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サブカル大蔵経702竹宮惠子『海の天使』(角川書店)

『一度きりの大泉の話』が発刊された時は、萩尾望都側に同情する声が多かったように思います。踏まれた側の悲しみは50年経ってもそう簡単には癒えないのだと。

一方、萩尾望都の無自覚な才能に苦しんだ竹宮惠子側に感情移入する言説も目にするようになりました。これは『大泉』で、萩尾自身も述べているところでもあります。

当事者でしかわからないやり取りに対して周りが考察したり、どちらが一方的に悪いわけではないのに、間に人が入り、双方に応援団がついて、誤解や噂が生じて、亀裂が深まっていった。それが、「2021年の大泉サロン」なのかもしれません。

その現在も、作家が残してくれた作品は輝いています。

本書は、角川書店発行『竹宮惠子全集』のカラー表紙画集に、『風と木の詩』の番外編「幸福の鳩」と、著者による自作品の解説を付したもので、1991年発行。大判。

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竹宮惠子=動、のイメージがあったのですが、〈静〉の迫力や美しさも尋常じゃないですね。

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手塚COM寄りの『ファラオの墓』①p.15

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竹宮惠子全集書影。第一期ピンク、第二期黄色、第三期水色の表紙。私が持っているのは、空が好き!、Qの字塔、ロンド・カプリチアーノ、風と木の詩、変奏曲、です。p.47

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『風と木の詩』の続編というべき後日談「幸福の鳩」。全47ページ。p.49

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 体臭の抜けた雰囲気。すべては終わり、始まる。p.51

〈本人による全作品解説〉

私という人はもともとアンケートがとれない人なんですが。p.98

 雑誌「クレア」や「MOE」の少女マンガ特集でのアンケートでも『風・木』は驚くほど低かったです。

『ロンド・カプリチアーノ』を描いてた時期っていうのが、私のマンガ家生活の中で最も暗い時期で…p.98

 この作品、好きです。

あの子は0歳のまま、セルジュとの関係も、本当の愛情ではなくその前段階の、お母さんの代わりに毛布を欲しがるようなそういう関係にしたかったからです。p.99

 お母さんか…

『変奏曲』は、原作者が別にいるので、私だったらまずぜったいしない表現方法で描いていくという点が、新鮮と言えば新鮮でした。/そういう意味では、非常に古典的な少女マンガと言えると思います。p.99

 増山さんは革新ではなく古典だった。


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