日本国内では独立行政法人国際協力機構(JICA)が、SDGs達成を目指して途上国でビジネスに取り組む日本企業を支援。2017年にはMonstarlab、2019年には株式会社関電工が支援を受け、それぞれプロジェクトを進行している。

今なお厳しい状況下にあるガザ。産業の活性化や就業機会の拡充などを通じ、新たな世代の活躍を後押しするため、世界各国の企業・組織が動き始めている。

■参考・引用資料
・清田明宏 著「天井のない監獄 ガザの声を聴け!」(集英社)
・ARAB NEWS「ガザのビジネス、イスラエルの攻撃から回復するには時間を要する
・特定非営利活動法人(認定NPO法人) CPP Japan パレスチナ子どものキャンペーン「パレスチナ問題とは
・特定非営利活動法人(認定NPO法人) CPP Japan パレスチナ子どものキャンペーン「ガザ地区を知ろう
・Yahoo!ニュース ルポ「ガザは今・2019年夏」・6「急増する自殺」
・ZDNet Japan「IT大国イスラエルの開発者不足がパレスチナの雇用機会に--新たな依存関係にみる未来
・朝日新聞デジタル「ガザに起業の波、封鎖されてもネットで 日本企業も期待

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