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青山裕企写真展:少女礼讃 everything./少女礼讃 naked.を鑑賞しました。

青山裕企氏の同一人物を長期に渡って撮影し続け、何冊もの私家版写真集にまとめるという企画の写真展を鑑賞しました。自分は渋谷「少女礼讃 everything.」と代官山の「少女礼讃 naked.」を鑑賞しましたが、残念ながら早稲田の「少女礼讃 library.」は時間の都合で見送りました。とはいえ、まぁ、すごい企画力ですし継続力だし、モデルとの信頼関係も大したもんです。おまけに私家版写真集も継続的に出し続けていて、行為としての芸術性は極めて高く、稀な作品だと思います。

それに、驚くのは写真の質や方向性にブレがないんですよ。まさに金太郎飴というか、ぜんぶ同じ日に撮影して同じ日に処理したんじゃないかってくらい、テイストも方向性もていねいにそろえてて、その技術力には脱帽するしかなかったです。

私家版写真集も、判型など多少のバリエーションはあるものの、基本的に同じフォーマットでまとめてて、連続性を強く意識させる作品でした。

しかも、作品は基本的に男性向け媒体のグラビアテイストでまとめてるんですよ。なにせ、このご時世に「少女性」を全面に押し立てた、しかもかつては主流だった「ちょっとエッチなグラビア」を世に問うだけでもスキャンダラスなのに、それに対する留保もなにもなしに真正面からで勝負ってのは、ちょっと真似のできない度胸というか決意ではないかとさえ思います。

かつては主流だったとはいえ、その「ちょっとエッチなグラビア」をストレートに、しかもノスタルジアや男性性への批判もなにもなしに、年表やポエムっぽいテキストまで付して、さらに言えばバルテュスの「夢見るテレーズ」ですら撤去されかかったのに、成人モデルとはいえ幼さや少女性をうたい、しかもクリーンな明るい雰囲気とはいえ、グラビア風のヘアヌードまで盛り込むってのは、他人事ながらちょっと心配にもなりました。

とはいえ、やはり作品というか企画の土台をなしている「ちょっとエッチなグラビア」が鍵で、それを長年に渡って撮影し続け、モデルもそれに応えたがゆえに立ち上がる「積み重ねの凄み」があるのです。なんというか、ほぼ全作品でほぼ同じタイミングに喧嘩が起こり、ほぼ同じタイミングでトラックが家に突っ込んでくるトラック野郎シリーズとか、あるいは東野英治郎が形を完全に確立したあとの水戸黄門、加藤剛と竹脇無我の大岡越前、上様があまり乗馬しなくなってからの暴れん坊将軍のような、同じテイストを繰り返すがゆえの面白さ、美しさがあるように思うのです。

世界がどんなに変わろうと、彼らは「ちょっとエッチなグラビア」を取り続けるのではないかと、その行為の持つ芸術性を自分も抱きしめられたら、どんなによかったろうと思うのです。

ただまぁ、率直に言って行為はすごいけど、作品は自分の好みじゃなくて、そこだけがホンマに残念でした。

結局のところ、モデルの素晴らしいプロポーションだけが印象に残るという……

でもまぁ、時間を割いて鑑賞したのは、本当によかったと思う。

¡Muchas gracias por todo! みんな! ほんとにありがとう!