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サブカル大蔵経399種村季弘『アナクロニズム』(河出文庫)

 種村季弘さんにはお世話になりました。澁澤龍彦はロマンティックな幻想で、種村季弘はもっと実際的な奇想を紹介してくれた印象。この二人について、フランスとドイツだけでない比較をもっと誰かしてくれないのだろうか。由良君美、中野美代子、松山俊太郎、高山宏。彼らのいた時代。ユリイカ時代ともいうべきか、あれは貴重な日本の啓蒙主義時代だったのではないかと思う。

当時も今も「うっすらと死臭の漂いはじめているような」本が好きである。p.270

アナクロニズム…。今なら、山田芳裕とスズキナオさんが浮かんだ…。

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七箇月経つと早くも好奇心に駆られて容器の蓋を開けてしまった。中には小さな胎児がうごめいていたが、外気が入ってくると途端にあえなく絶命してしまったp.58

 ホムンクルス

「壜の通信」はそもそも例外なく死者からの、終末からの通信である。p.101

 瓶の中の手紙による通信。

ロボットが最初に行った動作と言うのは殺人しかも父親殺しだったわけである。(1932年シカゴの万国博に展示されたロボット)p.106

 人間は作ったものに殺される。

1566年バーゼルで見られた空飛ぶ円盤の図p.119

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 これ、阿部共実の漫画の背景だ。

この台湾語なるものが完全にサルマナザーの発明になる、地上のどこにも存在しない言語であるとは誰1人夢にも思わない。p.150

 奇人の奇想、すごい。言語をつくる。ある意味、タモリのハナモゲラ語もそうか?

舞踏状態に入ると子供たちは自分が猫になったと思い込むのであった。一言にして言えば、集団催眠状態の中で日常的自己同一性を見失なうのだ。p.173

 子供の日常とトランスの境目の脆さ

この東方フリーメーソンの3つの要素は、あたかも真言密教の身口意にあたり、至高の悟り(肉体の霊化)は即身成仏の理念に近似している。p.192

 フリーメイソン=真言密教!

ウォータートンはまた天才的な木登りの名人だった。「若いゴリラに匹敵する」ほどと言われ、/気が向くと、ここに近所の精神病院の狂人たちを集めては大宴会を開いた。/ウォータートンは近くの木の上に猿のようによじ登り、そこから洞窟にこだまする乱痴気騒ぎに陶然と耳を傾けるのだった。p.206 

 人間と動物の境目が消えたのか、何かもっと根源的な闇の世界の研究のような。

支那を分捕ってそこへ蘆原の国を建てた。それで日本とは違う。参観に行くとお前は日本人だろうと言う。p.257/明治14年七月、明治天皇東北御巡幸の際、「兄貴、ちょっと待ってくれ」一体そんなに急いでどこへ行こうというのだ。p.265

 偽天皇たち。全てが偽に思えてくる。フェイクこそ真実に近い。

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