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サブカル大蔵経946細野不二彦『恋とゲバルト』⑴(講談社モーニングKC)

三田誠広『僕って何』を高校生の時に読んで以来、全共闘や学生運動に関心を持ち続けながら、いまだによくわかりません。

しかし、何と、あの細野不二彦が、あの時代を作品で表現してくれると。

早速読むと、セクトの系統図や学生食堂の描写で、当時を再現して頂いて、教科書のように読めた…、いや読まさせない…。

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私にとって細野不二彦とは謎の存在です。

中学生の時購入した『めざせ!まんが家』にあだち充、石渡治、高橋留美子とともに登場していた細野不二彦。(このメンバー見ると、島本和彦『アオイホノオ』に次に登場するのは細野先生なのだろうか。)

がっしりした常識的で柔和なお顔が印象的でしたが、当時から作品は王道でも、どこか異彩を放っていたというか。

『さすがの猿飛』や『GUGUガンモ』での〈劇画要素〉は急に劇画描写になったり、読んでて少し怖い時もありました。絵の立体感と動きのシャープさは、漫画史の中でも鳥山明と双璧なのでは。

集英社の鳥山明と小学館の細野不二彦。

この両先生の比較研究はないのだろうか。

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『さすがの猿飛』3巻(小学館少年サンデーコミックス)での肉丸の母ちゃん(p.102)

今読んでも、各話の濃密度が凄すぎます。

細野先生ってはとっくに大御所のはずなのにいまだにチャレンジングな作品に取り組み、評価をあえて定まらせないようにしているというか、その連続なのでしょうか。

『東京探偵団』では山手線を合体させてループから車両を脱出させようとしました。シンゴジラを観た時この話を思い出しました。登場人物も現代の性の自由化を先取りしたような設定。とにかく早すぎた作品。

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『東京探偵団』3巻(小学館スーパービジュアルコミックス)「MOBIUS EXPRESS(後編)」p.173 での山手線ジャック計画。

私が東京に初めて興味を持った書物かも。「東京人」であらためて特集してほしい。

オカルト作品『ジャッジ』ではライバルに豆乳を吸わせ冥界の十王を描写しました。

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『ジャッジ』(双葉社アクションコミックスEX)p.161 心霊弁護士・四文のマネして私も豆乳を飲み始めて30年になります。

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『ジャッジ』(同)p.188-9。冥界十王。現在、Kindle Unlimitedで読めます!

現在、手塚治虫に一番近い存在なのは細野不二彦なのではないでしょうか。

代表作『ギャラリーフェイク』のフジタはボロアパートに住まわせる。勧善懲悪の真逆の物語とブラックジャック的要素。

こないだ読んだ『バディドッグ』の描写には戦慄しました。怖いアトムのような。

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ちなみに『恋とゲバルト』に出てくるこの蝶が『血の轍』のようで、また怖い。

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