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サブカル大蔵経950「八角文化会館」vol.6(八画出版部)

もう岐阜しかない。

何もないけど、すべてある。

前号から一年半かけて発刊された本書「八画文化会館vol.6〈総特集レトロピア岐阜〉」が伝えてくれたのは、岐阜県の奇跡の産業遺産の数々と、そこで現役で生活する店や人や街の物語の力。

つつましく、たくましく、歴史を抱えた、卑屈とは無縁の国。

これからの日本のモデルのよう。

本誌制作中にも閉店や解体が相次いだのでレトロピアも幻となる日が近いかもしれない。そうなる前に一緒に見ていこう。p.7

「かつてない岐阜のガイドブック」の名に恥じない貴重な記事と写真のすし詰め状態の一冊。

30年前の鉄道旅で乗り換えで降りた岐阜駅。少しだけ歩いた巨大なアーケード。人っ子一人いない暗く寂しい風景。「ウソだろ?」と思いました。

あれは私の白昼夢ではなかったことが、本書で確認することができました。

とにかく、「ウソだろ?」の連発。

今思ったのが、新幹線も名鉄もそれたから〈岐阜無双〉が生まれたような気がします。

できれば全ての都道府県版も読みたくなりました。それで初めて日本が見えてくる。

でも、やはり第一巻は岐阜がふさわしい。

香山哲さんの絵地図も豪華でした。

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名鉄グループは岐阜を見限った。p.18

衝撃の文言。岐阜市の主導で名鉄の路面電車の廃止を決めたことにより、名鉄グループの店舗も軒並み撤退し、陸の孤島・柳ヶ瀬が生まれた。

現在は電気代節約のため、金曜日と土曜日の夜にしか灯っていない。p.19

 西柳ヶ瀬アーケードのネオンサイン。つつましい桃源郷。柳ヶ瀬ブルース。

岐阜駅前のメインストリートから問屋街に一歩足を踏み入れると、異世界が広がる。p.29

「繊維街」ハルピン街。私の地元・旭川も繊維街があったので親近感湧きました。

【スナックイーグル(多治見市広小路)】。銀座センターの脇にあるスナック。「多治見には何もない。もう陶器はダメ」と地元民は口を揃えて言うが、多治見の旧市街地は意匠の素晴らしいスナックや商店の宝庫だ。p.40

 「陶都」多治見。「残った」街。私たちのすぐ身の回りにも「残った街」があるはずだと思いました。視界に入らない場所。

「漬物ステーキ」を試してみた。p.49

 過去と未来の奇跡の街・神岡。昔、神岡鉄道で訪れたことありますが、なぜか街の記憶がありません。すぐ折り返したのか。漬け物ステーキ食べれば良かった…。

日本一うまい水は揖斐川町にある。p.71

 養老鉄道養老線終着駅、揖斐。大垣発着の養老鉄道も樽見鉄道も未乗車なので、いつか乗りたいです。

岐阜の定番朝食。茶碗蒸しモーニング。p.74

 名古屋喫茶文化の奇食なのか。「食」も「残った」。

【加茂郡東白川村】日本で唯一、お寺がひとつもない自治体である。p.80

 「つちのこ館」もある村。

【スーパーサカイ】(各務原市)「エサを与えて下さい」p.83

 いきなり店内に水槽。日本とアジアの架け橋のような唯一無二の店内。

岐阜にもピラミッドがあった。岐阜にはマチュピチュもあった。p.85

 岐阜に〈世界〉がある。

下手したらそこに鉱山があったこと自体将来的に隠蔽するんじゃないかと思いたくなってしまいます。軍艦島が産業遺産にできたのは三菱から高島町に所有権が登場されて今は長崎県が持っているからともいえます。神岡にはリアルにいろいろなしがらみが残っているんですよ。p.93

 北海道でも渚滑、羽幌、士幌。みな鉱山と鉄道がセットで、皆消されてしまった。神岡から公害問題と差別問題と消失問題を考える。

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裏表紙の「忘れないでください。」は、岐阜のことなのか、私たちがしてきたことに対してなのか。

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